創業から3年間社長を務めたAppBank子会社の消滅
長文ですが、奇しくもAppBankが上場した週にこんな記事を書いたのは、社長を退任した感傷的な衝動っぽいですが、よっぽどしょぼい話で、かつ、会社も職も失ったけど、大事なことは何かを再認識するための話です。
紆余曲折あってAppBank GAMESという会社は、創業から3年を経たところでグループ内の別会社に吸収され、それもまた前向きな成り行きと皆んなで承服し、私は社長を退任しましたが、それぞれが前向きに進み、遂には会社が上場するという大きな節目を迎えました。
っと、まじめな謝辞を述べたいというより、失敗談をしなければと思うことがありました。
かつ、今のタイミングを逃すと、せっかく皆で学んだ大事なことが濁りそうというか、我々が犯した大きな失敗がまた別のところで起きそうで、あんなのは二度とごめんと思うこと、愚を避け精進を追求する人の糧になることを願う故の長文です。
なんせ会社が消滅したくらいなので、それなりの失敗を歩んだのですが(ちなみに消滅とは資産・ 社員は吸収され、社長はクビです)、これまでは失敗の話なんかしても「うんこ踏んだ話しても臭いって言われるだけ」の法則で、経験した人だけ胸の内で肥やしにすべきと思ってはいましたが、うんこのニュースがドンブラコと連発して流れてくるので「あのうんこまた踏むの??超くさいよ??」と思うのと、だったら自分が踏んだうんこの話を正直に話して、うんこ踏まないでほしいと思う気持ちと、「どんなに完璧なシステムでも一つのきっかけで全て崩壊する」というカオス理論を提唱したジュラシックパークのマルカム博士の笑顔がとても眩しく見える話でもあります。
11月1日にあるセミナー
ゲームメカニクスと課金ノウハウを基礎から学び直す
と、赤字と株の大暴落で有名なenishに興味を持つ方は特に知るべき失敗談でもあります。
スタートアップとは信念の産物・邪念で濁れば負け
会社を興そうという土台、信念は、それを貫くために俺は生きてるんだという芯であり、そのための起業でもあります。
クリエーターを志望したからには、自分がどれだけ深く、多くの人を感動させられるかが全て。かつ、誰とどうそれを実行するかが信念と言えるのではと思います。
しかし、紆余曲折で邪念が混ざり、信念のない仕事が炎上を起こし、そのフォローをするためにまた、信念を持った人間も邪念に巻かれるという愚を犯しました。
つまり、なぜ邪念の排除に手を焼いたのかが反省です。
それだけ言うと「もっとうんこよく見ろよ、踏んだらさっさと拭けよ」って言われると思いますが(実際死ぬほど言われました)、その時点で「いや、そう言ってるあなたもすでにうんこ踏んでるんだよね」という悪循環が既に起きてしまいました。
なぜうんこを踏むのか・水増し経歴といううんこ
冒頭リンクを貼ったセミナーの引用ですが、このセミナー、瞬時に参加定員はいっぱいになったようです。
「ゲームメカニクスと課金ノウハウを基礎から学び直す」
XXさんはコンシューマの草創期よりゲーム開発に関わっていらっしゃり、今も現役で活躍していらっしゃるゲームデザイナー&ディレクターさんです。日本国内だけでなく海外での開発事情にも大変詳しい方ですので、今回はその経験とマネタイズの本質についてお聞きできる、大変貴重な機会です。
今の時代、無料ゲームで課金デザインはこの上なく大事、その経験者はとても重宝されます。こうしたセミナーはとても貴重ですし、これらの課題に悩んでない業界人などいないようなもの。受講希望が殺到するのもうなづけます。
(※主催の方々、お世話になってる中、こんな引用をして本当にすみません※)
そして現場としても、こうした人に助力いただけるのは至極光栄。
実はAppBank GAMESにもかつて、同様の経験を謳う人がジョインしてくれ、皆で色んな知見を聞くのに夢中になりました。
この人は重役経験もあるという事で、当時は現場の役員が私だけで苦労してるのを見越し、経営メンバー間でも新役員で迎えようという話になりました(※役員だったのは極めて短期間。後述の問題で即解任となります)
しかし、役員になるや否や、副業入れまくりで会社にはほとんど来なくなり、担当したゲームは全てポシャり、 後に未曾有の惨事に発展してしまいます。
結局、事故の検証を進めるうちに、有難がっていた経歴は完成までほとんど立ち会ったこともないことが判明し、すべての仕事が素人レベルだったので、全ボツの処分に。
さらには、なぜそこまでの炎上に発展したのかと管理能力が問われる事態から、究極的に会社の存続問題にまで発展しました。
問題の急所
実際、彼がポシャらせた3本のうち、一本目の段階であまりに酷い結果+問題を拡散していたので、解雇を社長判断で提案したのですが、そこに待ったがかかってしまったのが、その時点では皆が鵜呑みにしていた経歴。なにせ課金デザインの優秀な経験者を自称してるので、その希少性から別のタイトルをやれば花咲くのではという経営メンバーの声で解雇が見送りとなりました。
また、あまりに申告と結果に差異があるので、与信確認(前職の会社の人に、言ってることが本当か聞くこと)も進めましたが、前職が海外(ニュージーランドと韓国)の会社だったのでてこずったのも敗因。結果(クロ)がわかった頃には後の祭りというほど炎上。後述しますが、そこからの回復はまさに命賭けの苦労となりました。
っというとトホホな愚痴でもありますが、この一連の騒動から見出した道は自分の性分として受け入れてますし、「よくやった!」と言ってくれる人にはがっつポーズで応える心構えですが、この中で見つけた大事なものを、悔いのないように、悔やむ人がこれからも出ないように紹介したいと思います。
大部分が正しいけど、絶対に結果が出ない現象
遠回しに言うつもりもなかったのですが、先ほどのセミナーの熟練経験者・ベテラン講師こそが私たちに未曾有の危機をもたらした、ほぼ完成を経験したことがないけど経験者を自称するIさんです。
この回顧録は非常に長文ですが、トドのつまり、Iさんの水増し経歴・あれ俺詐欺のような問題対処にもつれた故の大炎上と消火に要した膨大な労力の話でもあります。
課金改善と魅力的な文句のセミナーに多くの人が殺到してるのを見て、留意すべき点を忘れるととんでもない事故になる警鐘と実例を言いたかったのですが、儲け話には罠がつきものと思って読んでいただければ幸いです。
Iさんがある時、激昂して「俺は(途中で抜けた)XXでディレクターでスタッフロールに乗ったことがあるんだ!!」と叫びました。
まさに経験者ならわかる話と思いますが、20年以上もの経験者ならスタッフロールなんて何度ものるだろうに、たった一回のことをそんなに、しかも途中離脱のタイトルで末尾に乗るロールを自慢するなんて。。。と愕然とすると同時に、ディレクターと呼ばれながらも離脱した男のケツを拭いて、寛大にロールに乗せてくれたそのタイトルのスタッフに同情しました。
Iさんは最終的に、炎上と騒動をそこまで起こせるものかと心底度肝を抜かれましたが、最初はめちゃくちゃいい人で会社に来る時は差し入れ買ってきてくれるし、現場に入れば仕事そっちのけで楽しい話題をとことんしてくれますし、ちょっとした質問も解説に飛んでもなく長いブログまで書いてくれたり、ここまで厚い返しをしてくれる人もいないんじゃないかと皆惚れ込みました。
しかし、ジョインしてくれてしばらくすると、作るものは全く完成しないのはおろか、一ミリも使われることなく全ボツになり、ケツ持ちする新人のが比べ物にならない完成度で仕事を上げる現象が続きました。
え?経験者じゃないの?とざわめくものの、モバイルゲームの開発経験が浅いだけで時間をかければ勘もつくのでは、最初はそう期待したのですが、 結局、在籍した1年で残せた仕事はゼロという事態に発展します。
なぜ全ボツになるのか?
仕事が上手くいかない事態になるにつれ、Iさんには「わかってないバカ社長が俺の才能に嫉妬して全てめちゃくちゃにしやがる!!」 的なことを言われる中、反対に「いやいや、全部が全部、しっくりくる仕事じゃなくてもいいじゃない。Iさんのでいこうよ」とメンバーに庇い続けるノイローゼのような毎日でしたが(どうしようもないのは私もやり直しちゃいましたが)、なんで使えないかは経験あるメンバーにはわかる、単純な理屈でした。
採用時に最も気をつけてた点でもあるのですが、AppBank GAMESでは業界歴はほとんど見ないで、純粋に応募してくれる作品の優劣のみで採用を決めるのがウリだったのですが、Iさんに限っては応募作品を不問にし、経験で買ったのが完全に裏目ったもの。
なぜ彼の仕事は使えないのか?
