値上がりが続いてきた電気料金。
もしかすると安くなるかもしれません。
来年4月から始まる電力小売りの全面自由化。
一般家庭で大手電力会社以外からも電気を買うことができるようになります。
今、業界の枠を超えさまざまな企業が参入。
価格競争が始まろうとしています。
一方、16年前に自由化したイギリスでは、競争が十分に働かないという事態も招きました。
電力自由化は私たちの暮らしをどう変えるのか。
最新の動きに密着しました。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
スイッチひとつで利用できる電気。
電力をどこで買うのかこれまで地域の大手電力会社が独占的に販売し、消費者は選ぶことができませんでした。
来年4月、戦後続いてきたこの大手電力会社による地域独占体制が大きく崩れ全面自由化で消費者は、電気の契約先を自由に選べるようになります。
消費者はさまざまな会社の電力の販売価格を比較し自分のライフスタイルに合った料金メニュー例えば夜たくさん電気を使う人は深夜の料金が安いプランを選択するといったことになりそうです。
安さに重きを置いて業者を選択するのか、それとも少し高くても再生可能エネルギーを使った電気を使うのか。
消費者の選択は電力の作られ方にも影響を及ぼすことになります。
電気を作り、送電し販売に至るまでそのすべてを戦後、長い間独占してきた地域の大手電力会社。
発電事業への新規参入が認められたのが20年前の平成7年です。
5年後、平成12年には企業向けなどへの販売が自由化されました。
そして来年4月家庭への小売りも認められる全面自由化が行われます。
自由化によって競争が生まれ電気料金の値下げやサービス拡大につながると政府はしていますけれども全面自由化で何が起きるのか。
まず初めに小売りに新規参入する企業と大手電力会社の顧客取り込みに向けた戦略からご覧ください。
電力小売りの全面自由化を半年後に控え、今、新規参入の動きが活発化しています。
都市ガス大手や石油元売り会社通信大手など、80社以上が名乗りを上げています。
ネット通販大手の楽天も参入を表明。
楽天が電力事業のターゲットにするのは通信や旅行などおよそ80のサービスの顧客です。
すでに自由化されているホテルや旅館に、大手電力会社より安い電力を提供しています。
お世話になっております。
こんにちは。
このホテルで、は電気料金をおよそ7%削減できました。
楽天は複数の会社の発電所から電力を調達しています。
例えば、工場向けの発電所では休日に電力が余ります。
そうした発電所に目をつけ安く電力を調達しています。
さらに、曜日や時間帯ごとに細かく調達先を切り替えることで電気料金を下げています。
家庭向けの販売では電気料金に応じてポイントを付与。
あらゆるサービスで使えるとアピールし契約を増やしたいとしています。
もう一つ力を入れようとしているのが再生可能エネルギーを支持する消費者への販売です。
国内最大規模の太陽光発電所を持つ大手商社、丸紅と提携。
水力発電の開発にも乗り出しています。
比較的、建設コストが安く済むこうした発電所を5年後に、全国30か所に作りたいとしています。
これに対し、市場を独占しコスト意識が低かった大手電力会社は、経営体質の見直しを迫られています。
東京電力は、これまで外部に委託してきた安全点検に社員を当たらせています。
顧客との接点を増やし要望を直接聞くためです。
東京電力は、発電所のコスト削減を始めています。
これまで、発電や点検にかかる費用は、そのまま電気料金に上乗せできる制度に守られてきました。
2年ごとに行う火力発電所の点検では、1日に1億円以上の費用がかかります。
その日数をいかに短くするか。
生産現場のむだを徹底的に洗い出してきたトヨタ自動車の元常務を経営幹部に招き数百項目の作業を見直しています。
例えば、ファンの点検。
これまでは羽根を寝かせ手作業で片面ずつ点検していました。
これを見直し羽根を立てる台を作製。
両面を同時に点検できるようにして日数を、ほぼ半分に縮めました。
この足場も新たに設置。
点検のたびに仮設の足場を組んでいたむだをなくしました。
こうした細かい積み重ねで全体の点検日数はおよそ80日から50日に短縮。
この発電所だけで50億円ほど削減できるといいます。
一方で、電力自由化には課題も指摘されています。
16年前、自由化に踏み切ったイギリス。
当初、およそ50社が相次いで参入し、電気料金は3年間で6%値下がりしました。
ところが、発電の燃料となる天然ガスなどの価格が高騰すると新規参入した多くの企業の経営を圧迫。
撤退を余儀なくされました。
その結果、大手6社が市場の95%を占めるようになり電気料金も値上がりしました。
ロンドン郊外に住むコーンファインさんです。
毎年のように電気料金が上がってきたことに不満を感じていました。
イギリス政府は再び競争を促そうと小規模な企業の税負担を減らす優遇措置を取りました。
すると、新規参入が増え始め2年前には2%だったシェアが10%以上に回復しました。
再び始まった価格競争。
コーンファインさんは先月契約する電力会社を新規参入の企業に切り替えました。
大手より23%料金が安くなる試算です。
今夜のゲストは、経済学がご専門で、電力行政にお詳しい、東京社会科学研究所教授の松村敏弘さんです。
安く電力を調達して安く売ろう、あるいは再生可能エネルギーを選びたい人にとってのメニューを提供しようと、いろんな動きが、もう出てますけれども、ずばり、この全面自由化によって、価格が安くなることを期待できますか?
