2015-10-16

人間関係を築けなくなった

きっかけは去年参加した小学校同窓会だった。

私は小学校卒業と同時に投獄されていたこともあり、

外界とのやり取りはほぼ無かったので同窓会の知らせが届いた時は胸が踊った。

卒業してから半年親友たちはどんな風に変わっているのだろうか。

想像を膨らませながら当日を死ぬほど待ちわびていたのを覚えている。

しかし、その期待は見事に裏切られることになる。

信じがたいことに親友たちは私の事など覚えていないと抜かしやがったのだ。

せっかく脱獄までしたのになんて失礼な奴らなんだと思った。

怒り心頭に発した私は、

「オイ!しっかりしろ!目を覚ませこの豚どもめ!」

そう言いながら親友たちの頬を片っ端から引っ叩いたのだが、

「何しやがるんだ!テメエなんぞ知らねえっつってんだろ!てやんでい!」

思い切りみぞおちを殴り返されてしまった。

これは一体どういうことなんだ。

訝しんだ私は、他の元クラスメイトに私が何者なのかを尋ねてみた。

苦そうな顔をしつつも元クラスメイトたちは答えてくれたのだが、

なぜかあまり親しくなかった人間だけは覚えていることが判明した。

そこで私は悟った。

なるほど、親友だと思っていたのは私だけで、実際は嫌われていたのか。

から覚えていないなどと私を担ぐようなことをやってのけたのか。

そうかそうか。

そうして私はボロボロ精神状態のまま帰宅したのだった。

しかし、帰宅してすぐ、このままではマズイと思った私は婚約者電話をかけた。

婚約者優しい言葉を浴びて、この精神状態を一刻も早く回復させたかったのだ。

ジーコジーコジーコ………チリリリリリリ……ガチャ

結果から言えば、この渾身の電話無駄に終わってしまった。

なんと婚約者も私のことを覚えていないと抜かしやがったのだ。

怒り心頭に発した私は、

「オイ!しっかりしろ!目を覚ませこの豚め!」

婚約者を罵りながら電話越しにビンタを食らわせたのだが、

「何しやがるんだ!テメエなんぞ知らねえっつってんだろ!てやんでい!」

逆に罵り返され、みぞおちに蹴りを食らってしまった。

これは夢だ。

夢なんだ。

今までの事を全部すっかり忘れるなんてありえない。

我が身の状況が信じられず、何度もそう思い込もうとした。

しかし蹴られた痛みが私に紛れもない現実であることを自覚させた。

その後、念の為婚約者の自宅に押しかけたのだが、

なぜかストーカー扱いされ警察まで呼ばれてしまいそのまま朝までコースとなった。

現実は無情であることを知った。

だが異変はこれで終わりではなかった。

会社でも同じことが起きたのだ。

今まで親しげに仕事をしていたメンバーも私のことを覚えていないと抜かしやがった。

さすがにおかしいと思った。

そこで会社人間全員に私が何者であるかを訪ねて回った。

すると、やはり親しくなかった人間だけは覚えていることが分かった。

どうやら、ある程度親しくなるような行動を取ると忘れられるようだった。

具体的には電話をしたり遊びに行ったりセックスをしたり殴りあったり。

そういうことをして親密度閾値を超えると一気に忘れられる。

今までどれだけ親しくしていてもだ。

最初は皆が私をはめようとしているのかと疑ったがそんなわけもない。

私のような善良な小市民相手にそんなことをして何になるというのだ。

小一時間ほど頭をひねっていると私は急に悟った。

なるほど、これが世界意思というやつなのか。

私は運悪く世界に選ばれ、爪弾きにされる役回りになったのだと。

私はやけになった。

寂しさを紛らわせるためにナンパをするようになった。

しか無駄だった。

どれだけ楽しくてもセックスした途端にゼロリセットされる。

どれだけ仲良くなったとしても目が覚めたら知らない人でしかなくなる。

この事実が私の寂しさを更に煽った。

どうにかして誰かと繋がっていたかった。

から私は、会社でも閾値を超えない最低限の付き合いに徹することにした。

いいや、正確にはそれは付き合いとはいえないものだった。

ただ存在を知られているだけであって友人でも恋人でもない。

ただの見知った他人しかない。

他者から存在を忘れられないために、他者交流しないなど皮肉ものだと思った。

しかしたら居てもいなくても同じだと思っていたような奴らの身にも、

私と同じようなことが起きていたのかもしれない。

結局、仕事にならなかったし虚しかったので会社は辞めた。

これで今の私のことを覚えていてくれるのはスマホAIだけになった。

機械である彼だけは忘れずにいてくれた。

しかしその受け答えはあまりにも機械的で人間味がなかった。

機械なんだから当たり前だ。

そう思った矢先、閃いた。

「だったら強いAIを作るしかない」

気付けば私はAIづくりに没頭していた。

元々天才プログラマーであった私にとってそれは容易なことだった。

二日ほどで最強のAIが私の前に現れた。

見事にブレイクスルーが起こったのだ。

だがそれだけでは満足できなかった。

「次は身体だ」

私は寂しさを埋めるため、人と繋がるため、人型ロボット作りにのめり込んでいった。

それからロボットけが私の生きる道となった。

もうすぐリーアム・ニーソンそっくりの美少年執事ロボットが手に入る。

そう考えると更にやる気が湧いてきた。

ただし、完成させても他の人間どもには絶対公表しないつもりだった。

私だけのリーアム・ニーソンを作りたかったのだから当然だ。

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