スライム、があらわれた。
勇者が出発する地域に多く生息し、旅立ちに必要な経験とわずかなお金をおとしてくれるモンスターである。
毒があるわけではないが、少々の傷をあたえられることがあるので勇者の初心者は気をつけなくてはならない。
そんなスライムが、でたのである。
「面摺れがあるな」
スライムは言い終わるなり抜き打ちでのしかかって来た。
勇者はとっさに鞘でその体を受けとめる。一撃をしのいだ勇者は鞘を払い刀身を立てる。
地肌は恐ろしいばかりに青く、スライムの色を受けて光っている。
(こいつは斬れる)
いや、勇者の経験とこの刀なら一閃するだけで倒せるといっていい。
余談ではあるが、スライムというのは本来壁などの上に張り付いており、人間や動物が真下を通った時に上から飛びかかり強烈な酸性の体液で獲物を溶かすモンスターである。
本来、初心者の勇者にかわすのは難しかったと思われる。しかしドラクエに関してのみ弱いモンスターとされているのは心にとどめたい。
さて、このスライム。
一撃をかわされ完全にカラダがつんのめった形になった。
勇者が軽く一振りした刀であっさり両断されてしまい、絶命。
「ゼリーが、ゼリーが」とふたことまで叫んだのが資料に残っている。
勇者ははにかんだように笑った。
「まだ子供だったのだ」
ともあれ、勇者は経験値2を得た。そして絶命したスライムの体液の中から金貨を1枚取り出すと懐にしまいこんだ。
参考「幕末」司馬遼太郎
ドラクエの戦闘シーンを司馬遼太郎風に再現すると面白いだろうなということで。