はい、私は大いに期待しています。
価格が安くなるということもそうですし、例えば、太陽光の電力が余りがちになる春だとか、秋だとか、昼間に電気料金を安くして、ピーク時に高くするという、メリハリの効いた料金体系というものも次々と出てくると思います。
今までは、基本的に大手の電力会社は、かかったコストをすべて料金で回収できるという、こういう状況。
それで、企業向けの自由化された市場でも、ほとんど競争が起こっていない。
自由化してから10年たっても、新規参入者のマーケットシェアが5%にも満たないという、こういう状況。
さらに、大手事業者間が地域をまたいで競争するということはほとんどなかったという、こういう状況下では、コストを削減しようという意識が極めて乏しかったと思います。
これからは新規参入者がどんどん入ってきて、競争の圧力が高まれば、大手事業者も、コストを削減しようというふうに、意識が変わるでしょうし、それから新規参入者も、大手電力会社より安い価格で参入するということで、顧客を取ろうとしてくるんだろうと思います。
実際、今のビデオでも大手電力会社のコスト削減の取り組みが紹介されていたんですけれども、ただ、全体状況としては、新規参入者は相次いでいますけれども、しんきさんにゅうかいしゃで、電力を作れる所というのはごく僅か。
多くのところが、大手電力会社が作る電気を買ってこなければならない、そうなると、大手電力会社は、みすみす自分のライバルになる企業に、果たして本当に電気を売るのかどうか、あるいは、価格はどうなるんだろうかというところが気になりますけども。
まず、大手電力会社がネットワーク部門を持っていたということですが。
送電の部分ですね?
送電部門を平成32年に分離するということが決まっており、その結果として、十分、公正に同じ送電部門を使えるということが期待できます。
つまり、大手電力会社が持っている電力部門が独立した会社になるので、もっとフェアに送電が行われるのではないかと。
さらに、確かにご指摘のとおり、発電所はほとんど大手電気事業者が押さえているという状況で、競争はとても起こりにくい。
したがって、この大手電気事業者から新規参入者に対して、電気の供給というものが、合理的な価格できちんとされるということが、極めて重要になってきます。
これに関しては、9月に発足した新しい規制機関というので、価格も、それから量もきちんと監視していって、大手電気事業者の売り惜しみのようなことを監視するという体制が整っております。
ただ、イギリスの例で今ありましたように、自由化した50社が参入したものの、燃料価格が上昇すると、耐え切れなくて撤退する企業が相次いで、いまやもう6社の状況になってしまった。
自分が契約した電力会社が、ある日突然、なんらかの外部的な要因でとう汰されて、そして混乱が起きるということはありませんか?
まず、日本の場合には、燃料費の高騰があったときに、自動的に料金に転嫁できるという制度が整備されていますので、燃料費の高騰というのがあると、直ちにとう汰されるというようなことは起こりにくい市場です。
自由化のあとも、その仕組みは残るわけですか?
さらに、電力をあらかじめ確保しておくということを確認したうえで、新規参入を認めているということがあるので、そんなに簡単に撤退するということはないというふうに考えられます。
さらに、仮に撤退したということがあったとしても、そのあと、大手電力会社が供給するという仕組みになっていますので、新規参入者から電気を買ったら停電が起きやすくなるということは絶対にありません。
絶対にないですか?なるほど。
しかし、本当の意味での、ダイナミックな競争が起きるかどうかは、新規参入者と、その大手電力会社との競争もありますけれども、やはり最後は、大手電力会社、それぞれの地域に今まで独占的に販売していた消費者に、そこの間での競争が起きるかどうかではないかと思うんですけども、ここの点はいかがでしょうか?
それも重要なポイントです。
実際に電気を多く押さえているのは大手事業者なので、この大手事業者が地域をまたいでお互いに競争をするということが本格的に起これば、競争環境は大いに改善すると思います。
今まで、競争を制約するという雰囲気がとても強かった業界ですが、このシステム改革、全面自由化を契機に、変わってくれるものと期待しています。
つまり業界の体質が変わってきたというふうに感じてらっしゃるということですか?
