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木村岳史の極言暴論! 日経コンピュータ

「IT部門は素人集団」という事実を知らない社長の大問題

2015/10/19
木村 岳史=日経コンピュータ (筆者執筆記事一覧
日経コンピュータ元編集長が斬る!IT業界の不条理――。業界を冷徹にウオッチし続けてきた木村岳史の論説を書籍化した「SEは死滅する もっと極言暴論編」。定価1500円+税。好評につき重版!

 ユーザー企業のIT部門の人はよく「うちの社長はITを分からない」と陰口を叩く。陰口がよいかどうかは別にして、今どき企業の経営者がITを分からないようでは、本当に大問題だ。ただ、それ自体が問題と言うよりも、ITを分からないものだからIT部門をITの専門家集団だと経営者がたわいなく信じていることのほうが、実は重大な問題なのだ。

 そもそも「社長はITを分からない」とは、いかなる意味なのか。陰口を叩くIT部門もまさか、経営者に技術者並みの知識を要求しているわけではあるまい。そもそも今は、かなり高齢の経営者でもスマートフォンやタブレットを持ち、アプリも使いこなしている。一昔前には確かにいたITを全く分からない経営者は、今や皆無と言ってよい。

 結局のところ、IT部門が嘆く「社長はITを分からない」とは、自分たちが管理する情報システムやIT部門自体に経営者が全く関心を示さないことを指しているのだろう。つまり、「自分たちは経営から大事に思われていない」という鬱屈した思いが、「社長はITを分からない」という言葉になって出てくるわけだ。だが当の経営者は、決して無視しているわけではない。

 経営者からすると「ITのことは専門家に任せている」といった意識でいる。日本企業の経営者は、財務であれ、法務であれ、スペシャリティが必要な業務については専門家に任せるというのが“伝統”で、ITについてもその延長線上にある。ただ、財務担当や法務担当の役員と異なり、IT部門のボスであるCIO(最高情報責任者)は経営者とあまり話せないものだから、IT部門に妙な被害者意識が蔓延するのだ。

 で、こうした「ITをよく分からない」経営者の最大の問題点は、冒頭に記したようにIT部門を専門家集団だと信じて疑わないことだ。だが、今のIT部門の多くは、ITに関して素人集団にすぎない。今やIT活用の巧劣がビジネスの成否、企業の命運を決める。そんな経営に最重要なITを素人に任せているのは、経営者として“背任行為”に等しい。経営者にその自覚が無いのが大問題なのだ。

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