こんばんは、管理人のゴゴです。
懐かしい人にとっては懐かしい。知らない人は全く知らないそんな作品です。
第54回はあつたゆりこ先生の名作『ひき裂かれた顔』です。
懐かしい人にとっては懐かしい。知らない人は全く知らないそんな作品です。
第54回はあつたゆりこ先生の名作『ひき裂かれた顔』です。
また『週刊マーガレット』掲載作品なんですか? 前の『赤い爪あと』の時も言いましたけど、そんなに怖い作品ありましたっけ?
週マからやるのはこれが最後かもね。60年代の古賀新一先生の一連の作品、1979年連載開始の菊川近子先生の『赤い爪あと』、そして1980年に連載開始の本作品で、「新三大こわすぎるマーガレット」です。
のっけからどこぞのバラエティ番組をパクったような言い回しはやめてください。新三大って、今2015年だから全部30年以上前で古いですし。
オマージュだよオマージュ。タイトルに著作権はないらしいよ。なお、『引き裂かれた顔』という間違った記述をよく見かけますが、正しくは『ひき裂かれた顔』です
いつもいつもで申し訳ないんですけど、聞いたことない方です。Wikipediaにも引っかからないわ。
ホラー作品をまとめた本としては全4冊です。趣向を変えて歴史を遡ってそれぞれの作品の大筋を見ていこうか。まず最新作。『超常のテレカ』 1987年頃の『ザ・マーガレット』掲載作品です。
30年前の最新作・・・テレカって今の子供が聞いてわかるのかしら。あ、一応説明しますと、公衆電話で使用するためのカード型通貨みたいなもので、Suicaとかのことではないですよ。
あらすじってあらすじもないんだけどね。拾った不気味なテレホンカードを使って電話をかけたら、電話先の嫌いな相手がひどい目に遭ったり、カードの度数が減るたびに寿命が縮んだりするオムニバス短編です。
絵柄は思いっきり少女マンガですが・・・
同時収録の作品もそこまで怖い話じゃないですね。絵が昔の少女マンガで安心して読めそうですよ。
どっこい、ノーモアラブロマンス。あつた先生の作品の最大の特徴は、その少女漫画世界を地獄の底に引きずり込もうとする恐ろしいモンスター描写です。
個人的には女性版谷間夢路先生だと思ってます。
きゃあああぁあー! ひぇぇ、わたし初めてブログ記事内で悲鳴あげちゃいました・・・
なかなか良い悲鳴だったよ。そんな感じで、ドキッ☆これって恋かしら? みたいな少女漫画がいっぱい載っている誌面で、読者が胸キュンを突き抜けて心臓発作で即死しそうなホラー漫画を量産していたのがあつたゆりこ先生です。
うう、可愛い絵柄はギャップで攻めてくるというセオリーを忘れてました。
ほら、まだまだ行くよ。『吸血の町』 1986年頃の『週刊マーガレット』掲載作品です。悪性貧血による謎の不審死が相次ぐ街に越してきた一家が、吸血鬼とそれにあやつられた人々に襲われる正統派吸血鬼もの。
吸血鬼ものなら安心ですね。結構少女漫画でも耽美な美形吸血鬼が出てくるやつっていっぱいありますもんね。
どっこい、ノーモアポーの一族。吸血鬼は立ち襟のマントを羽織った美形というセオリーを完全に無視して、恐ろしさを追求した造詣となっております。
チューチュー吸えなさそうな噛み付きシーン
ひぃぃ! こんな牙で噛まれたら首筋に牙のあとが残るどころじゃないですよ!頸動脈ごと持ってかれますよ!
そこがいいんじゃない。恐ろしい造形で読者を怖がらせようという点に全力投球してるわけだよね。そして、ホラーブームの当時でもその怖さは結構な高水準です。
出だしから胃もたれしそうです。
じゃあ、次行こうか。『悪霊夢』全2巻。1985年頃の『週刊マーガレット』掲載作品です。ビデオ屋に紛れていたラベルの無いビデオを見てしまった主人公が、ビデオに撮りこまれていた悪霊に憑りつかれてしまう話。
逆劇的ビフォー(左)アフター(右)です
ビデオを見たら悪霊に憑かれてしまうなんて『リング』みたいな話ですね。
何度でもいうけど、『リング』があまりにも有名になってしまっただけで、「出所不明のビデオを見ると怖い目にあう」っていう都市伝説は、VHSブームの85年前後から結構あるんです。
流行ものを取り入れているわけですか。
それだけじゃないよ。『悪霊夢』は主人公が悪霊に憑りつかれてからが本題なんだけど、ちょっとその、そこの描写がね、観たことある人なら一発でわかるぐらいその、あれなんですね。
めずらしく歯切れが悪いですね。なんなんですか?