Iさんは作品のために創作したものはほぼ皆無で、誰かのゲームではあーだったから、のコピペばかり、つながりもしっくりくるものもなく、反対に「あいつはXXを知らないから、俺の作ったもの(作ってないけど)を理解できない!」と批判と対立ばかり作っていきました、というか、最終的に納期にすっからかんだったので、泣く泣く全部やり直しをしていく最終責任者の私がめちゃくちゃ対立になりました。
知識より創作の熱意
結局使い物にならないものは破棄して代替案を決め、方針決めて他のチームからリソース駆り出して分業してくわけですが、ここで痛感したのは、芯になる方針さえ決まっていれば、意欲ある若手のが吸収も進行も追求も比べ物にならない完成度で仕切り直された物が上がっていきました。
ある意味、最初からわかってたことなのにです。。
水増しの経歴に目がくらんだ罰を痛感しつつも、改めて創作物は創作熱意のある人間のものと骨身に染みる話です。
正確な事実はわかりませんが、経歴(LinkedInなど)に書かれてるスキルで本当に実践されたものってあるのか??という程、Iさんは素人そのものの結果ばかりでした。
素人ならある程度指導をすればコツを掴んで実践に馴染んでいってくれるのですが、なぜかIさんはエキスパートのつもりなので指導されるどころか、製作プロセスに膨大な講釈つきでスクラップ同然のものを流してしまうので「え、これ使わなきゃいけないの?」という困惑と対処に困った進捗詰まりが絶えず、経歴に載るスキル一覧を見ながら「この仕事ならI さんでもできるのかな」と担当を何度も替えたものの、最終的に手がけた仕事をほぼすべて自ら削除して退職されていきました。
「なんでもやったことがある」という勢いの触れ込みでしたが、それらが実践採用された実績があるか謎です。少なくともABGでの彼の仕事は「誤って採用してしまった修正が必須のもの」と「廃棄」の二つだけです。
補足すると、他のゲームの実例を教えてくれて役に立ったことはあります。そこに騙されてとんでもないおまけを貰ってしまいました。
知識だけで結果はでない・薄弱な知識で撃沈となったダンゴル
元々、Iさんの経歴を活かそうと、入社してもらってからしばらくは失敗しそうでも好きなようにやってもらう覚悟でしたが、信じられない大問題コンボの先制パンチとなったのは、ABG最初のゲーム、ダンゴルのバージョンアップ。
致命的な施策となり結果的に問題を回収しきれずサービス終了の直接要因になったのは「他のゲームではこうだから」の一点張り、内容空っぽの改良案でした。
具体的には
- 課金で提供してるアイテムを無料ガチャで出す。嬉しいから起動率アップするはず
- レベル制度を設ければ、レベル99になるまで続けるはず
- 初動ユーザーはレベルが10上がるチケット配布で復帰を喚起
彼がどのゲームから引き出した案なのかは割愛しますが、経験者なら目も当てられない惨状を思い浮かべさせられる自殺的な施策ながら、事実は小説よりも奇なり。このバージョンアップが実地されてから2週間くらい、Iさんは嬉々として無料ガチャの回数が上がってることを昼も夜も喜んで自分の功績と叫び続けました。
しかし、即時にKPIに現れた真の問題は、安易に取れるようになったレアアイテムのおかげで目標動線は壊れ継続率は明白に下がり、無駄にレベルアップされた既存ユーザーはその力を持て余してやることがなくなり課金動機も消滅、DAUもバリバリ減っていきます。
ちなみにKPIとは、重要な指標となる回数などを確認して狙った通りに楽しんで頂けてるかレビューするもののこと。
Iさんは無料ガチャの回数が上がったことを功績と謳い続けましたが、その作用が継続や課金などの重要指標に劇的に悪影響していることを実践として読み取ることができませんでした。
本人は「KPIが上がった!!(意味間違ってます)」と喜び続けてるのですが、本当のKPI(重要データ)のグラフが軒並み直角に急降下していくのを「何でそんなこと気にするの?」と理解できないカオス。実践経験のない知識を知識として頼ることの危うさが如実に結果となってしまいました。
知識とは仮説と検証を経たのち、初めて使えるようになるもの。
この工程を怠ることで、Iさんが受け持った仕事は必ず炎上する結果になっているのだと思われます(いわゆる海に入ったことはないけど波を語りだしたら止まらない、おかサーファーという現象です)
Iさんは知識と思っているものをたくさんお持ちですが、実践を経た新人に次々と抜かれていく結果になってしまうのは、実践は知識より遥かに尊いことに他なりません。それにも関わらず経験者を語る癖が次々と悪質な障害に発展することがわかりました。
こうした脇で、突貫工事でこの惨劇の対処を進めることになるのですが、その後の彼の驚くべき行動は全くサービスに関係ないので後述します。
クリエーターと亡者の境目
最終的に、Iさんの仕事のほとんどが「もし、俺がああなったら殺してくれ」と言わしめる筆舌に尽くしがたい問題と化しましたが、同時に、人間がここまで腐れるのかということと、また誰かが腐ったらどうしようという恐怖も芽生えました。
腐るというと失礼な表現ですが、Iさんも最初は悔し涙を浮かべて前職を追放されたかのような恨み節も言うものの、一から心を入れ直して頑張りたいと熱意を見せてくれたからこそ、歓迎した仲間でした。
そして最初の2ヶ月はダンゴルのお手伝いとして、知識を生かしていろんな例をスタッフに教え、完成直前の追い上げに大きな貢献をしてくれました。
ダンゴルのロンチでは反省課題も残りましたが、創業メンバーで駆け抜けて、他の追随のない完成度のゴルフゲームが出来た充実から、ドタバタを抜けてやっと明るい未来を感じられた瞬間でした。
そう、あの時までは・・・
Iさんは役員として迎えられた直後「G社から案件依頼があったので週1休みたい」と言い出したのですが「いやいや、勤め始めたばかりだし、希望の高額年収払ってますし、フルタイムで役員としてやってくれる約束じゃないですか」と最初は、さすがに冗談だろうと思うような甘えをたしなめましたが
- 週1どころか週3休むようになる
- 予定してたディレクションは空っぽになる
- 納期を伸ばしに伸ばして出された薄っぺらいドキュメントから「創作はまるでダメ」と判明する
- シャレにならないから心入れ替えてくれ(元々心入れ替えたいうたやん)というと「病欠ってことにしてくれ」と言い出す
- しょうがないので抜けた仕事を皆で埋めると「こんなんじゃダメだ!!」とキレ出す。自分なしで仕事が進むのがとてつもなく許せないらしい
まるで漫画のような豹変でしたが、結果、ダンゴルでは前述の致命傷となり、解雇の審議となりました(その時、解雇に至らなかったことは会社の致命傷でした)
日に日にIさんの仕事に問題の声が高まり、しまいにはIさん本人も「ムカついた!俺明日から来ない!!」と何度か言い出す顛末もありましたが、無茶苦茶な状況で投げ出された仕事のケツ持ちにリソースを回すと、割を食う人も辞めたくなるので、解雇したいのにたしなめて離職を思いとどまらせる微妙な日々に突入していきます。
結局、立派な経歴(今はほぼ詐称と思います)と初動の熱心さから役員で迎えたものの、プロデューサー・ディレクター・レベルデザイン・シナリオ・スクリプトと色々役割を変えたものの、一つとして使えるレベルで残るものはありませんでした。
しかし、本人の弁では、できない仕事の理由は他にある、ということで組織批判、上司批判、業界批判と亡者さながらに周囲に訴え続ける悪霊のようになりました。
「それで前職では追い出されたんじゃないんですか?」とは思ったものの、クリエーターに訪れる波みたいなものと私も自分を誤魔化して許容したものの(実際、誰だって理由は何であれ愚痴が出ることがあるもの)、その後、語るに耐えない惨状がさらに訪れます。
クリエーターに問われる責務
私見もありますが、組織の中のクリエーターは
- 任務終了を報告する
- 問題発生を報告する
- 見直しが必要かレビューする
の三原則にどれだけ集中できるかが、結果に繋がる重要な命題です。これさえあればスキルもセンスも経験も知識も勝手に上がってくからです。
しかし、残念ながらIさんは三原則のどれも行わず、どんどんと闇に染まっていってしまいます。
たまにしか会社に来ないので、知らずのうちに仕事も誰かが代行してるのが常態化し、代行の指示を出すこともある私は自分勝手な恨みを買っていくようでした。
最終的には、会社にいないことで共有情報のほとんどを取りこぼし仕事に参加できない状態に陥ったものの、「仕事ができないのは、社長が作為的に情報を遮断して貶めてる嘘つきだからだ!」という爆弾怪文書を作ってばら撒いたり、それを怒るでもなくたしなめて、それでももう私を信じられないということでようやく全責任を放棄、退職していただけました。
彼の立ち上げたプロジェクトはもともと、社長である私的にGOとは認められないレベルだと再三指摘していたものの、当初は水増し経歴で強気だったので「役員として全責任は俺が取る、口は出すな!」と立派に言い切ったことを買い、どこまで任せて見守れるかという賭けでしたが、木っ端微塵な結果でフィニッシュ。
しかし、Iさんの「XXがないと作れない」という贅沢要求の数々で外注会社、提携会社も増えた上に終盤に差し掛かったプロジェクトになり、もし、ぽしゃらせれば影響は計り知れなく、腹をくくり地獄のバッシングを受ける覚悟で私もフルコミでテコ入れ参入を決意。
さらにバックアップとして、ABGとしては本命だったタイトルのラインまで潰して全員投入の総力戦に突入していきますが、既に期間は食いつぶし、野球で言えば9回の裏ツーアウトくらい切羽詰っていました(逆境ナインって漫画そのものの状態)
特にIさんが手がけてくれた「最悪の場合、最悪な内容でもいい」とまで思っていたシナリオが劇的な酷評で、経営メンバーからは「娯楽ということを一切わかってない」とほとんど激昂に近いバッシングもある状況でしたが、真に深刻なのは、スタッフの誰もがそのゲームを愛してないかのような発言が横行し、すべての登場人物に存在不要容疑がかかる始末。
シナリオが酷くてもまずは完成してくれと思うのは私の奢りであったのは明白で、酷評の都度かばってしまった分、皆の心が離れていくというツケが溜まっていました。
なにより、クリエーターの本質は夢を作ることですが、悪夢そのもののような、この上なく陳腐なシナリオと世界観に、試遊した人間すべてが「そもそもゲーム開発なんて仕事自体必要なのか?」と闇の心がメキメキ芽生えてくのが目に見えるような有様。
「俺が書いた方がマシ」と言い出すメンバーも後を絶たず、「皆で新プランを考えてコンペしよう」という社長としては到底看過できない勢いの総作り直し案を伸ばしに伸ばしてこれ以上伸びたら窒息して死ぬような完成予定日の緊迫感の中で認める顛末になりました。
コンペを認めながらも心配だったのは「俺が書いた方がマシ」の尺度。実際、誰が書いてもマシなのは明白ですが(その理由は後述の”闇の章”で。。。)ゴミよりはマシってレベルで総作り直しというのは、ビジネスとして容認できないものです。やるなら、誰もが「こんなゲームを作りたかった!!やりたかった!!」と共感するものでなければ元の木阿弥。
そんな覚悟のプロットがこんな切羽詰ったコンペに出るのか??
