だがこうした中、サムスンにとってやや明るい兆しが見えている。サムスンは8月「ギャラクシーノート5」の発売と同時に世界に先駆け韓国で決済サービス「サムスンペイ」の運用を始めた。飲食店や衣料品店などで決済端末にスマートフォンをかざせば代金が決済されるサービスだ。アップルの決済サービス「アップルペイ」が近距離無線通信(NFC)技術を採用した新型決済端末でのみ使用できるのに対し、サムスンペイは旧型、新型いずれの決済端末でも使用できる。
サービス開始から1カ月で、実に60万人がサムスンペイに加入した。サムスンがここ最近打ち出したサービスで、短期間でこれほど大きな反響を呼んだものはなかった。サムスンペイを使いたいという理由でサムスンのスマートフォンを選ぶ人も現れている。
サムスンペイは米ベンチャー企業のループペイが基になる技術を開発した。サムスンは2月にこの会社を買収しており、買収額は2500億ウォン(約260億円)ほどと伝えられる。「名も知られていない企業をそんなに高額で買収する必要があるのか」という意見も少なくなかったという。だが今、そんなことを言う人は誰もいない。元を取る以上の利益が出たとも言われる。
スマートフォンの製造技術が標準化されつつある中、ハードウエアで確実な差別化を図るのは次第に難しくなっている。ハンカチのように自由自在にたたんだり広げたりできる製品、一度の充電で1週間もつバッテリーを搭載した製品などを出さない限りは、だ。中国のメーカーはサムスンのギャラクシーにさほど劣らない性能のスマートフォンを半値で売っている。サムスンが中国の猛追をかわし、アップルに追いつくには、ループペイのような企業、人材をもっとたくさん発掘するしかない。それを会社の中で見つけるのか、外で見つけるのかは重要ではない。