• トップ
  • >
  • 社説のバックナンバー
  • 2015年10月17日(土)

公共サービス問う契機に/八戸ブックセンター

 「本のまち八戸」を目指す八戸市が、市中心街に計画している「(仮称)八戸ブックセンター」の概要が見えてきた。主に大人を対象とし、「全国で類を見ない、これからの時代にふさわしい本に関する公共サービスを構想し、提供する」のがコンセプトだ。

 本のまち八戸は、小林眞市長が掲げた3期目の公約の一つ。これまでに、赤ちゃんに絵本を贈るブックスタート事業、児童に2千円分のブッククーポン券を配るマイブック推進事業を実施しており、同センターは、本のまち八戸に向けた3本目の矢となる。

 本を読む人を増やす、書く人を増やす、本でまちを盛り上げる-のが基本方針。同市内の書店では手に取る機会が少ない人文・社会科学、芸術などの専門書を置き、市民が執筆するためのスペースも設ける。企画事業として読書会や外部講師によるトークショーなどを展開、市内書店や図書館の在庫検索サービスを開発する。

 同市六日町に建設中の複合ビルの2階に約90坪(約300平方メートル)のフロアを借り、来年夏ごろの開設を予定。店内にカフェを設け、ビールを片手に本を閲覧し、気に入ったら買うこともできる。陳列する本の選択や仕入れ、販売は外部の専門家や市内の民間業者に委託する方向だ。

 議会の論戦を見ると、一部議員から、図書館の蔵書や機能を充実させればいいのでは-との批判が上がっている。まだ構想段階だが、同センターの企画事業などは図書館が運営できるメニューが多いのも理由の一つ。「市内の民間書店ではビジネスとして成り立ちにくい」専門書などをそろえ、市民が出合える場を創出することを公共サービスとしており、市側がセンター機能の一部とする「本の販売」が図書館機能との大きな差異になっている。

 同センターは、ポータルミュージアム「はっち」などとともに中心市街地活性化の拠点としての機能も担う。いろいろな本と出合える空間が新たにできること自体は、市民も歓迎できるだろう。

 ただ、一定の経費はかかる。はっちは市職員の人件費を除いて年間2億円余り。同センターは家賃や販売委託費など約6千万円を見込む。経費は一方で、にぎわいのための投資ともとれる。同センター構想を練り上げる過程を、公共サービスについて考える機会とも捉えたい。

モバイルサイトのご案内

広告掲載のご案内

ご案内