疑問と不安がよぎる私も決死のプロットを出すべく山にこもり、絶体絶命の危機感をヨガの心で封じ込め、 渾身のエンタメを書いてコンペに臨みました。
果たして結果といえば、、コンペに出されるそれぞれが爆笑の渦、これぞ創作!!と拳を固める、どんだけいい意味で状況わかってねーんだよお前ら的な爆発的な提案が打ち出され、その後はどしどし、愛されるキャラクター達に生まれ変わり、メンバーの仕事に自信が蘇っていきました。
メンバーのあっつー、あの日の提案にはしこたまいろいろ言ったし、調整に次ぐ調整での着地だったけど、あの勢いの提案をぶつけてくれたこと、心の底から、感謝感服しています。そういう人間が集っただけで、会社を起こして本当に良かったと思うような逆転の一手でした。
あの時こそ、改めてABGが夢を追求する会社として再生を歩み始めた瞬間だったと思います。
「クソゲーだったら全部ダメ、課金以前に遊んでくれるユーザーが納得できなければ問題外です。ダメなら作り直しましょう」そういう意見はボトムアップのみならず、私同様に責任を背負う提携会社のプロデューサー達も覚悟を決めて、むしろ何度も私を説得してくれました。
度重なるIさんの裏切りと誤魔化しにあいながらも、Iさん直伝の「メカニズム」「ノウハウ」という言葉でマイルストーンのプレゼンに臨む様に眉をひそめるのは、我々と同様身銭を切ってリスクを背負う契約会社の人たち。
マイルストーンをパスできるかの契約もある中、体裁を繕うだけではダメなのは100も承知の中、これが失敗すれば即リストラのような針のむしろの状況を知ってか知らずか「っで、面白くなるんですか?」と遮られてからが勝負。そこからはプレゼン資料を捨てて「いや、ぶっちゃけXXは捨ててZZとかいう案も出てて、やるかどうかってところです」「・・・・・それ、に賭けますか。。プレゼンの体裁とか忘れてください」そうした1分にも満たないやり取りから生まれる濃厚な決断により、数々の英断を実現することができました。
その前提となるのは本物の経験とノウハウ。あれがこうだったから、そうした話はなく、本気で革新を目指してるのか、どこまでの覚悟を持っているのかが賭けの本質と腹で知っている人たちとのやり取りでした。
私もマイルストーンの体裁のために押し通そうとすることが何度かあり、そうした弱気なメールを送ると1秒後に電話で「わかってください。わかってくれるまで言います」と言ってくれた担当プロデューサーのSさん。本当にありがとうございました。
そうしたやり取りに至れなければ、ユーザーに届くものなど何もなかったっと思います。
うんこを踏んでからの再生 vs エゴに食われた心の闇
Iさんが離職してくれてからは全ての仕事が爆速かつ比較にならない完成度で進むようになり、そうした功績を共に称え合う余裕も徐々に取り戻してきました。
ある意味、病み上がりのようなチームでしたが、前述のクリエーターの3原則を貫けば、きっと良くなる。今回どこまで取り戻せるかはわからないが、次はもっと良くなる。
そうした希望ある未来も話しあえる状態に回復したと思えてきました。
そう、あの時までは。。
「人間ってここまで出来るんだ」と人の闇の底無しさに打ちひしがれる壮絶な事件が再び起きましたが、直面した人すべてが闇にがっつりやられるとんでもないものでした。
当事者としては忘れるべきものとしか言いようがないのですが、ある意味、どっかで公開せざるをえないようなもので、以下のリンクをクリックした際にだけ見えるようにしましたが本当にヤバイので、見た後は心のケアが必要。
みたら本当にがっくりする
〜闇の章〜
クリックでオープン
闇の章 〜死んでも成功させない、足引っ張るためならなんでもやってやる〜
この時のIさんの心の声、というか肉声でバリバリ言ってましたが、「何もわかってないバカが仕事をめちゃくちゃにしていく!」とSNSでも連日拡散するのは序の口。
しかし、Iさんの離脱が進むにつれ、裏腹に跳ね上がる完成度と進捗。
っというところで、信じられない事故が連発し始めます。
あまりに毎日すぎて順番覚えてませんが、とんでもない地雷原に放り込まれた戦々恐々の日々に突入しました。
週一で投下される怪文書
「皆騙されてる!!俺は悪くないんだ!!あいつは嘘つきだ!!皆は俺のことを信じてる!!俺はもう辞めるがあいつ(社長)を潰すために俺は立ち上がる!」要約するとこんな怪文書メールが「こんなん来てるけど」とグループ代表の村井さんから転送されてきました。
その時、トイレで踏ん張ってたんですが文字通り脱糞もの。
深呼吸して手を洗い、その時はたまたま会社に来てた、というか、既に会社でやることは怪文書だけというレベルになってたIさんに「メール見ましたよ。ちょっと話し合いましょうか」と声をかけた時、完全にゾーンに入ってたIさんは立ち上がって
「もう全部わかったんだ!!話すことなんか何もない!絶対にめちゃくちゃにしてやる!!こんなの(怪文書)は始まりだ!!」
という開口一番の怒号が会社に響き渡りました。
後に思えば「絶対にめちゃくちゃにしてやる!」はIさんの最初で最期の有言実行だったなとも思いますが、その時は「殴られるか?いっそその方が話は早いか?」と足もガクブルながらも「まぁまぁ、ちょっと座りましょう」と。
話の発端は、皆が知ってることを自分だけ知らないのは私が騙してるからということでした。
基本的に共有事項は朝会で発表するので、滅多にこないIさんは連絡事項を知らないことが多く、そうした連絡漏れから自分が知らないうちに辞めた同僚がいたことに遅れて気づき「なんで教えてくれないんだ!この会社は陰謀だらけでまともに働けない!」と怒り狂い出しました。
どうやらそう怒り狂った夜に宣戦布告を宣言する飲み会を開き、会社を滅亡させる作戦を勇ましく演説し、早速翌日の朝一から開始したとのこと。
凄まじい剣幕の中、残った仕事の状況を聞いて、最悪、明日からでも来ないでもらえるようにヒヤリング。
「怪文書を鬼のようにばら撒く」と宣言してる手前、変に追い出したように思われると大事に発展しかねません(結果的にがっつりしましたが)
その時はまだ、手がけてもらってるシナリオの全ボツが決定してなかったことと、ヒヤリングでは「俺の仕事は完璧に終わってる!!!でも、ちょっと調整したい」ということで、退職届けには従来、最終出社まで引き継ぎ期間があるが、気がすむまで調整したら会社にはもう来なくていい。これまで本当にありがとう。とその場はいさめましたが、「やっと退職してくれる」と悪夢の終わりを期待したものの実際は真の悪夢の始まりで、後に大反省の対応だったと後悔することになります。
「重度の精神疾患」を朝礼で共有
やっと退職してくれると安堵はしたものの、状況的にはプロジェクトを立ち上げた責任者が全て投げ出して逆ギレで逃げるという、なんとも説明責任の荷が重い状況。
それまでも毎週・週3で休んでもクビにしてない時点で、本人希望の設定である「重度の病気」と共有してたものの、それを聞いてしわ寄せの仕事をするメンバーの気も知らずに「俺、仮病で休んで掛け持ちでG社の超大作、ファンタズマっての作ってるんだぜ!!」と大手の立派な資料・アセットの数々を若手に披露しては「凄いですね!!」とよいしょを買っており、すでにクリエイティブでは何の価値も産めないので、NDA違反も無視で虎の威を借りて尊厳を守っているようでした。
そうした違法行為は証言だけなので何とも言及しずらく、注意を促すと「自分は心身症なのでたまに見境がなくなるんです、すいません」という返事が度々ありました。
その返事はのちに「精神疾患持ってるのでめちゃくちゃなことをします」という免罪符に拡大していくのですが、怪文書事件の際はさすがに朝礼で「重度の精神症の病気ということで大目に見ましょう+惑わされないように注意」と共有。
前述した「俺が書いた方がマシ」と誰もに言わしめたストーリーや、それ以外の全ての仕事も「精神症なんですいません」で片付ける腹積りだったようで、一つとして人並みのことをするつもりがないのが本性だったのかもしれません。
しかし、共有したところで反応は「なんで俺たちがそんな奴のケツを拭くのか」と「Iさんの言ってることだって正しい部分もある」とネガティブな反応が大半。
そもそもそ怪文書というかポジショントークは都合の良い正論並べて自己正当化するもの。つまり正しい部分がなければポジショントークにならないのですが、仕事である以上は目標にリーチする、積み重ねの意見にならないものは正しいどころか、毒にしかならないのがポジショントークです。
正論だけど悪性であるという証明はある程度方向性が見えたプロジェクトでは共有しやすいのですが、カオスの極みのようなIさんのプロジェクトでは露骨に意見が分かれ、立て直しの苦労を予感させられました。
最終的には満足できる立て直しとなったのですが、そこに至るまでの地雷原の話はまだまだ続いてしまいます。
「ボスが出る」ってチュートリで説明するなんて無茶苦茶だ!!
