現在、スマートフォンの製造を手掛ける企業は世界に1000社ほどあるとされる。スマートフォンが人々の生活必需品ともいえるほど普及し、企業がこぞって市場に参入した結果だ。だが、このうち利益を出している企業はごくわずかにすぎない。カナダの投資銀行カナコード・ジェニュイティの調査によると、スマートフォンを製造する世界主要8社の1-3月期営業利益の92%をアップルが占めた。サムスン電子は15%で2位、残りの6社は合わせて7%の赤字を出した。
販売台数をベースにしたシェアでは、サムスンが21%で世界1位、アップルは14%で2位だが、利益の面ではアップルの「iPhone(アイフォーン)」がサムスンの「ギャラクシー」を大きく引き離している。アップルは高級スマートフォンに絞って販売し、大きな利益を出しているのだ。
サムスンはこれまでアップルに追いつくため、さまざまな試みを行ってきた。薄くて軽いボディ、写りのいいカメラは言うに及ばず、曲面ディスプレーを搭載したり、背面カバーにレザーのような素材を使ってみたりもした。それにもかかわらず、アップルとの利益格差は広がる一方だ。
サムスンの社員たちはしばしば「自社製品のほうがはるかに高性能なのに、どうして見た目だけでiPhoneが選ばれるのか分からない」とこぼす。だが彼らは、問題の核心を見誤っている。アップルのパワーの源はiPhoneそのものではなく、それと密接に結び付いたソフトウエアやサービスなのだ。アプリケーション(アプリ)を売買するサイト「App Store(アップストア)」、音楽や映画をダウンロードできるサービス「iTunes(アイチューンズ)」、音声アシスタント機能「Siri(シリ)」などがその代表だ。これに対し、サムスンのスマートフォンにしかない目玉サービスは何なのか、いくら考えても思いつかない。