先月4日、ソウル市内で「Grand K-Pop Festival」が開催された。中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)発生で落ち込んだ観光需要を立て直すための同イベントで、外国人2万人が観覧したという。いつの間にか韓流は観光や化粧品などの他産業にも波及効果を起こしている。歌手PSY(サイ)の「江南スタイル」でも分かるように、パブリック・ディプロマシー(広報外交=官民が連携しながら広報・文化交流を通じ外国の国民・世論に働きかける外交)にとっても大きな力になる。
一見、韓流は世界中に広まっているように見えるが、現実はそうではない。数年前、フランス・パリを覆い尽くしたK-POPダンスを踊る若者たちはどこに行ってしまったのだろうか? 韓流を取り上げる時、どの国にも存在する少数のマニアックなファン層に惑わされてはならない。お金になる韓流人気は中国・日本・東南アジアに限られている。
だからこそ、富国のためのコンテンツ創出や国益増大の動力源として注目されている韓流には世界市場拡大プランが必要だ。これは国を挙げての体系的な韓流市場開拓案を意味する。映画・ドラマ・音楽などは作りさえすれば無限の複製が可能で、市場確保イコール収益につながる。したがって、アジア圏で人気を保つことも重要だが、北米・南米・欧州などで市場を開拓するには、より多くの努力が必要だ。
1回限りの外交行事や、韓流が盛んな地域に公的資金を投入する大型公演などは避けるべきだ。韓流市場が形成されている所では、民間が積極的に収益活動を行えるよう、環境を整えてやればいい。その代わり、市場の可能性が大きい地域を対象にする場合は、現地の綿密な条件分析をもとに、官民が協力して集中的な投資・マーケティングをしなければならない。実例として、筆者はオーストラリアで韓流ドラマ進出のためいろいろ努力したが、良い反応を得るのは難しかった。地元の人々はサスペンス物を好み、英語で吹き替えられた作品を手に入れるのも苦労した。『宮廷女官チャングムの誓い』『冬のソナタ』などの時代劇・ラブストーリーが北米や欧州でヒットしなかったのも、こうした理由からだ。
文化は政府主導の育成策では成功できないとも言うが、うまく作りさえすれば自ずと市場が拡大するという期待もある。だが、韓流市場の拡大は創作とは別次元のことだ。むしろ、政府・国家レベルの力を集結させなければならず、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)のような機関の力も必要だ。
ただし、いくら大衆文化とは言え、文化の拡大・浸透は製品輸出とは違い、相手国に懸念を抱かせる可能性もあるため、すべてを静かに行われなければならない。先日発表された来年度予算案ではインフラ投資が減ったが、文化分野は韓流ブーム拡大などのために7.5%増額するという。今や韓流市場開拓は、韓国の時代的な使命であると言えると思う。