まぁ30年経って時効だと思いますんで言ってしまいますと、『悪霊夢』で描かれる恐怖描写はめっちゃ映画『エクソシスト』なんですね。一時停止にした映画を観ながら描いてませんか?ってぐらいめっちゃ似てます。
語るまでもないホラー映画の金字塔
わ、ほんとだ!顔の傷とかさっきと一緒!
描写だけじゃないんだよね。清純な主人公が悪霊に憑りつかれて汚い言葉でボーイフレンドを罵るようになったり首が180度回ったり、まんまといえばまんまな内容です。出来ればブリッジして階段を駆け下りてほしかった。
この指を咥えるシーンといい・・・
これは・・・いいんですかね。
いいのいいの。昔の少女漫画なんて勝手に古い映画からストーリーを拝借していることはしょっちゅうあるから。前やった『聖ロザリンド』もそうだね。
時代が違うってことですか。いいのかなぁ。
いいか悪いかは置いておいて、あつた先生の『悪霊夢』はインスパイヤされた部分は多いですが、ホラー漫画としては良い出来です。何度読んでもなにも考えず恐怖を楽しめるところが特にいい!考えるな! 感じろ!
それこそ、それがいいか悪いかはよくわかりません。
さぁ! そしてついにご紹介です。『ひき裂かれた顔』 1980年の『週刊マーガレット』掲載作品です。この本は上記3巻と違ってレーベルが「マーガレットレインボーコミックス」なので、なかなかお目にかからない本です。
そもそもあつたゆりこ先生の本を探して古本屋をめぐっている人がどれくらいいるのかと。
目の前にいるぜ! 野暮なこと言うない。本作はあつた先生の初めての恐怖作品です。80年の本作以前、あつた先生は読切等で普通の少女漫画を描いてました。突然のホラーデビューです。
『赤いつめあと』の反響が大きかったから、別の先生に恐怖作品を描かせてみたような感じですかね。
そんな気がするよ。さて、先に言っておきましょう。『悪霊夢』の時もそうでしたが、『ひき裂かれた顔』もパ・・・オマージュです! 原典はこちら、映画『顔のない眼』
(今絶対パクリって言いかけたわ・・・) 白黒映画とはまた古いですね。顔のない眼? 眼のない顔じゃないんですか?
顔のない眼でいいの。原題もそうなってます。内容を言うと『ひき裂かれた顔』の紹介が半分終わってしまうので言いませんが、元祖白マスクとして有名な名作ゴシックホラーです。ちょっと物悲しい雰囲気と、変な音楽が素敵。
白マスクってなんだ? って人はぜひ「スケキヨ」でGOOGLE検索してみてくださいね。
中身に入ろうか。物語は両親を亡くした主人公の片桐めぐみが、親戚の医学博士古城博士に引き取られ、古城医学研究所を訪れるところから始まります。
週マからやるのはこれが最後かもね。60年代の古賀新一先生の一連の作品、1979年連載開始の菊川近子先生の『赤い爪あと』、そして1980年に連載開始の本作品で、「新三大こわすぎるマーガレット」です。
のっけからどこぞのバラエティ番組をパクったような言い回しはやめてください。新三大って、今2015年だから全部30年以上前で古いですし。
オマージュだよオマージュ。タイトルに著作権はないらしいよ。なお、『引き裂かれた顔』という間違った記述をよく見かけますが、正しくは『ひき裂かれた顔』です
ええ。あつたゆりこ先生は久々の少女漫画家です。1975年頃から集英社の「マーガレット」系列誌でいくつかの漫画作品を残されていますが、90年代に入るとパタリと姿を消してしまった知る人ぞ知る漫画家さんです。
いつもいつもで申し訳ないんですけど、聞いたことない方です。Wikipediaにも引っかからないわ。
