「ウシ白血病ウイルス」と乳がんに関連あり
妊娠歴やホルモン、ライフスタイルと同等のリスクを確認

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Steve Arnold/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般)

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 このたび、人間の胸の組織を分析したところ、「ウシ白血病ウイルス感染」と乳がんに関連性があると分かった。

ほぼ全ての牛乳に存在

 米国カリフォルニア大学バークレー校/デイビス校の研究グループが、オンライン科学誌プロスワン(PLoS One)で2015年9月2日に報告。同大学も紹介している。

 研究グループによると、ウシ白血病ウイルスは、乳牛/肉牛の血液細胞や乳腺に感染して白血病やリンパ腫を引き起こす「レトロウイルス」と呼ばれるタイプのウイルス。世界中の畜牛で見られるという。感染した血液や牛乳を介して、感染するものではあるものの、牛で実際に病気になるのは感染した畜牛の5%未満と低い。

 牛乳は農場全体で集められるため、2007年の米国農務省の調査によると、乳牛500頭以上の農場では100%、100頭未満の農場でも83%が、ウシ白血病ウイルスに感染している「陽性」と確認できるという。

 研究グループの説明では、このウイルスは人間には感染しないと信じられてきたが、昨年、人間の胸部組織で存在が確認されている。

乳がんの人と正常な人を比較

 研究グループは、米国国立がん研究所(NCI)の「人体組織ネットワーク(CHTN)」に提供された胸部組織239人分を検証している。

 医療歴と組織検査により、乳がんの人と正常な人でウシ白血病ウイルスの存在を比較した結果、乳がんのグループ(59%)の方が正常なグループ(29%)より、ウイルスを持っている割合が多いと分かった。

 前がん状態の組織では、両グループの中間の割合(38%)と、感染の傾向が正常な人よりも強まっているという結果になった。

乳がんのリスク3倍

 今回の検証結果によると、ウイルスを持っていると乳がんのリスクは3倍で、遺伝、高用量の電離放射線、年齢によるリスクまでの危険度の上昇には並ばない程度ではあるものの、妊娠歴やホルモン、ライフスタイルによるリスクと同等の危険度の上昇は見られると分かった。

 このウイルスが乳がんの原因になることが証明された場合、予防策に大きな影響を及ぼすと研究グループは説明している。

 保存された組織を使った病気の人と正常な人とを比べた「症例対照研究」であるため、感染が乳がん発症の前に起こっているのか、後に起こっているのか、あるいは感染経路は不明という研究結果の制限はあると、研究グループは注意を促している。

 ウイルスは乳がんの原因と証明されるには至らないものの、乳がんの危険因子の一つとして今後注目されることにはなりそうだ。

文献情報

Virus in cattle linked to human breast cancer

Buehring GC et al. Exposure to Bovine Leukemia Virus Is Associated with Breast Cancer: A Case-Control Study. PLoS One. 2015 Sep 2;10:e0134304.

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