宇都宮に集った4万3000人が熱狂【レース詳報】海外勢の強豪を制圧した別府史之 ジャパンカップクリテリウムで日本人初戴冠
別府史之(トレック ファクトリーレーシング)がビッグギアをグイッ、グイッと踏み込み、目の覚めるような鋭いスプリントに突入すると、4万3000人の観衆は大歓声を送った。宇都宮市で10月17日午後に開かれた「2015ジャパンカップクリテリウム」は、海外勢の強豪選手を抑えた別府が、日本人初優勝という新たな歴史を刻んだ。
16チーム・78選手が出場
開催6回目を迎えたクリテリウムレースが行われのは、JR宇都宮駅から西側に伸びる目抜き通りを封鎖した1周1.55kmの特設コース。パレード3周・レース20周の計35.65km(レース距離31km)で争われた。参加選手はUCIワールドチームに所属する選手を含む16チーム、計78人の選手たち。
ほぼ直線の800mをターンして往復する単純なコースだが、フィニッシュラインに向かってわずかに上り勾配となっている。メーンレースを翌日に控え、足慣らしで臨む選手もいたが、スプリンターを擁するチームはハイスピードなレースを展開していった。
カンチェッラーラが牽引
レースは13周回を終え、逃げ集団が先行するなか、メーン集団ではファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)を筆頭にコントロールが始まる。トレックチームは別府をエースとして臨んでおり、トレインを組んでスプリントに持ち込みたい考えだ。
カンチェッラーラ率いるメーン集団はペースアップし、18周目に逃げのメンバーを吸収。ゴールスプリントに向けて一層スピードを上げ、縦に長く形を変えた。BMC レーシングチームやチーム スカイ、宇都宮ブリッツェンは複数の選手たちが固まって最終周回までに前方をキープ。最終コーナーではチーム スカイのラインから飛び出した新城幸也(日本ナショナルチーム)が先頭でクリアし、上り基調の残り400mに向けてペダルを踏み込んだ。
メーン集団はやや横に広がりつつフィニッシュを目指す。新城は振り向きながらチームメートのスプリンター、黒枝咲哉(日本ナショナルチーム)を探すが見つからない。前方ではベン・スイフト(イギリス、チーム スカイ)の発射台を務めるベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チーム スカイ)が牽引。その後方では過去、同大会を2度制しているスプリンター、スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、クリテリウム・スペシャルチーム)が単独でスプリント体制へと入った。
別府は「パーフェクトな勝利」
スイフトが早めに仕掛けてスプリントを開始し、別府が食らいついた。ヴォンホフには前方の2人を捉える勢いがなく、別府とスイフトのマッチスプリントの様相を呈した。ワンテンポ遅れて腰を上げた別府は、フィニッシュ直前まで番手につけいていたスイフトをかわし、優勝を果たした。
ゴール後、別府はCyclistの取材に対し「トレインの順番は特に決めておらず、レースでは流れに合わせて動いた感じだったが、エースとしてレースに臨んだ。ラスト300mでスイフトが早掛けしたので、彼の後ろを確保してスプリントに備えた。自ら仕掛けたのはラスト150m。今日は54Tと、大きめのフロントギアを選択していたので、ポジショニングが上手くいった時点でスイフトをかわせることは確信できた。本当にパーフェクトな勝利。明日に向けて最高の刺激になった」とコメントした。
2位のスイフトは「ちょっと仕掛けるのが早かったが、自分にはそのタイミングしかなかった。別府の勝利を祝福したい」とコメントした。3位だったヴォンホフは「3位だったが、素晴らしい選手が参加したレースで勝利に値する走りができた」とレース後に語った。
3回のスプリント賞も日本人が独占
レースにはスプリント賞が設けられ、各5周回ごとに争われた。1回目のスプリント賞は地元チームに所属する鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)が、2回目は逃げ集団内で粘った城田大和(宇都宮ブリッツェン)が獲得し、沿道のファンを沸かせた。3回目は初山翔(ブリヂストン アンカー サイクリングチーム)が獲得し、日本人選手が独占する結果となった。
午後6時半から宇都宮市内のイベント広場「オリオンスクエア」に場所を移し、クリテリウムの表彰式が開かれた。華やかなライトアップのもと、スプリント賞の3選手と、別府、スイフト、ヴォンホフの上位3人が登場。特に、日本人初優勝を果たした別府には大きな声援が送られた。
檀上でコメントを求められた別府は、「この勝利はチームメート、ファンのみなさんのおかげ。さらには、このバイクのおかげでもある」と栄光を勝ち取ったバイクを指さし、会場の笑いと拍手を誘った。その後、アンコールで再登壇。「明日のメーンレースの走りにも期待していてほしい」と述べて、表彰式を締めくくった。