フランス北東部ロレーヌ地方の森林に覆われた一角で、ある自動車工場が、フランスの労働組合は一夜にしてドイツになることができないということに気づきつつある。
仏東部ハンバッハ市にある独ダイムラーの自動車工場で週35時間労働を延長する計画は行き詰まった。労組代表2人が、たとえ大半の従業員が支持したとしても計画を阻止すると述べたからだ。交渉で労働者は分裂し、労使関係は緊張している。
労使関係は、人事担当幹部が怒った従業員たちに背中側からシャツを破り取られるほどには悪化しないかもしれない。航空大手エールフランスでは10月初旬、現にそんなことが起き、醜悪な光景が世界中に飛び交うことになった。エールフランスとは異なり、小型車「スマート」を生産するダイムラーの工場は利益を出しており、差し迫った人員削減のリスクはない。
だが、今回の一件は、フランソワ・オランド大統領が直面する困難を浮き彫りにする。同氏は、自社の運命を自ら決め、フランスの画一的な労働法体系から逸脱する自由を企業にもっと与えることで国の労働市場を改革しようとしている。
「これが我々の実態だ。自分の意思に反して、デモを行っている」。「スマートビル」と呼ばれるハンバッハ工場の人事部門トップを務め、労組との交渉の先頭に立つフィリップ・ステイエー氏はこう語る。「我々は地元の解決策を探そうとしている。だが、いま見て取れるのは、パリにいる数人の労組代表がこの協定を阻止するか否かを決定するという状況だ」
来年に向けて計画され、雇用増加を目指すオランド氏の改革法案は、フランスを「ドイツモデル」に近づけることになる。その背景には、フランスのエマニュエル・マクロン経済相をはじめとした政治家やエコノミストらが不可侵とされる週35時間労働を批判していることがある。1998年に社会党政権のリオネル・ジョスパン首相によって導入された同制度は、現在、硬直性の原因として広く認識されている。
だが、中央集権と国家干渉という伝統があることや労組の加入者が減少していること、そして企業の団体交渉を年次昇給という狭い問題に限定する習慣は、まだ強力な障害となっている。法律事務所ファルトゥア・アセリノ&アソシエの弁護士、オリビエ・バラ氏は「フランスの労使関係は妥協に向いていない。あらゆる逆風を考えると、この改革が実を結ぶかどうか定かでない」と言う。
フランスでは、労働時間という微妙な問題に取り組もうとする企業が増えており、多くの企業は、従業員は必ずしも労働時間の延長に反対ではないとみている。
例えば、パリのシャンゼリゼにある化粧品店「セフォラ」の従業員らは、圧倒的多数で夜の営業時間の延長を承認した。労組はこの動きに異議を申し立てている。
仏電力公社EDFは管理職に認められている年間10週間の休暇を削減することを提案したが、結局、労組の抗議を恐れて計画を断念した。
エコノミストの3分の2近くは米連邦準備理事会(FRB)が年内に利上げに踏み切ると予想している。経済データの悪化でFRBのインフレ目標の達成が危ぶまれると一部の銀行が警告しているにもかかわらずだ。
英…続き (10/19)
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