松浦新
2015年10月19日05時00分
かつて産炭地域として栄えた北海道芦別市。ピーク時に7万5千人を超えた人口はいま2万人を切っている。JR芦別駅の正面、「ギンザ」の看板がかかったパチンコ店はこの十数年、閉店したままだ。
店を所有する南川富美雄さん(53)は、60キロほど離れた岩見沢市で別のパチンコ店を経営しながら、芦別の物件の買い手を10年以上探しているが、見つからない。建物を壊して更地にすれば、約500平方メートルの土地を100万円で買う、という人はいた。しかし解体には1千万円かかるため、あきらめた。
市場価値がゼロに近い不動産物件だが、芦別市はこの土地に約150万円、建物に約4200万円の評価額をつけている。自治体が固定資産税をかける根拠となる物件の「価値」だ。この評価額などに基づき、南川さんは固定資産税・都市計画税合わせて毎年約76万円を納めている。「そんなに高く評価するなら」と、芦別市に物件で納めさせてほしいと申し入れたが、応じてもらえなかった。
芦別市は、高い評価額に据え置いている理由を「使っている、いないは持ち主の勝手。(固定資産税は)資産価値に対してかけるものだから変わらない」(税務課)と説明する。
市職員の給料を一時、1割カットするなど芦別市の財政事情は苦しい。このため市側にすれば、市税収入の半分を占める固定資産税収をなんとか維持したい。市は2013年まで5年間、固定資産税率を標準の1・4%より高い1・55~1・6%に上げ、いまも1・45%をかけている。
もうからなくなった物件の固定資産税評価をめぐり、自治体と事業者が争う裁判も起きた。
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