Iさんは辞表提出後、退職日までは完成したシナリオの調整を行うと約束してくれたのですが、実際は「完成どころか、この僅かな数行のどこにストーリーがあるのか?」という精神疾患全開のホラーな状況。
私はそれまで、精神疾患は副業するための口実、仮病であると思っていたのですが、ストーリーへのあまりの酷評をかばうために、Iさんの作成した書類全てに目を通していいところを探したり、応急処置をできないか考えようとテコ入れに入ったのですが、ペラペラの書類をわずかな時間で全て目を通したのち
私「本当にこれだけ??」
関係者「そうですよ」
私「Iさん、あんなに「俺のシナリオすごいだろ!!」って喜んでたよね?」
関係者「そんなのどこにもないですよ」
私「お前、凄いですねって言ってたじゃん」
関係者「そりゃそういいますよ。あんなに喜んでたら」
ありていに言えば微塵もできてなく、全ボツ後にリライトしたものの1000分の1もない状況でした。というか、それをストーリーと呼ぶ冒涜感に関係者は悪寒さえ覚えてました。
実際、退職してもらってから相当なテコ入れを要するとは思っていたものの、遅ればせながら、関係者たちが「俺が書き直した方がマシ、今すぐでもやらないと無理」と訴えてる真意をやっと理解できました。
ちなみにIさんにはプロデューサーから全ての役割を転々として最後はシナリオ担当に落ちついていただいたのは、それぞれで満足な仕事ができなかった以外に「シナリオは俺じゃないとできない、お前らじゃ無理」というベテランIさんの有難い配慮から。確かに他の人は未経験なのでストーリー初挑戦って怖いもの。
結果的には「Iさん、シナリオ作ったことあるの?」から「ゲーム作ったことあるの?」まで疑いが深まったものの、事態と状況は極めて深刻。
チュートリアルなどの、さしあたり空白を埋めれる部分から分業で補修を開始した矢先、次の怪文書が投下されます。
「チュートリアルでボスが出るって説明作ったでしょ??ボスがいないステージどうするの?ユーザーは混乱してゲームやめるよ!?これで全部崩壊だ!!責任取れないよ??」
実はIさんは元ライターでとても文章がうまく、怪文書というものの、読んだ人皆、「え、Iさんの指摘通りにしないとまずいのでは?!」と必ず不安になる逸品。
参考までに固有名詞を伏せた実物がこちら(クリックでオープン)
末期になって怪文書のキレも増してますが、パッと見、誰でも騙されざるをえない威力。何より、彼の中の世界では完成してる仕様もストーリーも設定も、実際はどこにも実在しないのです。結局Iさんが仕事と思ってるものは万事においてこんな評論だけ。こうした文書が投下されるたびに時魔法のようにプロジェクトが止まりました。
ちなみに「そもそもお前がチュートリ担当だったのを投げ出すからだろ、不満があるなら自分で完成させろよ」と指摘すると三日後には別バージョンの怪文書が届くシステムになってました。
私も不安になり「ボスがいないステージ」ってナニ?とレベルデザイン担当に確認したら「Iさんがそんな案を言ってただけで、実際は全ステージ、ボスが入る前提で進めてます」との事で問題の懸念というより、Iさんのいつもの「俺がいなくなれば絶対に失敗する!!」の予言実現のための妨害色が露骨化にしてる様子、土壇場で魔法のように脱力させてくれます。
しかし、チュートリの改修後はいよいよ本編の改修。こんな核ミサイルみたいな怪文書をくらいまくる中で大丈夫か?という矢先に、その後、後任となるメンバーから「改修しなければいけないリスト」が提出されますが、このブログも長いですが、その遥か上を行くほどの全編改修案というより「うんこがいかに臭いか」を専門学者が余すことなく詳解したような分子レベルでの分解抹消案に。
これ、どんだけ溜めてたんだと心配しましたが、そんなのをプロジェクトに共有、進行したら怪文書ってレベルじゃない勢いでカオス化するのは目に見えてました。同時にそこまで切羽詰まってたこともまた事実。
その時点で一か八か、成功するかわからないけど、投げ出すバカより、突っ走るバカに賭けることを決断、急所であるストーリー部分や連絡帳のIさんのアクセス権を抹消し、力一杯ねぎらいと体裁を尊重した「もう来ないで大丈夫」というメールをIさんに送信して作業開始。
前述の通り、この英断がプロジェクトを救う起点となりました。
Iさんは「重度の病気」ということで、定期的に通院して休む設定でしたが(実際は仮病で六本木のG社に行かれていました)定期的な通院以上に休む時は必ず、「宮川さん!!大変なんです!!うちのXXが壊れて、もう、業者と話してもダメで、家族と話したり(以下延々と大冒険が続く)」と面白ろおかしく、散々な目にあった話を出社するや否や皆に語り続けます。
毎週何かしら壊れてとんでもない業者が突撃してくるシリーズはバリエーション豊富で、ルーター、プリンタ、ガス、水道、電気、ハブ、などなど、どれをとっても丸一日の復旧戦記、こんなに面白い恐怖の館の話が作れるのだから、きっと面白いストーリーが作れるのだろうと間違った解釈をしてたかもです。
「マジで勘弁してください。とりあえず、何があっても会社に来い」といえば「わかりました!(心入れ替えます!)」という返事。しかし翌日はサボり、とんでもない長文で「大事件が起きたので行けません!まずですね・・」と、お前それ、俺が注意した端から話作ってるだろって勢いの傑作メール。
しかし、面白いメールに巻かれるばかりもいかず「嘘はやめてください」と詰めれば「俺が作らなければ困るのはお前なのに、なにを自分勝手なことを言ってるんだ、言わせてもらうがな!(以下、本物の病気の人だけが出せる全力の精神汚染。ウーマンラッシュアワーの村本のネタを見るたびに思い出します)」といった怒号に「社長がIさんをクビにしたらプロジェクトも終わり、俺も辞めよう」とガクブルのスタッフのテレパシーを感じながら「バックアップの体制ができるまで(クビは)辛抱だ。。」と唇を噛み締め、無理やり譲歩を作る戦いは本当に寿命を削りました。
自分の子供と思うべき作品に刃を突きつけて「助けて欲しいか!」という人間ほど醜いものはない、っとその時までは思ってましたが、そうした時のIさんの心の闇はまさに深淵。あまりにおぞましい言葉の数々に失神しかけて「凄まじい」という以外もう覚えてません。
その後「精神症の人の行動」的な記事は必ずクリックする癖がつき、「なんでも正当化したがる」「作った話は必ず人に聞かせたがる」って話を見つけてはTweetに流す無駄な習慣ができましたが、今は心の底からどうでもいいです。
これで最後っ屁か?クラウド上の企画フォルダを丸ごと削除
英断の日から数日で完成度は顕著にポジティブになったものの、突然クラウドにあった企画資料のフォルダが丸ごと削除されました。Iさんの書いたものだけ?と思いましたが、開発メンバーが作成した全てを抹消。犯人探し以前に抹消者のアカウントがそのものズバリすぎて全員で脱力するも、前向きに「もともとIさんの指導したゴミみたいなもんだったから、0からやり直すのがベストですよ!」というポジティブなメンバーの声で乗りきることに。
かくしてIさんが務めてくれた1年間のほぼ全ての仕事は抹消され、ゴルゴ13ばりに証拠隠滅となりました。
しかしこれ、ゲームデザイナとしては喜ばしかったんですが、仕様が全部書き直しになったような不満を後にエンジニアに抱かせることになります。そもそも未曾有の大人災なんですが、そこを発端に後にさらなる事故にコンボすることに。
ちなみにこの時点で「重大な業務上の支障の隠蔽(精神疾患)」「NDA違反」「文書偽造(仮病の際、診断書提出してもらったけど、診断書はあるが副業先に出社するのは詐欺罪とか偽造の罪になります)」でクビというラインを遥かに超えてる中で、さらに直接の業務妨害に。
「俺をプロジェクトから追い出しやがって!!」的な宣戦布告を怪文書の際にいさめたつもりでしたが、その他に仕込まれていた起爆装置が次々に発火していきます。
「なんで俺がケツ持たなきゃいけないんだよ」「だったら転職しようぜ!」
もともとスタートアップ企業はワンミス即死みたいな緊張感がありますが、このプロジェクトに至るまで、ダンゴルの致命傷を含めればIさん責任の三つ目のプロジェクト失敗。
それまでの失敗を穴埋めするため、経営的に金策しやすい受託仕事を入れて切りもりしていましたが、そんな緊迫感ある現場に「このプロジェクトも失敗したらリストラや給与カットも否めない」と告知が出されました。Iさんに怪文書を発射されるちょっと前の話です。
個人的には、全力でぶん回ってる現場にそんな告知は不条理な印象から悪影響のが大きいとも思ったのですが、現実、突然に経営判断でそうした日に陥る方が残酷だ、という配慮。
後述しますが、ピンチのしわ寄せについては私の持ち株を全部捨て値で売却して乗り切り、功労者には必ず手厚く報いるよう徹底したのですが、そうした最終英断に至ってない当時は「なんで俺が!」とざわめきもありました。
その際に水を得た魚のように活路を見出したのはやはりIさん。
その時、仮病で掛け持ちしてたGREEに「全員で引っ越そう!大手のが安心だよ!」という声がけに、疲弊したスタッフの何人かは「それもまたいいかも」と心の隙間を開いてしまいました。
私も、進捗、完成度を「本当にこれが最後の勝負だから、頼むよ」と念を押してIさんには再三確認していましたが、本人からは「絶対大丈夫です。とっくに完成してますよ!」という空っぽの返事。聞けば聞くほど「信頼して任せるのが一番」と諭されながらも、マイルストーンの内容を何度も確認しました。
しかし、実際にはIさんはこの時点で「このプロジェクトは絶対に完成しない」と周りに言いだし、完全にマッチポンプで「君を助けられるのは俺だけだ」と悪魔の勧誘を開始していました。
突然の告発・「Iさん、全員に転職を勧誘してます」
Iさんの「プロジェクト失敗」の予言をよそに、テコ入れを着々と進め、やっとIさんの離脱が見えて、真に夢の追求=ゲーム開発に集中できるか!?という中で、突然に中枢のエンジニアが退職したいと言い出しました。
リーダー陣でこの問題を議論すると「・・・そもそも、Iさん全員に転職を勧誘してますよ。俺もされました」「俺もされました。めちゃくちゃ目を見開いてじっと見つめて「お前のために言ってるんだ、わかってくれ!」と超説得されました」と、ここに来て意外な演技の才能を評価されたIさんでしたが、その猿芝居に陥落されたのはまさかのプログラマーの柱。
実際、猿芝居と評す程度にIさんの行動は冷めた目で見られる状況ではあったものの、そうしたメンバーはIさんの陳腐なシナリオを読んで辟易したメンツであり、ゲームの機能面を黙々と作業するエンジニア達には、依然として水増し経歴の力や、古株故の人脈やNDA破りで見せられる資料が偉大に見えている様子。
企画の全面刷新から、それまでできてなかった仕様もどんどん出来てくので実装も圧迫される中「そんな仕事は捨てて大手に行った方が絶対君のためになるよ。俺はここよりもその方が幸せだ」と、陥落されたのはIさんの連日のポジショントークを同情しながら聞く優しい男でした。
ちなみに画像はジュラシック・パークの恐竜の卵を持ち逃げし、崩壊を招いたネドリーさん。給与に不満があったという設定ですが、Iさんにはグループでも最高の給与を払ってたのにそりゃないっすよ。
かくして、プロジェクトの中核プログラマーが引き抜かれた日はめちゃくちゃに泣きました。それはプロジェクトの問題のみならず、直感的に起業の敗北を悟らざるをえない、区切りの日でもありました。
「退職日までに一通りは組んだ」とは言ってくれたものの、翌日からPythonの入門書を片手にどこまで実装されてたのかを読み解くところから着手。
残骸のような仕事の中で見つかる愕然驚愕のコードの数々に、早々に投げ出した仕事であることがじわじわとわかる悲しみは筆舌に尽くしがたいものがありました。
特にサービスイン直前までもつれたサーバー負荷の調整は、徹夜で検証した挙句見つかるコードがこんなレベル
return new Application()
夜明け前、崩壊してくジュラシック・パークを見ながら血の涙で唇噛み締めるハモンド博士のごとく絶叫しました。
絶体絶命の危機とハルマゲドン戦略・初対面10時間で来てくれた助っ人
