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サイクリスト

ランプレ・メリダの猛攻をしのぎ逆転【レース詳報】限界の勝負でジャパンカップを制したモレマ あと一歩に迫った新城幸也

2015/10/18 20:30更新

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 終盤に猛攻撃を仕掛けたランプレ・メリダ勢が有利と目された小集団のゴールスプリント。しかし優勝候補を打ち破って先頭でゴールしたのは、今年ツール・ド・フランス総合7位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング)だった。そして最終盤の激しい攻防から先頭集団に残った新城幸也(日本ナショナルチーム)が、大歓声のなか3位の表彰台に上った。

ジャパンカップ表彰式で歓声を浴びた(左から)2位のディエゴ・ウリッシ、優勝したバウケ・モレマ、3位の新城幸也 Photo: Naoi HIRASAWAジャパンカップ表彰式で歓声を浴びた(左から)2位のディエゴ・ウリッシ、優勝したバウケ・モレマ、3位の新城幸也 Photo: Naoi HIRASAWA

ファーストアタックが7人の逃げに

スタートを切った選手たち Photo: Ikki YONEYAMAスタートを切った選手たち Photo: Ikki YONEYAMA

 レースは73人の選手が午前10時にスタートした。1990年に世界選手権ロードレースが行われた宇都宮森林公園周辺のコースは、ことし9月の台風被害の影響から、周回コースは例年より短い10.3kmに短縮され、14周する144.2kmの距離で争われた。周回前半の古賀志林道の上りは急勾配が約1km続き、変わらぬ勝負どころだ。

 スタート直後の上りでアタックがかかり、すぐに7人の逃げ集団が形成された。土井雪広(チームUKYO)が先頭で上って頂上を通過。青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)、安原大貴(マトリックスパワータグ)、鈴木龍(那須ブラーゼン)ら国内勢と、マルティン・フェルス(オランダ、チーム ノボノルディスク)、ルー・シャオ・シュアン(台湾、アタック・チームガスト)、エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)が続いた。

1周目、土井雪広を先頭に古賀志林道を上っていく逃げ集団 Photo: Naoi HIRASAWA1周目、土井雪広を先頭に古賀志林道を上っていく逃げ集団 Photo: Naoi HIRASAWA
1周目から逃げが決まり、UCIワールドチームの選手たちが“フタ”をしてメーン集団をコントロール Photo: Naoi HIRASAWA1周目から逃げが決まり、UCIワールドチームの選手たちが“フタ”をしてメーン集団をコントロール Photo: Naoi HIRASAWA
古賀志林道を上るメーン集団 Photo: Naoi HIRASAWA古賀志林道を上るメーン集団 Photo: Naoi HIRASAWA

トレックが牽引するプロトン クネゴがまさかの落車リタイア

 序盤のメーン集団は、トレック ファクトリーレーシングが先頭を固めてスローペース。しかし2周目の下り、集団前方で落車が発生。過去2回の優勝経験があり今大会も有力と目されていたダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)が、負傷でリタイアする波乱となった。佐野淳哉(那須ブラーゼン)、トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカー)らも序盤でレースを去ることになった。

3周目の山岳賞を獲得した青柳憲輝 Photo: Naoi HIRASAWA3周目の山岳賞を獲得した青柳憲輝 Photo: Naoi HIRASAWA
古賀志林道の頂上を通過していく選手たちに、沿道の観客が大きな声援を送った Photo: Naoi HIRASAWA古賀志林道の頂上を通過していく選手たちに、沿道の観客が大きな声援を送った Photo: Naoi HIRASAWA

 逃げる7人は、3周目の1回目の山岳賞を、シェパードとの競り合いに勝った青柳が獲得してガッツポーズ。地元チームの活躍に歓声が上がった。6周目の山岳賞は再び獲得に動いたシェパードが取り、そのまま単独で逃げ続けて9周目の山岳賞も獲得した。シェパードは再び土井らのグループと合流するが、レース後半に入り先行グループからは鈴木、安原、ルーらが遅れた。

 メーン集団先頭は変わらず、トレックのファビアン・カンチェッラーラ(スイス)、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ)と、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チーム スカイ)、フェン・チュンカイ(台湾、ランプレ・メリダ)らがコントロールし、最大3分台まで広がった逃げとの差は10周目には1分半にまで縮まった。

メーン集団を牽引するカンチェッラーラ。トレック勢が集団前方を占めた Photo: Ikki YONEYAMAメーン集団を牽引するカンチェッラーラ。トレック勢が集団前方を占めた Photo: Ikki YONEYAMA
古賀志林道の頂上付近を上る逃げ集団の4人 Photo: Naoi HIRASAWA古賀志林道の頂上付近を上る逃げ集団の4人 Photo: Naoi HIRASAWA

