本当の「傾聴力」は、内容の9割を聞き流す力だ
人気の「繰り返し技法」に潜む、2つの落とし穴
話を聴くことのコツ、正しく押さえていますか?(写真:Ryhor Bruyeu / PIXTA)
良好な人間関係を築くには綿密なコミュニケーション力が不可欠です。その中でも「人の話を聞く」ということはとても大切なもので、その重要性は多くの場所で頻繁に取り上げられていますね。
単に相手が発した言葉を聞くだけでなく、相手の気持ちを受け止める聞き方は「傾聴」と呼ばれ、その方法もよく目にするようになりました。
ところが、ほとんどの人が「話を聞くことぐらい誰にでもできる」「そのくらいすでにやっている」と思いがち。本来の「傾聴」の重要性をきちんと理解し、実践している人は、非常に少ないように感じます。
学んだ繰り返し技法、早速使ってみたはいいが…
真の傾聴を行うためには、さまざまなスキルと意識が必要とされます。その一つに「繰り返し」というものがあります。これは、相手の使った言葉をそのまま使って繰り返す方法なので、単純で分かりやすいととらえられがちですが、実は、意外と難しい技法です。
たとえば、こんな場面。繰り返し技法を学んだBさんが、Aさんとの会話で早速使ってみたはいいのですが……。
A「昨日、嫌なことがあったんですよ。」
B「昨日、嫌なことがあったんですね」
A「実は、取引先と言い争ってしまって」
B「取引先と言い争ってしまったのですね」
A「ええ。それで、今ものすごく落ち込んでいるんです。」
B「それで、今ものすごく落ち込んでいるのですね。」
いかがでしょう? これでは相手から「馬鹿にしているのか」と思われても仕方がありませんね。繰り返しは、機械的なリピートではないのです。冗談のような例と思われるかもしれませんが、律儀な人ほど、このようなそっくりそのままを返すやり取りをしてしまいがちです。