やっとこシナリオ・企画・仕様の全面刷新が終わり、発表したそのタイトルは世界観がとてもウケ、多くの人に待望いただく喜ばしい状況。見込まれる売り上げもやっとこ起業して黒字に転じ、スタッフも報われる、そんな話が普通に出る状況で、この引き抜きはガクブルの無期延期級のトラブルでした。
「絶対に潰してやる」のIさんの有言実行は凄まじく、引き抜かれたエンジニアの中には「今日からいきません」と辞表もなく来なくなる始末。
私も与信確認の遅れが致命傷となりましたが、自分が一度は雇用した問題児が、その後も問題にならないか心配になるもので(同じ思いをして欲しくない)、かつてある社員を採用した際にその前職の社長から「XX君を採用されたと聞きました。こんな問題もありましたが、次は問題にならないよう参考になれば幸いです。XX君の活躍と再起を願っています」と親心ある一報をいただいたこともあります。確かにXX君は問題を起こしたのですが、その一報のおかげで穏やかに対処できました。
ちなみにIさんはABG以前にも4年勤めてた韓国の会社で「腹たったので一本も完成させず崩壊させてやった」とのこと。これこそ事前に教えてほしかったですね(^^;
こんな記事書いてすまんがenishに転職した人は、数々のトラブルに見舞われたとはいえ、Iさんに騙された同志でもあるので報われてくれれば幸い。
発覚したIさん一連の引き抜き・営業妨害を食い止めるために、希望退職ではなく懲戒免職の措置を取り、引き抜き先に警鐘を残すかが重要な検討事項になりした。
最後の面談の際は私が話すとまた激昂されて揉める懸念もあるので私は欠席。そうした検討を含みつつ、面談者から「元々はIさん責任で立ち上げたプロジェクトで、サービスインまでに故意に損害を及ぼすような行為、引き抜きとか発覚したら、全部責任を追及するよ」と告げると、「もちろん迷惑になることはしません!!もう心を入れ替えました!!」と気持ち良く答えてくれたとのこと。
「ちゃんと言い含めたのでもう安心してください!」と面談を担当してくれた人のホッとした顔は今でも忘れられません。
実際は入れ替わった心は面談後にまた即時に入れ替わり、引き抜き全開のサービスイン絶対妨害計画に発展していたのでした。
引き抜かれた中枢エンジニアの最終出社ののち、Iさんの予言「絶対に完成しない」という言葉がメンバーにこだまする中、絶望的な状況にさすがに思考停止しかけましたが、私はひたすらPython入門書と開発ツールの練習をしながらコード解析をススめつつも、非エンジニアのメンバーは「昨日も一睡もできませんでした」と嘆く日々が続きました。
何せ、責任者に投げ出されながらも喉がカラカラになるデスロードを得て完成して、明日にはサービスインと思っていたタイミングで、メンバー皆がやっと報われるという安堵のなか、サーバー負荷の問題がまるまると残り無期延期決定というブラックホールのような状況。
緊急で来てもらえるフリーエンジニアの手配は続けてましたが、さらには経営者の会合やエンジニアの集う飲み会にMac片手に乱入し、開発ツールのわかる人の横に座って片っ端に質問攻めをしたり、リソースの都合をつけれる経営者を探すために交渉したりとなりふり構わず夜も活動。金曜の終電ギリギリに乱入したカラオケの個室でまで、「このプロファイル読めませんか?」と救世主を探して回りました。
その時、初対面ながらも話を聞いてくれたのがRipplationの安藤社長と少し面識のあったイリンクスの田中社長。
安藤社長が「うちの社員に週末に参加できるか聞いてみますよ」と言ってくれた他、その社員に案件を発注していた田中社長まで「時間が必要なら月曜も火曜もうちも待ちますよ、まず、救えるものは救いましょう」という神の声。
カラオケ店を出ると、安藤社長が「担当の社員に聞いてみてまた連絡しますよ」と言ってくれ、終電でお別れしました。しかし、お別れして5分も経たないうちに「担当者もOKだそうです。10時に伺えばいいですか?」というメッセージ。
わずか10時間後に絶体絶命に陥ったわが子の手術にきてくれる医者が見つかったような心境でしたが、その実、あまりの実感のなさに終電の中で放心しました。
本当にありがとうございました。
そして翌日の午前10時には安藤社長が部下のエンジニア、中川さんを引き連れ、名刺の住所を頼りに助っ人に来てくれました。
そこで即時に全て解決、というわけにはいきませんでしたが、中川さんを発端にその翌週から臨時に駆けつけてくれるエンジニアのスケジュールがぎっしり埋まり、1枚のホワイトボードに駆けつけたエンジニア達が見つけた問題点をびっしり書きつらねて、毎日日替わりの引き継ぎ作業が始まりました。
最終的に「これ以上は根本的な作り直しになる」というところまで最適化されても、すべての問題解決とは言い難い状態でしたが、検証と議論の果てになんとかサービスインに至ることができました。
絶対に完成しない!の呪いの顛末
かくして、Iさんの責任放棄から始まり、筆舌に尽くしがたい妨害を乗り越え、無事にサービスインにこぎつければ大反響の結果。非常に大きな収益に至ることもでき、残る大きな課題はサービス安定化という議論になりました。
だがしかし、突貫工事で万事解決というわけにもいかず、 特に引き抜き被害の深刻だったサーバー問題の爪痕は深刻で、のちに会社消滅の引き金として最終発表の理由になってしまいました。
最終発表の際は、私は既に解雇処分みたいなものだったので、知らずのうちの「技術的問題で存続見直し」とIRで発表されてしまいましたが、ABGは特に技術を買われてた組織でもあるのに、一つの問題が究極的に言われる結果にはなんともやるせない顛末でした。
エンジニアが引き抜かれた日、全ての夢を砕かれた思いで本当に悔しくて涙が止まらない一夜でしたが、その後、多くの人の助力を得ながら改修の猶予を稼ぎながら、なんとか見つけた後任のエンジニアも「引き抜きで心が揺れる中で杜撰に作ったもの。0から作り直す他ない」そして、作り直すなら、その間は一切のバージョンアップができないという、投げ出された難題を考えれば当然の状況でした。
その時の判断として、バグも深刻な欠陥ですが、ゲームに飽きてやめちゃうのも深刻な欠陥。バグかゲームの改良か、どちらか一つを選択するより、細かい優先順位をつけて総当たりに進行しながら、追加のエンジニアを探すという戦略をとります。
実際、それがどういう成果だったかは賛美両論と思いますが、間違いなく言えることはその後に参加してくれた人は本当に素晴らしい方々ばかりで、特に幼稚園から幼馴染の伝説のエンジニア鈴木さんの懸命な働きぶりはこのプロジェクトにかつてあった闇など忘れさせてくれるほどの進捗と完成度でした。
しゅーてん(鈴木さんのあだ名)せっかく来てくれたのに会社なくなってごめん。
かくして、一度は捨てられながら、有志の決死の覚悟と努力で蘇ったプロジェクト、トキノラビリンスは残念ながら公開後1年を待たずしてサービス終了となってしまいます。
関係者の皆様、9回裏ツーアウトからの挽回で通常の10倍20倍の努力・心労は当たり前のプロジェクトでしたが、その努力の甲斐はそれぞれどこかに見出せる機会もあったのではと願います。本当にお疲れ様でした。
闇の章の反省とまとめ
ここまで、Iさんにコテンパンにやられた話ばかりで、解雇に至らなかったことを誰もが管理問題と指摘する結果。それさえできてればこの闇の章のおぞましいエピソードもなかったでしょう。ともあれ、解雇しなかった理由は主に二つ。
一つ目は水増し経歴に騙され、彼なら本当に優秀な課金メカニズムをデザイン出来るかもで見送りになったこと(実際はそもそもゲームを作ることができない)一言で言えば欲ボケでもあります。
二つ目はプロジェクトの責任者に就任したことで、裏返すと「こいつが投げ出すなら俺も辞める」の闇の連鎖をメンバー皆が予感。さらにプロジェクト崩壊すれば関連会社との関係も崩壊で、その後の会社の信用問題を考えると、磐石なバックアッププラン(別チーム解体でのパッチ)ができるまで解雇できませんでした。よくあるシガラミの話でもあります。
しかし、磐石なバックアップはすなわち、Iさんの自尊心を著しく損なうもので「俺が出来ないんだから、誰にも出来ないことを思い知らさねば安心して転職できない」という思いに発展し怪文書活動、妨害活動とエスカレート。
彼の私欲追求はルール無視の行為を平然と繰り返すレベルになってしまいました。
Iさんのやってることは既に解雇をはるかに超えて告訴のレベルでもあり、退職時には警告もしたものの、全力の妨害後も告訴も解雇もないまま今に至ってしまいます。
実際、彼の起こした損害に対し私がした責任払いは公開されたAppBank株でいうと約40万株(一株2千円、8億円規模。株についてはまた後述)付け加えて給与も半額という処分になるのですが、今、Iさんの勤めるenishも再三のポシャりと赤字で役員は報酬半額という責任を負担しているとのこと。
もちろん、Iさんがコミット通りに頑張ってこの結果なら、助力の至らなさを反省すべきなのですが、このケースで言えば、約束もルールも逸脱して故意に起こした損害、私益の追求については即時に告訴できなかったことが敗北そのもの。当時講じた甘っちょろい防衛策は全く無意味でした。
しかし、今も昔も同じで、そんな話よりゲーム作ってる時間を優先してしまうんですよね。
会社の機能として防衛は重要な課題で、ABGの規模なら、Iさんレベルの問題に対応できる担当者か、弁護士の確保をおろそかにしたことが経営の甘さ。
損害額を勘定することに意味はなく、筋を外れたものにケジメをつけることは組織運営の必須課題ということを学びました。
Iさんに学ぶ成功の秘訣
Iさんはゲームで成功したことはありませんが(さる名作の移植を担当したことはあります)人生としてはかなりの成功者。尊敬を集め、超高給での転職を50歳を超えて繰りかえせています。
Iさんが及ぼした、ゲームデザイン、ストーリー、運営での壊滅的な失敗を話しましたが、その後のフォローの迅速さは驚異的。
まず、SNSで死ぬほど自分は悪くない、分かってるのだというポジショントークをばらまいた後に、とんでもなく詳解なブログで失敗した分野のあれこれの成功例を書き、果ては同人本としてまとめて出版までするので、「俺ほど分かってる人はいない!正しいのはとにかく俺なんだ!!」をここまで突きつめてる人間は他にいないのではと舌を巻きます。
これまでも実績では目も当てられない結果だったKPIやシナリオでも、その後、なんとも立派な講釈で本を個人で続々とまとめられています。
私も長らく彼のブログや本のファンだったのですが、一連の事件の後、まさかそのモチベーションが成功するためではなく、赤っ恥をごまかすためだと悟り脱力をしたものの、実際バカにできないパワーがあるわけで、それに直接敗北したのだと思いしらされます。
実際は「ギネス目指してるんですか?」と見まごう損害実績をよそに、Iさんはそれらの努力の末、なぜか成功した人として「課金の改良セミナー」まで開く始末。
損害以外聞いたことがないのに、次から次へと仕事を開拓するタフネス。もはや現代の業界の仕組みでは狙われたら最後、ガードは不可能なのか?とも思わせられます。
かくいう私は常に作る方ばかりに気が入って、時間の猶予と完成度ばかり気にしてしまいますが、彼は自分に害を及ぼす(この場合、彼の仕事を片っ端から改良してく私は究極の害)ものに対して容赦しない覚悟を瞬時に決めます。
クリエーターとしての価値ならIさんは私はおろか、誰にも叶うことはありませんが、こと、戦いということに関しては圧倒的に強く、彼個人の私益結果については見事につきます。
実際、Iさんは全ての仕事を改良または刷新してくれるプロに囲まれていたので、成長しようと思えば非常に価値ある場と思いましたが、Iさんは全力でそれら全てを否定し、死力を尽くして立場を守る戦い・対立を作り続けました。
しかし、そのことをクリエーターとして侮辱的に見るより、戦いとして認識するのが正解だったと今は痛感しています。
結局、その覚悟の甘さこそ、冒頭の信念の強度であり、私の信念は強力な邪念に敗北したのだと思い知りました。
うんこは踏むのではなく、流すためのシステム作りが組織作りに必須です。くそ!