ホラー作品をまとめた本としては全4冊です。趣向を変えて歴史を遡ってそれぞれの作品の大筋を見ていこうか。まず最新作。『超常のテレカ』 1987年頃の『ザ・マーガレット』掲載作品です。
30年前の最新作・・・テレカって今の子供が聞いてわかるのかしら。あ、一応説明しますと、公衆電話で使用するためのカード型通貨みたいなもので、Suicaとかのことではないですよ。
あらすじってあらすじもないんだけどね。拾った不気味なテレホンカードを使って電話をかけたら、電話先の嫌いな相手がひどい目に遭ったり、カードの度数が減るたびに寿命が縮んだりするオムニバス短編です。
絵柄は思いっきり少女マンガですが・・・
同時収録の作品もそこまで怖い話じゃないですね。絵が昔の少女マンガで安心して読めそうですよ。
どっこい、ノーモアラブロマンス。あつた先生の作品の最大の特徴は、その少女漫画世界を地獄の底に引きずり込もうとする恐ろしいモンスター描写です。
個人的には女性版谷間夢路先生だと思ってます。
きゃあああぁあー! ひぇぇ、わたし初めてブログ記事内で悲鳴あげちゃいました・・・
なかなか良い悲鳴だったよ。そんな感じで、ドキッ☆これって恋かしら? みたいな少女漫画がいっぱい載っている誌面で、読者が胸キュンを突き抜けて心臓発作で即死しそうなホラー漫画を量産していたのがあつたゆりこ先生です。
うう、可愛い絵柄はギャップで攻めてくるというセオリーを忘れてました。
ほら、まだまだ行くよ。『吸血の町』 1986年頃の『週刊マーガレット』掲載作品です。悪性貧血による謎の不審死が相次ぐ街に越してきた一家が、吸血鬼とそれにあやつられた人々に襲われる正統派吸血鬼もの。
吸血鬼ものなら安心ですね。結構少女漫画でも耽美な美形吸血鬼が出てくるやつっていっぱいありますもんね。
どっこい、ノーモアポーの一族。吸血鬼は立ち襟のマントを羽織った美形というセオリーを完全に無視して、恐ろしさを追求した造詣となっております。
チューチュー吸えなさそうな噛み付きシーン
ひぃぃ! こんな牙で噛まれたら首筋に牙のあとが残るどころじゃないですよ!頸動脈ごと持ってかれますよ!
そこがいいんじゃない。恐ろしい造形で読者を怖がらせようという点に全力投球してるわけだよね。そして、ホラーブームの当時でもその怖さは結構な高水準です。
出だしから胃もたれしそうです。
じゃあ、次行こうか。『悪霊夢』全2巻。1985年頃の『週刊マーガレット』掲載作品です。ビデオ屋に紛れていたラベルの無いビデオを見てしまった主人公が、ビデオに撮りこまれていた悪霊に憑りつかれてしまう話。
逆劇的ビフォー(左)アフター(右)です
ビデオを見たら悪霊に憑かれてしまうなんて『リング』みたいな話ですね。
何度でもいうけど、『リング』があまりにも有名になってしまっただけで、「出所不明のビデオを見ると怖い目にあう」っていう都市伝説は、VHSブームの85年前後から結構あるんです。
流行ものを取り入れているわけですか。
それだけじゃないよ。『悪霊夢』は主人公が悪霊に憑りつかれてからが本題なんだけど、ちょっとその、そこの描写がね、観たことある人なら一発でわかるぐらいその、あれなんですね。
めずらしく歯切れが悪いですね。なんなんですか?
まぁ30年経って時効だと思いますんで言ってしまいますと、『悪霊夢』で描かれる恐怖描写はめっちゃ映画『エクソシスト』なんですね。一時停止にした映画を観ながら描いてませんか?ってぐらいめっちゃ似てます。
語るまでもないホラー映画の金字塔
わ、ほんとだ!顔の傷とかさっきと一緒!
