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RADIO PAPA

読むお酒のおつまみ(セカンドシーズン)

あなたの夢はなんですか?

19歳。

俺は毎晩、友人と遊んでいた。

場所は新宿歌舞伎町。

まだ新宿東宝ビルは存在しない。

遊ぶといっても大したことはしていない。

ゲームセンターで遊んだり、ボーリングやビリヤードをしてみたり、ただ街をぶらぶらしてみたり。

その日も同じように歌舞伎町という場所をただ行くあてもなくフラついていた。

ラーメンでも食いに行くか。

そう思いながら新宿コマ劇場の近くを通った時、ストリートミュージシャンを見かけた。

女性の二人組だった。

行ってみっか…。

軽い気持ちで俺と友人は女性に近づいた。

時間はあるけど女っ気がない。そんな毎日を過ごしていたから久しぶりにワクワクしていた。

「こんちわ〜。なにしてんの?」

見ればわかることをわざわざ聞いてみる。

二人は軽く自己紹介をするとアコースティックギターを弾いてオリジナルの一曲を披露してくれた。

思ったより良い歌に驚いて、俺の浮ついた気持ちはどっかに行ってしまったらしく、しばらく聴き入ってしまった。

いつもここで歌っているのか聞いてみると、どうやらあちこち飛び回っているらしい。明日は関西に行くそうだ。

歳は俺と同じくらいだろうか。

二人は音楽に対する熱い気持ちを歌にして、たまたま通りかかった俺達にぶつけていた。圧倒された。いつの間にか、全力で拍手をしていた。何度も二人を「すげー、すげー。」と褒め称えた。

彼女達は照れながらもう一曲歌い終えた後、俺にこう言った。

「あなたの夢はなんですか?」

俺の友人がなんと答えたのか覚えていない。俺は…答えられなかった。

俺の夢はなんだろう。

俺はその後、何年たっても夢が見つからなかった。

彼女達は見つかっているのだろう。

俺は…。

夢が見つからない。

俺という呼び方が私に変わっても、夢は一向に見つからないまま、時間だけが過ぎていった。

でも、こうして過去の自分を振り返ると、あの頃の自分がすごく輝いているように感じる。

私の夢は過去にあるのだろうか。

彼女達の夢は前にあって、私の夢は後ろにあって、だから私は夢が見つからなかったのだろうか。

違う。

道理で気づかないわけだ。

私は夢の中にいるのだ。

最悪だと思っていたあの日も最高だと思っていたあの日も、全部が光り輝く夢の中にいたことにようやく気付いた。

もし彼女達にあったら、今度こそはっきり言ってやりたい。

「俺は夢の中にいるから、ただ生きることが夢だ。」って。

それを聞いたらあの頃の俺はなんていうかな。

答えになってないと笑うかもしれない。

それでいい。

いつか分かる日がくるから。

・C.h.a.o.s.m.y.t.h.(ONE OK ROCK

C.h.a.o.s.m.y.t.h.

C.h.a.o.s.m.y.t.h.