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今日限りで、辞職します。
月曜日からは基本的に会社に来ません。必要な連絡はしてくださって結構です。
理由は、Aの辞職経緯について、宮川社長は僕に虚偽の説明をしており、人の辞める辞めないのレベルで嘘をつく、それも辞めた人間を貶めるような嘘をつく人間を信頼することは出来ないし、仕事も出来ない、ということに尽きます。
以下、事情を説明します。
1)Aは10月の半ばには退職願いを出していた。
そして予定どおり辞めた。しかし、それはインフォメーションされていなかった。
2)Aが辞めて数日経ち、リードゲームデザイナーがいない状態で、困っている僕に対し、宮川社長はこう説明した。
「Aは会社をこれだけ休んでいるのは、死亡フラグでしょう」
確かに、Aはプレッシャーや様々な理由で精神的にまいっていたのは確かだが、僕はこの段階で「Aは病欠だ」と思っていた。しかもこの説明をされた。だから、まだ戻ってくることを前提に仕事をしていた。
3)Aは病欠から、多分辞職に至るのだろうと思った僕は、Aに連絡もとりづらく困っていた。
ところがgumiで行われたcocos2dxの勉強会で、僕とAの共通の友達から「酒を飲んだ」と話を聞いた。彼は「Aが辞めた」と言っていた。それで僕は連絡をとった。
会って飲もうという話になった。
この時は「病欠してたけれど、辞めることにしたんだ」と思っていた。
4)飲み会の前日、「衝動的に会社にこなくなったのだろうから会社に荷物があるだろう、全部はもっていけないかもしれないけれど、持って行ってあげるよ」というようなことを連絡した。
彼の返事はこうだった。
『何もないですよー。完璧に。』
これで僕は気がついた。
Aは、ちゃんと辞職のプロセスを経て辞職している。そうでなければ、荷物を持って帰っているわけがない。すなわち、Aはシステマチックに辞職したわけであり、僕は虚偽の説明を受けていた。
5)飲み会で確認した。
Aはメールや様々なもので、プロセスを明白に説明した。
辞職のプロセスは正しく、しかも2週間の期間をおいていた。
つまり宮川社長は、Aが喋っていないのをいいことに、辞職をチームのスタッフである僕に伝えず、虚偽の説明をし続けていたわけである。
しかもその説明をする際に「病欠であり、これは死亡フラグだ」とAを貶める説明をしている。
これは自分に都合がいいからだ。
そして、このようなところで都合よく平然と人を貶める嘘をつく人間が、他のところで自分に都合がいい嘘をついていないとはとても思えない。
つまり宮川社長のしゃべっていることは全く信頼出来ない。
また、上記のような虚偽の説明をする人間が、僕が辞職する際に、全く同じような僕を貶める虚偽の説明を平然とすることは間違いなく確かであり、対外的にすら嘘をつきかねないと判断した。
これは僕のキャリアパスを傷つけかねない可能性があり、また非常に不愉快である。
なので、僕が辞職するに至る過程を、共有出来るように説明させていただくことにした。
以上。
岩崎啓眞
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徹底的に悪者でこき下ろされてしまう私。「間違いなく虚偽をいいふらす、とても不愉快だ」とありましたが、文中の固有名詞をイニシャルに変えた以外は、ほぼ、ばら撒いてた原文ママなので虚偽と取らないでいただければ>Iさん。
反対を押し切って立ち上げたプロジェクトの放棄と同時に自分の利益(詐称的なキャリア)を守る宣言までするのはつくづく感服もの。文中で言ってる虚偽だの何だのは「お前が会社来ないから知らないだけじゃん(必要な情報は朝会で全て共有されますが、Iさんの出席率はほぼ0%。っつーかこの件誰も教えてあげてなかったのかと脱力・・)」と思ったものの、これを読んだ全員がIさんがおかしいとわかるわけでもなく「言われる方にも問題がある」的な声も出たりで勘弁してくれよと思う程度の自分が本当に甘かったと後悔です。
こうした暴走の発端を会社への攻撃と認識し、迅速な対処ができなかったことが敗北そのものでした。ヒットラーの名言に「どんな間違ったことも毎日いえば必ず通じる」とありますが、引き抜き騒動の時はまさかこんなのを信じる人がいるとは!とまさしくの実体験でした。いろいろ後手すぎて悔しすぎます。
また、「徹底的に公明正大、誠実真摯であろう」というのは信念を持って起業するものの命題。どんなことにも正直に対応する信念を徹底して、彼の起こした炎上のつけも全て払うなか、勘違いでも嘘つき呼ばわりされる侮辱はいいようのない気持ち悪さ。彼の問題と対応を疎かにした私自身の身から出た錆であり、一連の炎上事件で多くの罰を受けましたが、この侮辱ほど心身に刻まれた罰はありません。
悪夢から再生へ
セミナー等でIさんの講義を受ける方にはそう注意を呼びかけたいところですが、講師紹介でディレクター経験者(完成させたタイトルってないはず)等と書かれてる点に騙されないよう注意したいと同時に、そもそもこうした詐称詐欺のような問題の共有の仕方には深く悩みます。半端を書いて憶測の議論をしても本末転倒なので結構ズバリとぶっちゃけましたが。
実践を伴わない知識(時に知識と思ってる勘違い)の危うさはスタッフ全員でエイリアンを顔面につけて寝るくらいヤバく、例えるなら、学校の先生が言うことはほぼ正しいですが、実戦経験のない理科の先生の話を鵜呑みにしてロケット作ったら絶対爆発するくらい確定で死にます。(付け加えるならば理科の授業でできる程度の仕事を目指すなら熱心な先生です)
個人的には一連の事件の傷跡も生暖かい現在、Iさんを見るに何か改善された実績があるわけでもなく平和にセミナーが開かれるのは、エイリアン2の冒頭のリプリーと同じような心境で警鐘を言いたくなりますが、やはり映画と同様、そんなことを言っても野暮なだけとは思いつつも、これまで私もUnityを始め多くの講演で全国を回ってクリエーターの成長を促し、ともに成功するチャンスを作るべく活動きたので、引き続き正しい成長機会となるよう、切に願います。
もともとAppBank GAMESは先進的かつ斬新な開発マネージメントでキレキレのゲームを作るのが売りの会社。
起業してから10ヶ月の駆け抜ける日々の内容は各所で講演し、評判を呼びました。
もう哀愁ものですが当時の記事を見ると、なんで悪夢とか言ってんだっけ??という感じ。
これらの成果の講演は日本はおろか海外招待頂くほどキレキレでありました。
ともあれ、Iさんの離職騒動と土壇場のプロジェクトのテコ入れの悪夢を挟んでしまいましたが、改めてAppBank GAMESを再び輝かせるのが次の課題。
Iさんの「必ず失敗する」の予言を覆すには、ゲームクリエーターの永遠の課題「面白いゲームを、少人数で、快適なスケジュールで開発する」の実践が命題と言えます。
もともと私もそれさえ出来れば会社なんてどこでもよく、しかしその信念実現のために会社を興し細部に渡り統括することを目指しました。
かつ、「Iさん騒動が一段落するまで一緒には働かない」と避けられてた盟友のクリエーターと働く調整がついに実現し、新規のラインで心を入れ替えて、クリエーターの本分を学び直そう!という野望が始まりました。
しかし、そのプロジェクトはIさんの悲劇とは真逆に、想像を超えた覚悟の塊のようなチームになるのはおろか、新たな問題を炙りだす薬となります。
ドリームチームが再び誕生・顕著化する光と影
そのプロジェクトは受託でやらせていただく形になったので(Iさん問題なければ違った形もあったのにとは少し悔しくも思います)詳細は避けますが、とにもかくもキレッキレのスペックのチームが誕生しました。
- 誰も遅刻しない
- 誰も残業しない
- 誰もマイルストーンを漏らさない
- 万が一、遅刻欠勤があれば、詳細な業務レポートを朝会までに提出
まさに少数精鋭、もっと褒めたいところですが発注元のディレクターからは「持ち上げて勘違いすると困るからやめてくれ」とよく注意されます。
私も技術監修として毎朝10分の朝会だけ出ていたのですが、業務報告の中で気になる点だけ指導して、当時の理想型の実装が着実に進んでいきました。
そもそも、こうしたラインを複数育てていくのが社長としての本文。Iさんの放棄したトラブルの数々に振り回されてた愚を悔やむも、ようやくあるべき形が見えてきたなという感じでした。
また、こうした事例を積み重ねる思惑には、未だにIさんの甘言に揺れる(引き抜きに応じてたほうが得じゃないかなど)仕事の甘くなったスタッフに、クリエーターの本分を思い出して欲しいと願っての施策。
だがしかし、どんどん研ぎ澄まされていく新チームの業務改善を進めながらも全体の改善案も何かないかと議論すると「だらしない人を見えなくして欲しい」「一度腐ったものは分離しないとダメ」と究極を追求するクリエーターならでは厳しい意見も出るように。
特に、このプロジェクトは盟友の肝いり(大体のプロジェクトは肝いりか命がけですが)でもあり、視界にだらけたものが入らないように配慮して席替えするなど「まずは模範作りから」を徹底しました。
光からは見えないように、影からは見えるように
平たくいえば目障りな人は見えないように、模範の人は見えるようにな話ですが、物理的には視線を遮断しつつも(社内には壁を設けてなく、つい立てなどで実現)クリエーターのあるべき姿を自然に共有できるようにマネージメントに二つの改革を導入。