描写だけじゃないんだよね。清純な主人公が悪霊に憑りつかれて汚い言葉でボーイフレンドを罵るようになったり首が180度回ったり、まんまといえばまんまな内容です。出来ればブリッジして階段を駆け下りてほしかった。
この指を咥えるシーンといい・・・
これは・・・いいんですかね。
いいのいいの。昔の少女漫画なんて勝手に古い映画からストーリーを拝借していることはしょっちゅうあるから。前やった『聖ロザリンド』もそうだね。
時代が違うってことですか。いいのかなぁ。
いいか悪いかは置いておいて、あつた先生の『悪霊夢』はインスパイヤされた部分は多いですが、ホラー漫画としては良い出来です。何度読んでもなにも考えず恐怖を楽しめるところが特にいい!考えるな! 感じろ!
それこそ、それがいいか悪いかはよくわかりません。
さぁ! そしてついにご紹介です。『ひき裂かれた顔』 1980年の『週刊マーガレット』掲載作品です。この本は上記3巻と違ってレーベルが「マーガレットレインボーコミックス」なので、なかなかお目にかからない本です。
そもそもあつたゆりこ先生の本を探して古本屋をめぐっている人がどれくらいいるのかと。
目の前にいるぜ! 野暮なこと言うない。本作はあつた先生の初めての恐怖作品です。80年の本作以前、あつた先生は読切等で普通の少女漫画を描いてました。突然のホラーデビューです。
『赤いつめあと』の反響が大きかったから、別の先生に恐怖作品を描かせてみたような感じですかね。
そんな気がするよ。さて、先に言っておきましょう。『悪霊夢』の時もそうでしたが、『ひき裂かれた顔』もパ・・・オマージュです! 原典はこちら、映画『顔のない眼』
(今絶対パクリって言いかけたわ・・・) 白黒映画とはまた古いですね。顔のない眼? 眼のない顔じゃないんですか?
顔のない眼でいいの。原題もそうなってます。内容を言うと『ひき裂かれた顔』の紹介が半分終わってしまうので言いませんが、元祖白マスクとして有名な名作ゴシックホラーです。ちょっと物悲しい雰囲気と、変な音楽が素敵。
白マスクってなんだ? って人はぜひ「スケキヨ」でGOOGLE検索してみてくださいね。
中身に入ろうか。物語は両親を亡くした主人公の片桐めぐみが、親戚の医学博士古城博士に引き取られ、古城医学研究所を訪れるところから始まります。
古城博士の研究所は住居部分の屋敷と一つになっており、広大な庭もある豪邸でした。越してきて初日、めぐみは世話係のばあやと古城博士の一人娘である綾乃と出会います。綾乃は同い年のめぐみから見てもハッとするような美しさの少女でした。
綾乃と同じ高校に通うこととなっためぐみは、気のいいクラスメイトや明るい好青年の早見くんと出会い、新生活に希望を感じます。ですが学校ではプライドの高い綾乃は浮いているようで、みんなに疎まれていました。
ある夜、屋敷にこだまするうめき声の正体を追っためぐみは、部屋の中で苦しんでいる綾乃の姿を目にします。とっさに部屋に入って介抱すると、日中はしていなかった綾乃の頭半分を覆い隠している包帯がバラリとめくれました。
焦らない焦らない。包帯が外れて露わになった右の額には、ごく小さな傷跡がありました。苦しむ綾乃を心配するめぐみですが、綾乃は勝手に部屋に入ってきたことに怒り、彼女を追い出します。
茶化さない茶化さない。めぐみを追い出してから、綾乃の額の傷はべろりと大きく剥げて広がっていきました。傷跡は今まさに広がろうとしていたところだったのです。
さてその翌日、めぐみは研究所の庭のなかで夕べのうめき声によく似た声を耳にします。声のする方へ足を向けると、庭の木にすがりつくようにして苦しそうな声を上げている女がいました。
不意に声をかけられて一瞬体をわななかせた女ー振り向いたその顔はまるで顔の皮を丸ごと剥がされたように血管が浮き出ていて、真っ赤にただれたおどろおどろしい顔でした。
顔よりも目つきがあれですね
まさかそーんなわかりやすいわけないじゃん。ちなみにここで第1話終了ですが、この時の予告アオリにはこのような謎の言葉が書かれています。「このただれた顔の女は、本当に綾乃!?」
いやいや、まだわからないから。恐ろしい女の顔を直視してしまっためぐみはショックで気を失ってしまいます。目が覚めた時には古城博士に介抱されてベットに寝かされていました。
こわいもの見て気を失うのはお約束みたいなもんだよ。ベットの側には綾乃の姿もありました。普段と変わらぬ凜とした美しい相貌で、庭で見た女の顔とはとても重なりません。果たしてめぐみはまぼろしでも見たのでしょうか?
