全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は先週の記者会見で、政治献金の再開について「各行が独自に判断する」という立場を表明した。1997年を最後に、政治献金を自粛してきた銀行業界で、なし崩しに再開する可能性が出てきた。

 ときに政府の支援を受けることもある銀行が政権与党に政治献金をすれば、両者の関係に不信を招きかねない。どれほど国民にとって必要な措置でも、国民の理解は得られなくなる。銀行は政治献金を慎むべきだ。

 銀行業界が1998年から政治献金を自粛してきたのは、金融危機のもとで銀行に対して総額13兆円という巨額の公的資金が注入されたからだ。ところが最近では「献金再開の環境が整ってきた」と考える銀行もあるらしい。

 たしかに3メガバンクなどは公的資金を完済したし、長らく納めてこなかった法人税も最近では納めるようになった。とはいえ、今でもひとたび大手銀行が経営危機に陥れば、政府は公的資金を投じることになる。危機の教訓をふまえ、そのほうがコストが安いと多くの国民も受け入れるようになったからだ。

 銀行には、それだけ公的な存在なのだという自覚がほしい。

 そもそも企業・団体献金そのものが段階的に廃止すべきものだ。いまだに放置されていること自体がおかしい。

 20年前、政党助成制度が導入されたのは「政官業の癒着の温床」とされた政治献金をなくすのが目的だった。そういう国民との約束で、政党助成制度には毎年総額300億円を超える国費が投じられている。国民は1人あたり毎年250円を政党活動のために負担しているのだ。

 にもかかわらず政治献金廃止の約束は事実上ほごにされてきた。政治家個人に対する企業・団体献金は禁じられたものの、政治家が代表する党支部へ献金するといった抜け道は許されている。現状は、政治家による税金と企業献金の二重取りと言ってよい。

 恩恵を最も受けているのが最大与党の自民党だ。政党交付金額は最大、企業献金も最も多く集めている。昨年、5年ぶりに政治献金の呼びかけを再開した経団連が、今年も呼びかけを続けるという。

 安倍政権は経団連が重要視してきた法人税の引き下げや原発再稼働などを推進している。経団連が実質的にその安倍政権のために政治献金を呼びかけている。「政策をカネで買う」行為と批判されても仕方ない。