マネージメント改革その一・業務報告の改善
基本となるのは、毎月の業務報告を一つの文章にまとめるのではなく、関わった仕事をバラバラに、5段階評価のそれぞれの枠に記入する方式を採用。
アートで言えば、うまくいった絵も、そうでなかった絵も、一緒くたに単一評価じゃなく、ある程度まとまった仕事を小分けに自己評価をつけてもらうのです。
S |
A |
B |
C |
D |
業界に影響を与えた |
期待通り・ |
無難にできた |
反省を要した |
上司・同僚のフォローを要した |
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導入して顕著化するのは
「実際にはDの「上司・同僚のフォローを要した」問題ある人間なのに、自分ではAと思ってる」
「実際には期待通りにできたのに、自分では納得できておらず、CやDをつける」
むろん、優秀なのは後者、指導を要するのは前者なのですが、こうした意識のギャップを明確化することによって、それぞれ目標とすべきことを半年ごとの面談で明確化しました。
特に導入時は炎上プロジェクトの穴埋めに難航した時期。元が杜撰なゆえに、できたものの自己評価を低くつける人も多かったですが、大事故に突撃して苦難の末に修復してくれたメンバーには「期待以上だ!」と厚く評価しました。
マネージメント改革その2・評価シートのフルオープン化
二つめの改革は、このシートをフルオープンで全員で共有すること。
提出された業務報告は面談の時期に上長から「期待通りであったか」をベースに意識の差異について面談を進めながら、指摘や改善案を記入します。
こうして完成したものはすなわち、評価シートとして給与・ボーナスの参考になるわけですが、会社である以上、昇給の指標は従業員にとって実際にもらう給料と同様に大事なものです。
そこで、このシートについては、提出フォルダを丸ごと公開のままとする他、「自己評価、記入が面倒だったら、尊敬してる人のシート内容をコピペすればいい」を推奨しました。
前述の通り、大抵の場合優秀な人ほど自己評価は謙虚ながら高給で、精進が必要な人ほど給与は発展途上で自己評価が高く、昇給を望んでいるもの。
そのギャップを教えるのは本当に骨が折れるのですが、シートをフルオープンにすることで、昇給を望む人は、自分より評価されてる人間の心構えと成果を見ることで、自力で改善を見つけれる動線にする狙いです。
こうした仕組みも良かったと思いますが、面談を多く受け持ってくれたわへーの努力もあり、「あいつ、XXがダメだよな」という点を徐々に指摘と修復をしていき、尊敬される人は、よりその貢献が明確に共有されるようになりました。
また、これらの秘策を実行するに欠かせないのは、前述の模範チームの存在。いくらシート上で指導や良い文言を並べても、炎上したチームだけだと「この会社ダメダメじゃん!」と組織批判に逃げる人を救うことは難しいものです。
模範となる結果、すなわち形になった凄いゲームがあると同時に、そこの動線を記録した業務報告と評価があることで、努力しただけ活路が見える会社の土台が見えてきたと思います。
このマネージメント、言うは易しで、実際はIさんのような、成果は全くダメで全てにフォローを要するけど自己評価はピカピカのSを言い続ける人がいたら、誰も仕組みを信用しないし、Iさん自身が仕組みを批判しまくって不協和音で全く進まなかったことでしょう。
ともあれ、マネージメントを改革し、クリエーターの成長の道を作り、黒字にも至り、努力・貢献したものに見返りを分配し
「やるだけやった、これでやっと自分が理想を追求したゲームが作れるかも?!」 と起業した甲斐が見えてきたと思いました。
そう、あの時までは・・・!
予測差異
経営的にはお金も入り、優秀なラインが二つも育ってきて、いろいろつまづきはしたけど、これからと思う時でした。
「うわ!!今月売り上げ落ちたな!!」
サービスインの翌月、初月に比べがっくりと下がった売り上げに一同愕然となります。
しかし、真の問題は、そうした事態に対しての心構えのギャップ。
そのプロジェクトでは流入は100点だったのですが、エンジニアの引き抜き問題で安定性が30点でした。
安定性については通常のテストでは問題が見えず、引き抜きの影響で緩んだ心から甘く実装された細部で問題がトリガーされる、実際にサービスするまでわからない厄介なもの。
経営としては順調な場合、問題が生じた場合で上・中・下の売り上げ予測を考えるもので、流入が順調だった初月はまさに上でしたが、初月流入の途絶えた翌月の売り上げは安定性・継続性に大きく依存し、問題勃発の結果がっつり下の予測が的中になりました。
しかしここで問題となるのが、株式公開となることで作らねばならない四半期予想。こちらには上・中・下がないのです。
ゲームは当たればデカイですが、それ以外は低空飛行になりがち。サーバー問題が露出した翌月の売り上げは見事な低空飛行・下のパターンとなり、4半期予想を上・中・下の中間で作ってしまった予測と大きなギャップが生まれます。そして、その落下差異に「この会社ダメじゃないか?!」と物議が勃発。
下の予測を持ってるABGは対処プランがありますが、そうした予測シートの共有がない全体会議では絶望感を覚えられたと思います。
特に株式公開前で予測とのギャップは命取りという議論が加速していき、その物議は存続の議論に発展してしまいます。
しかし、そうした議論が生じるのもわかりながら、既にエンジニア陣からは「安定性やるなら全部作り直し」と判断されたプロジェクトでもあり、売り上げ予測を安定させるには黒字と収入を維持して次のゲームでも作らないと、この物議は止まらないだろうという現場と、目前のトラブルに翻弄される外圧とに分離が進みます。
負の実績の追求
株式公開に備え、4半期予測からさらに先の予測と議論がどんどん加速する中、地獄の番犬ケルベロスに噛みつかれたように最後の最後まで尾を引くのは、やはりIさんの作った焦付きの記録。
売り上げが下がっとはいえ、黒字の決算予測は固いものの「じゃあその先はどうなるの?」という議論でいうと、Iさんが大炎上させた過去実績と同様のプロジェクトが再び起きたらゲームオーバーじゃんという指摘や、またエンジニアが逃げたら(もしくは同程度の低クオリティになったら)という指摘の嵐。
一言で言えば今のenishみたいになったらどうするの?という戦々恐々の議論と言えば分かりやすいと思います。
赤字グラフなどもセミナーで公開して「でも安心してください」と言い切れば与沢翼を超える伝説になると思います。
真剣に吐露すれば、少なくとも私が雇用してたつい最近までは経験と呼べるものはなく、enishに行かれてからは実績というより悲劇の発表しかない人が、またしても経験者を詐称するような話で困った人を惹きつけて、我々が体験させられた本質のない創作故の失敗へ導きかねない危惧は耐え難いものがあります(しかし、セミナーでいい話もあるのは間違いなしです。Iさんは経験はなくとも、情報収集は大変熱心です)
「うんこを踏んだ話し」を声をあげてするのは大変やぶさかに思うのですが、こうした原発級の事故を起こし続ける懸念を仕方ないと放っておくのも、業界の成長を望む気持ちに反しているジレンマに苦しみます。
チーム一丸となってゲームを作るのは、現場では気づかないかもですが、本当にかけがいのない機会。そうした機会を捻出するために、何年も何人も血のにじむ努力を積み立てています。「実は経歴詐称でした」といったトラブルでプロジェクトが頓挫する苦しみは誰にも味わって欲しくありません。
Iさんの嵐は去り、新たな精鋭チームは順調だし、そこを模範に練度が上がったチームは反省もできてるし可能性がある、という弁明を続けますが、高高度から一気に落ちた売り上げから連想させる「やっぱりダメなチーム」のイメージも芽生え始めた矢先、恐れていた安易なリストラ案も勃発。
リストラすれば少なくとも来期は経営負担が軽くなり、前実績のように(ゲームがポシャっても)見込んでいる収入だけでやってけるだろうという指摘が高まっていきました。
そんなことになればもちろんサービス継続に影響が出て、見込んでいる収益どころじゃない、そう説明しても、安直な意見が次々と出る不毛な議論の連鎖を止められません。
そうしたイメージも、元々は責任放棄と引き抜きで大炎上となった元のチームの負の遺産。リストラ議論の対象となった、運営しているスタッフは自分のチームが解体されながらも修羅場に投入され、問題に突撃して踏ん張って完成させ、サービスを切り盛りしている精鋭です。
そうした努力も貢献も度外視にリストラするというのは、経営の流れからいえば出る一案としては理解しながらも、完全に信念に反する提案でした。
全株式の放棄
かくして決算の間際、黒字ではあったものの、来期予測を磐石にするためにリストラを受け入れるか、もしくは私の持ち分の株を全部放出して業績の責任を取るかの二択、決断しなければ存続はなしという究極の刃が突きつけられます。
要するに株全部(公開した今でいえば8億円)を放棄すれば業績責任は不問とするが、拒否するなら社員勝手にクビにするって決議するよ、お前の株比率じゃ反対不可能だよって話。
結論、その提案を承服したもの、当然各所で「なんじゃそりゃ?!」という話が連発することにはなります。
いろんな物議も意見も説得もありましたが、その時一番大事と思ったのは、前述したクリエーターの原則の徹底。