さーてさて、こっからが週刊少女誌のホラー漫画名物「次回への引きで恐ろしいシーンを使いながら、毎話ちょっとずつストーリーが進む構成」です。
Yes! そのとおり! あつた先生はこの構成が非常に上手かったのです。実際どんなのか見てみよう。
翌日、休み時間に校庭でボール遊びをしていると、めぐみが受けたボールは手元が狂って綾乃の顔に直撃してしまいます。とっさに謝るめぐみですが、綾乃は今までに見たことのない恐ろしい形相で怒り狂いました。
その日の下校中、家まで送ると言ってくれた早見くんと別れてからめぐみは恐ろしい女に出会います。白いローブのようなものを身にまとって佇む女ーその顔は醜くただれ、先日庭で見た女に違いありませんでした。
女はやはりまぼろしではなかったのです。果たしてめぐみの運命は!と、いうところが2話目の終わりです。引っ張るでしょー。
めぐみは逃げ去ろうとする女の姿を追いますが、途中で見失ってしまいます。翌日、大きな騒ぎを聞きつけて外へ見に行くと、近隣の池から若い女性の変死体が見つかったと言います。
死体の顔は皮膚がなく焼けただれたように真っ赤で、警察は自分の醜さに悲嘆にくれての自殺だろうということで事件を片付けました。めぐみは死体の顔を見て、自分の見かけたあの女が死んだのだと思いました。
事件後、体調が回復した綾乃はまた学校へ出てくるようになりました。めぐみも安心こそせよ、彼女を疑いもしません。まさか綾乃が自分の醜い顔を隠すため、他人の顔の皮を仮面として被っていたなんて夢にも思いませんでした。
完全にいってしまった綾乃さん
まあ、ばれずにはいられないよね。犯行には父である古城博士も関わっていました。事の起こりは綾乃が幼い頃、博士の失敗によって顔の皮膚が腐り落ち続けるようになってしまったことだったのです。
自らの失敗を取り返すために、博士は娘のただれた顔に新鮮な女性の顔を仮面としてかぶせるようになりました。仮面が風化して使い物にならなくなると、また新しい犠牲者の顔を引き剥がして取り付け、凶行を重ねます。
元のような美しさを求めて苦しむ娘。その姿を見て自責の念にかられ、道を踏み外した父。めぐみの暮らす古城邸には、綺麗な外観からは考え付かないほどのドロドロとした感情が渦巻いていましたのです。
いーい、観点だね、助手よ! その目線やよし。
正直だねこのやろ、まあいいや。大事なことなんで話そうか。ホラー漫画において、『顔が変わってしまう』というのは実は大変頻出の恐怖演出です。その心は『私が私でなくなってしまうこと』です。
そんなことはない! さっちゃん、朝起きて必ずすることといえば何かな?
1日に必ずは見るでしょ、鏡。そこに映る自分の顔が全然違ってたらどうよ。
顔っていうのは自分を自分だと認識する、または他人に自分を認識させる最重要のパーツなんですね。それを失ってしまうことは自己の喪失、死ぬことと等しいのです。
そんなものかなぁ。でも確かに顔が変わってしまったら親だってあなた誰?ってなりそうです。
恐怖を描くホラー漫画にとって、『自己の喪失』イコール『死』というのは頻繁に描かれる手法なんですね。想像してごらん、カエル顏になってしまったり、ヘビ顏になってしまったり、カニ女になってしまったら、どうするよ。
そうね、ヘビ顏だろうと馬顔だろうと直ちに死ぬわけではないよ。ただし、人間だった頃の自分はその時には死んでいるんです。自己の喪失。このキーワード、テストに出るからね。
つれないなぁ。話を戻しますが、顔をなくした綾乃は自らの顔を取り戻すために凶行を重ねます。次に犠牲となったのは、会社帰りの美人OLでした。道端で殺害して皮を剥ぎます。どうかしてるぜぃ!