明らかに変わってきていると思います。
実際に東京電力は、日本全国で電力を販売することを表明していますし、首都圏には他の電力会社が参入するということはすでに表明されております。
さあ、これまで価格というのも非常に大事な要素なんですけれども、消費者に提供される選択肢は、価格だけではありません。
また違った角度からも選択をすることができるようになります。
電力の全面自由化で、公共性を売りにした小売りに乗り出す自治体も出てきました。
ことし3月、福岡県みやま市が全国の自治体で初めて電力を販売するための新会社を立ち上げました。
人口およそ4万人のみやま市。
市が目指すのは、地域で使う電力を地域で賄う地元密着型の電力会社です。
市がまず注目したのはここ数年、市内に相次いで建設された太陽光発電所でした。
さらに、日照時間が比較的長いみやま市では、自宅に太陽光パネルを設置している家庭が1割に上っています。
こうした企業や家庭から電力を集めて販売する計画です。
夜間など、電力が足りないときは九州電力から調達します。
みやま市が電力会社を作るきっかけとなったのは東日本大震災でした。
大規模な災害が起きた場合でも大手電力会社だけに頼らず電力を確保したいと考えたからです。
みやま市が電力の販売先として特に意識しているのは地域のお年寄りです。
自治体ならではのサービスとセットで提供しようとしています。
こんにちは。
試験的に始めたのは電気を販売する家庭のお年寄りの安否を確認するサービスです。
藤田光子さん、91歳。
1人暮らしです。
市は1時間ごとの電気の使用状況を表示する端末を配布。
同時に、市側でも把握します。
電気の使い方から生活ぶりに異変が見られた場合離れて暮らす家族に連絡するという仕組みです。
将来的には、災害時の情報提供や買い物の代行などさまざまなサービスも加え市内の4割の家庭の電力を賄うことを目指しています。
全面自由化で自治体がこの電力ビジネスに参入する動きを見せている、これはどうご覧になりますか?
大手電力会社のビジネスモデルは、大正時代から、大電源を遠隔地に立てて、大送電線で消費地まで持ってくるというものでした。
それに対して、みやま市のような取り組みというのが進めば、エネルギーの地産地消というのが進む、新しいビジネスモデルというのを提示することができるようになると思います。
また防災の観点から見ても望ましい、分散型電源、さらに再生可能エネルギーの普及というのにもつながってくると思います。
大いに歓迎すべき動きだと思います。
今の地産地消とおっしゃいましたけども、地元で作られた電気を、地元で消費をするということですよね。
こういった地産地消の電気の供給の在り方というのは、今、日本では、どれぐらい広がっているものなんでしょうか?
現在の制度設計では、地産地消にとても不利な制度というのが相当残っており、その結果として、望ましい水準よりもはるかに少なくしか地産地消が入っていないと思っています。
これは長期的に改善していかなければいけない点だと思います。
どこまで広がるでしょうね。
私は3割、4割というような、供給力というのが出てきても少しも驚きません。
そして、その今のみやま市のように、見守りというサービス、あるいは防災、大災害が起きたときのセーフティーネットの一つとして捉えるという動きも新しいですね。
公共サービス、安心・安全のような公共サービスというのと組み合わせて参入するというのは、とても新しい、そしてとても望ましいビジネスモデルだと思います。
来年の4月、いよいよ全面自由化ということで、私たちもどこの電力会社と契約するのか、選べるようになるわけですけれども、価格というのはどれぐらい下がったり上がったり、これからすると見てらっしゃいますか?
多くの国で、自由化でいったん下がったあとでも、揺り戻しというのが起きるということが観察されています。
わが国でも十分起きうると思います。
しかし、価格、一定程度下がるということは十分期待できると思いますが、重要なのは価格だけではないと思います。
消費者は今まで、与えられた電気を消費するということから、みずから選べるという、こういう状況に、システム改革で移ってくると。
そうすると、みずから選ぶとすると、その先には、電源の構成というようなものもみずから選べる。
環境に優しい電源というのを応援するとかということも可能になってきます。
先ほど出てきた公共サービスということもありますが、環境価値も含めて、あらゆるものを総合的に国民が決められる、消費者が決められるという、こういう社会が到達したということが、自由化の最も重要な点ではないかと思います。
そうすると、長い目で見ると、当初考えられた電源構成とはまた大きく違う、消費者の選択によって変わるということも、起きうるということですね。
消費者の環境意識が十分高ければ、そのようなこと、十分起きうると思います。
きょうはどうもありがとうございました。
2015/10/15(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「電気料金は安くなるか?〜消費者が選ぶ時代へ〜」[字]
家庭でも電気を好きな会社から購入できるようになる電力小売りの全面自由化が来年4月から始まる。電気料金は下がるのか、電力のあり方はどう変わるのか、検証する。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学社会科学研究所教授…松村敏弘,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学社会科学研究所教授…松村敏弘,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:14322(0x37F2)