もし、リストラの議論が長引けば現場の体制が濁って、開発の追求も効率も損なわれ、下手すればIさんのいた時の悪夢に逆戻り。すべての可能性が途絶える懸念さえあります。
むしろ、承服さえすれば、もめかけた経営の議論も改めて味方になり、経営権を手放してもその後僅かの期間ながら、バージョンアップのためのトライ&エラーを回すことができると期待します(まさに8億のガチャ。カイジ並みの世界観)
かくして、トキノラビリンスを始め、提携、契約した会社との業務を満了するまでリストラなどなく、体制を最後まで維持することができました。全株放出で時間を稼いだことでIさんの焦げ付き実績のツケまで吹き飛ぶような劇的な収益アップはできなかったですが、最後の最後までスタッフが一丸となって創作を追求する場であったこと、最後の精鋭チームのスタッフも転職していきましたが、ダウンタイムなしで続けて創作を追求できることを「幸せです」と喜んでくれたことには影でまた泣けました。
ちなみに起業者は株式割合は多く持つことを望むもので、すなわち信念を通したくても目先の都合に振り回されてしまう他の株主の意見を退ける上で議決権のバランスがとても重要。売買を目的とする株式と、経営権の確保の株式は大きく性質が違います。
この場合、私の持ち株5%は議決権として敗北確定していたので、信念を通すために社員を守るなら出された条件を飲んで放出しかありません(正確には捨値で売却、全財産を突っ込んで始めた会社でしたが、その分が戻る程度で終了。と思ったら一気にお金に変えたので税金が超取られて結構な赤字でした)
そもそもの指摘の一つが、この業績で5%の持ち分は、数億円はするであろう公開時の予測価値に比べて「お前、そんなヘボい業績でふざけんなよ」なわけでもあるのですが、こんなことになるくらいなら20%で1000万円くらいの会社だったら自分の出資バランス的にもちょうど良いし議決権でプレッシャーを受ける筋合いもなかったのですが、現実では急速に高まるグループ価値に歩幅が合わせられなかったことで分不相応の持ち株と不満を持たれたことと思います。
成長速度について約束は明確にはしてなかったものの、やはりマックス村井のバブルパワーに一連のゴタゴタをひきづってついてくのは力量不足でした。
そんなわけで、今は余計なものを抱えずで自分の創作に集中することに立ち戻っています。
経営権の喪失・会社の消滅
経営参加の権利を放出したこともあり、その後あっさり会社消滅になってしまいますが、経営の中核を離れ、引き継いでいただいた際に、そうなったらあかんと思ったのは「(予測から見れば)失敗したプロジェクトのメンバーなんだから評価も低くあるべき」という評価の風潮。
会社の消滅と同時にグループの各所に吸収されていくスタッフは原発事故さながらの事故現場に身を投じた勇敢なスタッフにも関わらず評価が軒並み変わってしまい、離職が加速することにもなります。
とてつもない献身で事故プロジェクトを持ち直させたスキルと貢献から考えれば不十分な報いと思っていたのですが、グループ全体から見れば事故だって団体責任、もっと稼げてる人もいるのに評価されてるなんてなんだと思われるのもわかるのですが、元々はそうならないための会社の分離と独立採算でもありました。
いずれにせよ、ゲーム開発のために集ったアスリート集団なので、ゲーム部門がなくなり吸収される先ではいろいろなコンバートを要することと、その調整は多くの労力をかけて消滅が進みました。
さすがにこの事態になると「株もっとけば他の道もあったんじゃない?」のたらればの意見が重く残る場面もありますが、その道の前に、貢献に関わらず誰かがリストラになったり、信じて提携してくれた会社を裏切ることになったり「信頼関係を欠かす選択肢は絶対に取れない」の一点突破で駆け抜けました。
そうした決断に賛美両輪あると思いますが、私の信念は「理想のゲームを作る」こと。そのシンプルな目標は皆一緒と思いますが、裏切りを一回でも犯せばクリエーターの原則は壊れ、それこそ信念の道を永久に閉ざしてしまうと今も当時も考えています。
ゲーム開発は本当に難しい仕事で、多くの人が形にならなかったり、ヒットしなかったりに悩みます。
そうした事例を数多く見てきましたが、やはり究極の事例はIさんで、彼の豪華なキャリアはwikipediaにまで載せてありますが、20年以上もこの仕事をして、実際は一度もまともに何かを完成させたこともないままに、空っぽな内容の喧伝で転職上手。
「投げ出す、裏切る、嘘をつく」の三拍子も驚きましたが、その結果、あれだけ経験と知識を自慢しながら、作ったもの(企画・完成させたもの)がゼロという真実には「こうなったら絶対にダメ」と胸に深く刻まれました。創作とは裏切ったらおしまい。もし、三拍子の要素を私が少しでも持っていれば、リストラを受け入れ、サービスは破綻する反面、AppBank GAMESは残っていたかもしれませんし、少なくとも今は大金持ちでした。そのたらればで確実に言えるのは、命からがらの思いで再生し誕生した精鋭チームは綺麗サッパリないことでしょう(今も彼らは素晴らしい作品を開発中)。そうなれば信念も信条も木っ端微塵です(っとまぁカッコよく言いましたが、実際は自分勝手な信念という一面もあります。なんせ全財産突っ込んで家族には「資産価値で言えば全然プラスだ!」と説明してたことは嘘で終わっちゃったので)
しかしIさんはとてもいい人で、メンバーの大半がそう褒めるし私も認める所ですが、過ちの議論の際に「いい人だから」でかばうメンバーの弁は著しく問題の明確化を阻害しがち。
投げ出す、裏切る、嘘をつく、の三拍子を仲間としては「悪」と割り切るプロ意識を持つまでに育った人は問題は問題と言及できましたが、そうでない人は創作とは形になってこそと言うことを忘れ、Iさんのポジショントークに囚われるようでした。
形は出来なくとも「いい人」だから、大事な人、それは創作の本分を忘れてる話。少なくともそう勘違いしてる間に、他の人は着々と形を作り、磨き上げ、生きた価値を積み上げていきます。時に人の創作に触れ、焦りを覚える時、「投げ出す、裏切る、嘘をつく」がいかに罪深いか気づき前に進むのもまた人生。
おかげさまでそのことを人一倍、身にしみて罪と知る機会に恵まれました(まさか最大級の罪を見るとは思ってませんでしたが)
もともと、キャリアも資産もなくても夢を追えるのが創作稼業というもの。
内容のない肩書きに固執して夢を忘れる業を犯すのは死んでもごめんです。
正直に正面から全て受け切った後
かくしてほぼスカンピン(家のローンを全額突っ込んで始めた会社、株放出で帰ってきた金でローンの積立回復で終了。税金が酷いのでその分の焦付きが心配)に戻り、社長から無職に転落して、うんこ踏んだ恥も警鐘したかったこともむしゃくしゃしたことも良かったことも感謝したこともカッコつけたことも一気に書いてみました。
クリエーターの信条を自分なりに一貫して守った3年間、本当は悔しくて頭によぎるたびに、書き出して忘れてしまいたい、って衝動もありました。
また、文字どおり全財産全身全霊、命まで賭けた仕事でしたが、Iさん問題で血圧185とかになってた日々は「俺、仮病の人の仕事のケツもって死ぬのか?」とシャレにならないところまで行ってました(その日々のおかげか馬鹿でかい腫瘍までできて初めて手術しました)今は「健康ってこんなにすごいことなのか?!」と羽が生える勢い。終電のがしたら10駅くらいなら歩いて帰るくらいになったのも、喜ばしいです。
絶命寸前から現在までの3年間の血圧グラフを見ると経緯が直球すぎて笑えます。
最悪の時は「このまま死ぬのか?」と思う日々でしたが、Iさん離脱直後に魔法のように回復した体調は、ホラー映画のエンディングさながらの開放感でした(Iさんが崩壊させてやったと言ってた韓国の会社の人たちは生きてるのでしょうか??)
本当は「課金のメカニズムとか言ってるだけじゃ結果にならない。基本を知った上で、UXが「これずっと続けられる」ってレベルに昇華するまで磨けるかが勝負だ!」と持論も書きたかったですが(本当に成功してる人は必ずこれ言いますよね)、今はそんな私見の話より、毎日実践することが本当に尊いと感じる日々を送ってます。
会社は失いましたが作った企画やビルドを相談したりレビューする仲間は欠かさないですし、また、作ったものがいい形になったら、そこを土台に何ができるか考える腹積りながら「できなかったら一人で死ね、離婚だ」とカミさんに言われる程度の重圧は、上記の日々に比べたら、まぁそよ風みたいなもんです。
AppBankが無事に上場し、見事な株価となった裏で、AppBank GAMESの存続には一連のせめぎ合いもありましたが、正直に吐露すれば、会社も資産も失った今の空虚感はないといえば嘘になる、どんくらいあるかと言えばきりがないというところ。そりゃ、私の持ち株5%が8億になるとか、もめもしますわな。マフィアなら殺し屋100人くらい雇って抗争するでしょう。
理想のゲームを作るため信念を貫くことを思えば、株を争うより、誠実に生きた先の縁を損なう方が愚かと判断した、そう決断した。たらればはなし、そんだけ。
何より、この回顧録の中にある毒は、創作の本分に対しての毒素そのもの。毒はないに越したことないと今作ってるゲームをあれこれいじりながらしみじみ思います。
今、そういうにはかっこよすぎる話かもですが、それくらいさらっと言えるような未来が来ればと願って。
この3年をともに学んだ皆様、良いゲーム、また作りましょう!