愛知県南知多町で開かれた野外の大規模音楽イベントの特別席を無理やり提供させたとして、愛知県警は14日、名古屋市中区の歓楽街「錦三(きんさん)」や東京都内で飲食店を複数経営する「T’sグループ」代表の田中知就(ともなり)容疑者(33)=同市千種区千種2丁目=を恐喝の疑いで逮捕し、発表した。「違う」と容疑を否認しているという。

 このイベントは同町内海新港緑地公園の特設会場で7月26日に開催され、有名ミュージシャンらが多数出演した。

 中署によると、田中容疑者はこの日、イベントを企画した会社経営の男性(35)に携帯電話で連絡し、イベントに協賛した関係者だけが利用できるスポンサー席で観覧させるよう要求。拒まれると、「だったら、俺らガチャガチャやるわ」「本当に、やるから」「イベント潰すでね」などと脅し、席を用意させた疑いがある。

 この席はスーパープラチナスペースと呼ばれる特別なエリアで、最低25万円の協賛金を払った関係者しか入れないことになっていたが、田中容疑者は知人3人とともに入場料を払わずに演奏を観覧した。企画会社はトラブルを避けるため入場券にあたるリストバンドを4人に渡したという。

■暴力団の資金源か

 田中知就(ともなり)容疑者は、捜査関係者によると、都内の店を含め飲食店約10軒を経営する企業家の顔を持つ一方、粗暴な行為を繰り返す「半グレ」集団のリーダー格と目されている。

 「半グレ」は、「半分グレている」の略などに由来し、元暴走族メンバーやその遊び仲間らが離合集散しながら、ネットワークでつながったグループ。警察庁は「治安を脅かす新たな反社会勢力」と位置づける。東京・六本木のクラブで2012年9月に男性(当時31)が襲われ死亡した事件では、暴走族グループ「関東連合」の元メンバーらによる犯行と判明。愛知、岐阜両県で近年相次いだ空き巣被害に半グレ集団の関与が疑われるなど動向が注目されている。