犠牲にしたOLの顔を使ってついに顔面皮膚移植手術が行われることになりました。拒否反応を恐れて古城博士は乗り気ではありませんでしたが、娘にせかされてついにメスを手にします。
ちなみに、死体から採取した皮膚を患者の顔面に移植する症例は2005年ぐらいからあったりします。拒否反応うんぬんより、今のネックは倫理的な問題のようです。現実ってすごいわ。
ちなみに、死体から採取した皮膚を患者の顔面に移植する症例は2005年ぐらいからあったりします。拒否反応うんぬんより、今のネックは倫理的な問題のようです。現実ってすごいわ。
美しい顔を手に入れて、綾乃は再び学校へ戻ります。罪を犯してでも日常生活には戻りたい。綾乃には学校に密かに恋い焦がれている相手がいたのです。最近めぐみと仲良くしている早見くんこそが、その意中の相手でした。
三角関係きたー! 定番ですね。盛り上がりますね!
(恋愛関係の話になるや食いついてきやがった。スイーツ脳め)・・・ええっと、新しい顔で自信を取り戻した綾乃は早見くんに猛烈アプローチをかけました。美人からのお誘いに早見くんもまんざらではないようです。
しかし、幸せな時間は短く、綾乃を皮膚移植の拒否反応が襲います。以前よりもはるかにひどい有様となった綾乃は部屋にこもり、めぐみが早見くんと楽しげに登下校する様子を部屋の窓から見下ろすことしかできなくなりました。
殺人犯とはいえ、すこしかわいそうになってきました。くすん。
美しい顔をしためぐみ。明るく朗らかで誰からも好かれ、ありのままに振る舞うことに何の疑問も抱かない同い年の少女。顔がないというだけで、なぜこうも違うのか? なぜこんなにもその違いを見せつけられなければならないのか?
あ、もう三角関係どころじゃなさそうですね。どきどき。
綾乃は嫉妬と羨望の中で決意しました。めぐみを殺す。綺麗な顔をひき裂いてやる。夜、刃物を持ってめぐみの寝室に忍び込みますが、これは未遂に終わります。ちなみに、刺されるー!ってところが第7回目の引きです。
もうすぐだよ。きっかけは突然やってきました。めぐみが留守の間、古城邸を訪れたクラスメイトの少女が偶然綾乃の真実の顔を目にしてしまい、口封じに殺されてしまいます。
ちょ、その通りなんで返す言葉がないよ。帰宅しためぐみは友人の惨殺死体を目の当たりにしてしまいます。もはや隠す必要のなくなった綾乃は胸のうちを全て吐露し、めぐみはとうとう一連の事件の犯人を知ることとなりました。
めぐみに突き立てられようとしたナイフは二人の間に入ったばあやにはずみで突き刺さり、その命を奪いました。綾乃がうろたえている隙にめぐみは逃げ出し、驚愕と戸惑いの中警察署に駆け込みます。
めでたしめでたし・・・とはならないから。殺した女性の顔を古城博士が娘に移植している。めぐみの話は警察には一切信用されませんでした。それどころか、慌てて引き取りに来た古城博士によっていやいや屋敷に引き戻されます。
はたしてめぐみの運命は!?
はぁー、日本警察の漫画内における無能さはほんとひどいです。
警察が活躍しすぎたらコナン君もいらないでしょ。連れ戻されためぐみは地下室に監禁され、殺される日を待つばかりのみとなりました。博士の様子を訝った早見くんは単身屋敷に乗り込み・・・というところで今回はここまで。
今2015年で掲載から35年も経ってる作品だから言ってもいいような気もするんですが、まあ、ラストシーンってのはそこに至るまでを読んできた人に与えられるゴールテープだからね。口で言ってもしょうがない。
残念ながらハッピーエンドです。あつたゆりこ先生のホラー作品はヒロイン側が怪物側に勝利して終わるものがほとんどです、残念ながら。
これでいいの。綾乃がかわいそうでならないよね。父親のせいで顔を無くし、仮面を被っては束の間の幸せを噛み締めていたのに、めぐみのせいで自らの境遇をまざまざと見せつけられるという・・・何も悪いことしてないのに。
あ、やっぱり? でもこう、持たざるものの悲哀を感じるでしょ。冒頭でお話ししました映画『顔のない眼』もこのあたりは一緒です。
うん。端的に言うと、事故で顔にひどい怪我を負って二目と見られぬひどい顔になった娘のために、高名な医者である父が若い娘を拐かして屋敷に連れ込み、顔の皮を剥いでは殺していたというものです。
無駄を愛するのも人間性ってやつだ。恥ずかしながら映画は最近人に勧められて初めて観たのですが、漫画と違ってそこまで恐怖を演出するような手法ではないので、ゴシックホラーの古典って感じでした。
元祖白仮面のクリスティーヌ
元祖白仮面のクリスティーヌ
ふーん、白黒なんですよね。私は、観ないだろなぁ。
興味が出たら見てみたらいいさ。
もう、50回以上やってますし、興味出る日来なさそうなんですけど。 えー、今回ご紹介した『ひき裂かれた顔』はマーガレットレインボーコミックスからの全1巻。絶版です。
2000年代には2.300円でネット上でも叩き売られてたんですが、最近とんと見ないです。他のあつた作品は1000円ぐらいで古本屋で買えます。お勧めは『吸血の町』と『悪霊夢』です。
『ひき裂かれた顔』、Amazonに書影すらないですもんね。売られてたことないのかな。
ないみたいね。世に出てる数がかなり少ない気がする。
それを紹介されても、どうやって読んだらいいわけですか。目にすることすらないじゃないですか。
まずね、作品を愛してください。
は、はぁ?
