2015年10月19日05時10分
「サンタさーん」
沿道の観客たちからひときわ大きな歓声が上がる。白いひげに、赤いユニホーム。宇賀治(うかじ)孝一(78)は、この11月で35回を数える「大分国際車いすマラソン大会」の名物ランナーだ。1981年の第1回大会から欠かさず出場している。
3歳でポリオ(小児まひ)と診断された。車いすが買えず、高校卒業まで手押し車に乗せられて登校した。遠足や修学旅行のときは、学校から自宅待機を命じられた。介助する友も教師もなく、学校のトイレに行った記憶がない。今は大分県別府市で小さな模型店を開く。
市内の社会福祉法人「太陽の家」の創設者で、主治医の故・中村裕から勧められたのが大会出場のきっかけだ。当時44歳。「人生、すべてがうまくいってない。疎外されてきた怒りをぶつけてやろう」と思った。
初めてのレース。公道を堂々と走れることがうれしかった。そして今、「別府のサンタ」と親しまれるまでになった。「意地でも走り続けますよ」。今年も大会にエントリーした。
大会は、太陽の家の忘年会での中村の問いから始まった。
「障害者が力強く生きていることを社会にアピールできないだろうか」
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