国内勢が奇襲攻撃で撹乱

 逃げの吸収が近づいて来たと思われた10周目の終わり、地元・宇都宮ブリッツェンが思わぬ奇襲攻撃に出た。逃げに乗った青柳以外の、メーン集団に残った選手4人全員が列車を組んでアタックを仕掛けたのだ。かつてブリッツェンに所属していた初山翔(ブリヂストンアンカー)も同調し、上り下りを終えたところで初山と、ブリッツェンの鈴木譲、増田成幸が逃げ集団まで追いついた。

10周目の終わりに宇都宮ブリッツェンがチーム全体での奇襲攻撃に出た Photo: Ikki YONEYAMA10周目の終わりに宇都宮ブリッツェンがチーム全体での奇襲攻撃に出た Photo: Ikki YONEYAMA
上りでメーン集団から先行する(左から)鈴木譲、初山翔、増田成幸 Photo: Naoi HIRASAWA上りでメーン集団から先行する(左から)鈴木譲、初山翔、増田成幸 Photo: Naoi HIRASAWA
メーン集団のはランプレ・メリダが中心となって追走 Photo: Ikki YONEYAMAメーン集団のはランプレ・メリダが中心となって追走 Photo: Ikki YONEYAMA

 メーン集団は、ランプレ・メリダ勢が先頭を牽引して日本勢のアタックを追走。このペースアップに、序盤から集団を引っ張ったカンチェッラーラ、アイゼルらが遅れ、さらには前日のクリテリウムを制したトレックのエース、別府史之も後退してしまった。

 残り3周となる12周目、古賀志林道の上りで増田と初山の2人が先頭となって逃げ続けるが、ランプレ勢の追走がすぐ後ろにまで迫る。最後の山岳賞を初山が先頭で獲得するが、その山頂で2人の逃げは集団に捕えられた。

9人の先頭集団が最終周回へ

集団からカウンターアタックして2人抜け出した山本元喜 Photo: Ikki YONEYAMA集団からカウンターアタックして2人抜け出した山本元喜 Photo: Ikki YONEYAMA

 人数が絞られたメーン集団に残るのは35人程度。下りで山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)、マテイ・モホリッチ(スロベニア、キャノンデール・ガーミン)の2人が抜け出した。協調する2人はランプレ・メリダが牽引するメーン集団から15秒ほど先行して、残り2周へと突入した。

 上りに入り、メーン集団からランプレ・メリダのダブルエース、ディエゴ・ウリッシ(イタリア)、ヤン・ポランツェ(スロベニア)が、満を持して攻撃を開始。先行する2人を一気に追い抜いて先頭へ躍り出ると、頂上でこれに追随できたのは、モレマ、セバスティアン・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)、そして新城のみだった。決定的な先頭集団が形成され、ここに新城が入ったことで、観客のボルテージも最高潮となった。

 先行した5人だが、下りでモホリッチ、ベンジャミン・プラデス(スペイン、マトリックスパワータグ)、さらにベン・スイフト(イギリス、チーム スカイ)が追いついた。さらに下りを終えてからのアップダウンで、フローリス・ヘルツ(オランダ、BMC レーシングチーム)が追いついて、先頭グループは9人になった。人数が増え、さらにスプリントを得意とするスイフトが合流したことで、集団はやや牽制気味の不穏な空気を漂わせながら、いよいよ最終周回へと突入した。

最終周回に入る先頭集団の9人。先頭はポランツェ、新城は最後尾 Photo: Ikki YONEYAMA最終周回に入る先頭集団の9人。先頭はポランツェ、新城は最後尾 Photo: Ikki YONEYAMA

ウリッシの攻撃をしのいだモレマがスプリントで爆発

 大きな勝負所となる古賀志林道の上りでアタックを仕掛けたのは、先頭集団のなかで最有力と目されるウリッシだ。切れ味鋭い上りに反応できたのは、モレマ、エナオの2人のみで、新城が少し遅れて追走する。山頂をウリッシら3人が先頭で通過し、10秒ほど遅れて新城が単独で下りへと入った。日本人ファンの期待を一身に背負う新城が下りで先頭の3人に合流すると、観客からは再び大きな歓声が上がった。

最終周回の上りでアタックしたウリッシ。モレマとエナオが追いかける Photo: Shusaku MATSUO最終周回の上りでアタックしたウリッシ。モレマとエナオが追いかける Photo: Shusaku MATSUO
ウリッシらを追いかける新城。このあと下りで先頭に追いつく Photo: Shusaku MATSUOウリッシらを追いかける新城。このあと下りで先頭に追いつく Photo: Shusaku MATSUO

 田野町交差点ではさらに後ろから、遅れたなかでスイフトを除く4人が先頭4人を追い込むが、田野町からの上りで再び先頭でウリッシがアタック。ここでエナオが後退したが、一方で追走の4人のなかで脚を溜めていたポランツェが先頭へとジャンプに成功。先頭は4人で、ランプレ・メリダのみ2人と有利になった。