愛のない人のところにはやってきません。愛することから始めてください。
やだ、真顔で言ってるところが最高に気持ち悪いです! なんで最後に収拾をつけにくい変なボケを入れてくるんですか!! なにこれ! どうやって締めたらいいの!?
愛がすべてです。
もう、50回以上やってますし、興味出る日来なさそうなんですけど。 えー、今回ご紹介した『ひき裂かれた顔』はマーガレットレインボーコミックスからの全1巻。絶版です。
2000年代には2.300円でネット上でも叩き売られてたんですが、最近とんと見ないです。他のあつた作品は1000円ぐらいで古本屋で買えます。お勧めは『吸血の町』と『悪霊夢』です。
『ひき裂かれた顔』、Amazonに書影すらないですもんね。売られてたことないのかな。
ないみたいね。世に出てる数がかなり少ない気がする。
それを紹介されても、どうやって読んだらいいわけですか。目にすることすらないじゃないですか。
まずね、作品を愛してください。
は、はぁ?
愛のない人のところにはやってきません。愛することから始めてください。
やだ、真顔で言ってるところが最高に気持ち悪いです! なんで最後に収拾をつけにくい変なボケを入れてくるんですか!! なにこれ! どうやって締めたらいいの!?
愛がすべてです。
コメント
コメント一覧
やっぱり顔は女の命ですね!
次ぎの更新もお待ちしております。
返信遅くなりすいません。
コメントありがとうございます。
書いてて気づいたのですが、
カエルはこのような「少女がひたすら怪物に追われて逃げ惑う話」がかなり好きなようです。
この形式が少し古い話には多いのですが、90年代の少女ホラーになるとただただ追っかけまわされる話は減ってしまうのでちょっと残念です。
話しのパターンも大体決っているし、美少女がただ追い掛けられるだけの事なのに何故あんなにドキドキしてしまうのでしょう?
そう言えば、ホラーゲーム、クロックタワーもただ追い掛けられるだけのゲームなのに、面白かった記憶しか有りません。
言われてみれば、追い掛けられるだけの話しはあまり見られなくなりました。
あのドキドキ感、また味わいたいです。
メルセデスさんコメントありがとうございます。
キャーキャー言って逃げ回っているよな作品は90年代から見なくなりました。
少女ホラー全盛で人気の作風が変わったような気も、
なんか規制が厳しくなったんじゃないかという気もします。
ホラーゲーム、クロックタワーもSIRENも無力な主人公が必死に逃げ回るというところが好きでした。
戦っちゃだめなんですよね。死の運命に追いかけられて無抵抗に逃げ続けるところがとても好きです。
メルセデスさんコメントありがとうございます。
キャーキャー言って逃げ回っているよな作品は90年代から見なくなりました。
少女ホラー全盛で人気の作風が変わったような気も、
なんか規制が厳しくなったんじゃないかという気もします。
ホラーゲーム、クロックタワーもSIRENも無力な主人公が必死に逃げ回るというところが好きでした。
戦っちゃだめなんですよね。死の運命に追いかけられて無抵抗に逃げ続けるところがとても好きです。