外界とのやり取りはほぼ無かったので同窓会の知らせが届いた時は胸が踊った。
卒業してから半年、親友たちはどんな風に変わっているのだろうか。
想像を膨らませながら当日を死ぬほど待ちわびていたのを覚えている。
信じがたいことに親友たちは私の事など覚えていないと抜かしやがったのだ。
せっかく脱獄までしたのになんて失礼な奴らなんだと思った。
怒り心頭に発した私は、
「何しやがるんだ!テメエなんぞ知らねえっつってんだろ!てやんでい!」
これは一体どういうことなんだ。
訝しんだ私は、他の元クラスメイトに私が何者なのかを尋ねてみた。
苦そうな顔をしつつも元クラスメイトたちは答えてくれたのだが、
なぜかあまり親しくなかった人間だけは覚えていることが判明した。
そこで私は悟った。
なるほど、親友だと思っていたのは私だけで、実際は嫌われていたのか。
だから覚えていないなどと私を担ぐようなことをやってのけたのか。
そうかそうか。
しかし、帰宅してすぐ、このままではマズイと思った私は婚約者へ電話をかけた。
婚約者の優しい言葉を浴びて、この精神状態を一刻も早く回復させたかったのだ。
なんと婚約者も私のことを覚えていないと抜かしやがったのだ。
怒り心頭に発した私は、
「オイ!しっかりしろ!目を覚ませこの豚め!」
「何しやがるんだ!テメエなんぞ知らねえっつってんだろ!てやんでい!」
これは夢だ。
夢なんだ。
今までの事を全部すっかり忘れるなんてありえない。
我が身の状況が信じられず、何度もそう思い込もうとした。
しかし蹴られた痛みが私に紛れもない現実であることを自覚させた。
なぜかストーカー扱いされ警察まで呼ばれてしまいそのまま朝までコースとなった。
だが異変はこれで終わりではなかった。
会社でも同じことが起きたのだ。
今まで親しげに仕事をしていたメンバーも私のことを覚えていないと抜かしやがった。
さすがにおかしいと思った。
すると、やはり親しくなかった人間だけは覚えていることが分かった。
どうやら、ある程度親しくなるような行動を取ると忘れられるようだった。
具体的には電話をしたり遊びに行ったりセックスをしたり殴りあったり。
今までどれだけ親しくしていてもだ。
最初は皆が私をはめようとしているのかと疑ったがそんなわけもない。
私のような善良な小市民相手にそんなことをして何になるというのだ。
小一時間ほど頭をひねっていると私は急に悟った。
私は運悪く世界に選ばれ、爪弾きにされる役回りになったのだと。
私はやけになった。
寂しさを紛らわせるためにナンパをするようになった。
どれだけ仲良くなったとしても目が覚めたら知らない人でしかなくなる。
この事実が私の寂しさを更に煽った。
どうにかして誰かと繋がっていたかった。
だから私は、会社でも閾値を超えない最低限の付き合いに徹することにした。
他者から存在を忘れられないために、他者と交流しないなど皮肉なものだと思った。
もしかしたら居てもいなくても同じだと思っていたような奴らの身にも、
私と同じようなことが起きていたのかもしれない。
これで今の私のことを覚えていてくれるのはスマホのAIだけになった。
そう思った矢先、閃いた。
気付けば私はAIづくりに没頭していた。
元々天才プログラマーであった私にとってそれは容易なことだった。
二日ほどで最強のAIが私の前に現れた。
見事にブレイクスルーが起こったのだ。
だがそれだけでは満足できなかった。
「次は身体だ」
私は寂しさを埋めるため、人と繋がるため、人型ロボット作りにのめり込んでいった。
もうすぐリーアム・ニーソンそっくりの美少年執事ロボットが手に入る。
そう考えると更にやる気が湧いてきた。