 先頭グループでは合流に成功したポランツェが先頭を強力に牽引。後続の4人からはBMCのヘルツが、単独での追走を実らせて残り1kmで先頭グループへと合流した。5人はポランツェが変わらず先頭を引き続け、ウリッシ、モレマ、新城と続く体制で、ゴールスプリントへと突入した。

 ここで勢いよく先頭へと飛び出したのは、184cmと長身のモレマだ。追いすがるウリッシ、新城を寄せ付けず、そのまま先頭でゴールしてガッツポーズを決めた。ウリッシが2位、新城はジャパンカップ自己最高位の3位でゴールした。

ゴールスプリントで優勝を争った(左から)新城幸也、バウケ・モレマ、ディエゴ・ウリッシ Photo: Naoi HIRASAWAゴールスプリントで優勝を争った(左から)新城幸也、バウケ・モレマ、ディエゴ・ウリッシ Photo: Naoi HIRASAWA

新城は最終周回にスローパンク

ゴール直後のモレマ Photo: Ikki YONEYAMAゴール直後のモレマ Photo: Ikki YONEYAMA

 トレック ファクトリーレーシングは、前日のクリテリウムでの別府に続き、2日連続の優勝。モレマは「終盤とてもハードで脚も攣っていたが、最後はうまく上りをこなせて、スプリントもうまくいった」と語ったように、限界まで追い込んだ勝負でつかんだ栄光だった。レースを振り返り、「勝てて少々驚いている。(日本人選手のアタックは)早すぎると思ったが、残り2周を少々ハードにした。そういった意味では、自分にとっては良かったかもしれない」と勝負の分かれ目を分析した。2位のウリッシは、「上りで攻めて、できれば一人で逃げたかったが、追いつかれて集団になってしまった」と敗戦の弁。

 3位の新城は、ゴール後に前輪がパンクしていたことを明かした。「(最終周回に)上りでなんだか重いなと思ったら、脚が重いんじゃなくて自転車が重かったんですね」と笑いながらコメント。最後の1周を振り返り、「ウリッシ選手の上りでのアタックが相当効きました。スプリントになったら僕も少しは自信があったのですが、脚が残っていなかった。最後は僕も脚が攣っていました」と話した。

表彰式でインタビューに応えた3位の新城幸也 Photo: Naoi HIRASAWA表彰式でインタビューに応えた3位の新城幸也 Photo: Naoi HIRASAWA
山岳賞を獲得した(左から)青柳憲輝、エリック・シェパード、初山翔 Photo: Naoi HIRASAWA山岳賞を獲得した(左から)青柳憲輝、エリック・シェパード、初山翔 Photo: Naoi HIRASAWA
ぬいぐるみを観客にプレゼント Photo: Naoi HIRASAWAぬいぐるみを観客にプレゼント Photo: Naoi HIRASAWA

 大会の印象を聞かれたモレマは、「応援のすごさは来る前から聞いていたが、上りなどは本当にたくさんの人が応援してくれて、とてもやる気が出た」と話す。また、本場ヨーロッパのレースと比べても、「ツール・ド・フランス以外では、これだけ沢山のお客さんが見に来ることはないんじゃないかと思う」と初出場のジャパンカップの印象を語った。

■ジャパンカップサイクルロードレース(151.3km)
1 バウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング) 3時間53分40秒
2 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +0秒
3 新城幸也(日本ナショナルチーム) +0秒
4 フロリス・ゲルツ(オランダ、BMC レーシングチーム) +0秒
5 ヤン・ポラン(スロベニア、ランプレ・ メリダ) +11秒
6 マテイ・モホリッチ(スロベニア、キャノンデール・ガーミン) +16秒 
7 セバスティアン・エナオ(コロンビア、チーム スカイ) +22秒
8 ベンジャミン・プラデス(スペイン、マトリックスパワータグ) +44秒
9 ベン・スイフト(イギリス、チーム スカイ) +1分22秒
10 畑中勇介(チームUKYO) +1分54秒
11 ミヒャエル・シャール(スイス、BMC レーシングチーム) +1分54秒
12 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ) +1分54秒
13 ピエールパオロ・デネグリ (イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +1分54秒
14 初山翔(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +1分54秒
15 ハビエル・メヤスレアル(スペイン、チーム ノボノルディスク) +1分54秒
16 ホセビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ) +1分54秒
17 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +1分54秒
18 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) +1分54秒
19 リュウ・シュウ・ミン(アタックチームガスト) +1分54秒
20 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム) +1分57秒

ファンの大きな声援に応える新城幸也 Photo: Naoi HIRASAWAファンの大きな声援に応える新城幸也 Photo: Naoi HIRASAWA
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