Updated: Tokyo  2015/10/19 13:09  |  New York  2015/10/19 00:09  |  London  2015/10/19 05:09
 

「追加緩和は必要ない」、昨年は増税後押しが隠れた理由-中原伸之氏

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    (ブルームバーグ):元日本銀行審議委員の中原伸之氏は、昨年10月の追加緩和は黒田東彦総裁が消費税の10%への引き上げを計画通りやるべきだというシグナルだったが、今は送るべきシグナルはないと述べ、30日の金融政策決定会合は現状維持で十分だとの考えを示した。

中原氏は16日、ブルームバーグのインタビューで、「世界中が低気圧に覆われている。価格低下圧力がものすごく消耗戦が起こっている。世界的にこの10年間、実質賃金がずっと下がっている」と指摘。価格競争は今後ますます激化し、「イノベーションをやってもすぐに技術を盗まれる。これが世界の天気図だ。これはしばらく続く」と述べた。2%の物価目標を掲げる日銀はこうした天気図の変化に伴い「別のことを考えなくてはならない」と語った。

30日の金融政策決定会合については「日銀の金融政策は現状維持で十分だ。今の天気図がどのようになるか、もう少し様子を見なければならない。私はもともとマネタリーベースを600兆円まで拡大していいと言って来たが、今はやる必要はない。為替が落ち着いているので、特にやる必要はない」という。

生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は水面下に落ち込んでいるが、「食料(酒類を除く)およびエネルギーを除くコアコアCPIは0.8%上昇している。私はこれで十分だと思う」と指摘。「原油価格が下がってきて、日本経済にとってプラスだ。日銀は本当はコアコアCPIで考えなければならない」と語る。

中原氏は元東亜燃料工業(現東燃ゼネラル石油)の元社長。1998年から2002年まで日銀審議委員を務めた。その間、00年8月のゼロ金利解除に反対。また、量的緩和の導入を早くから主張し、2001年3月に日銀が同政策を導入する端緒を開いた。

昨年の追加緩和は消費増税実施へシグナル

中原氏は「昨年10月の追加緩和の意味は、裏を探れば黒田が10%への消費増税を計画通りやるべきだというシグナルだった。それが大きかった。しかし、それがうまくいかなかった。今は送るべきシグナルはない」と語る。

為替については「1ドル=110~120円くらいのレンジで、プラスマイナス5円くらいであれば許容範囲だ。円高に反転すれば日銀も動かざるを得ないが、今のところ為替にそれほど大きな動きはない。100円割るような円高にならない限り、それほど焦る必要はない」という。

さらに、「日本経済はマイナス成長になっているが、労働需給はひっ迫しており、人手不足が起きているので、心配する必要はない。世界的に低気圧が来ているので、日銀だけ特に何をやるということはないのではないか。米国、そして欧州が何をやるかをみる必要がある」と語る。

連邦準備制度理事会(FRB)の政策運営については「絶対に金利の引き上げはできない。利上げをすれば、2000年8月にゼロ金利解除を行って失敗した日銀と同じように、必ず失敗する。QE3をやめたのがせいぜいだ」とみている。

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記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 谷合謙三, 広川高史

更新日時: 2015/10/19 10:34 JST

 
 
 
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