高齢化社会に向けて社会福祉の充実が叫ばれる一方で、老人による凶悪犯罪が増えている。内閣府発表によると、暴行・傷害など粗暴犯の数は十数年前に比べて約20倍。高齢者増加数に対する粗暴犯検挙率も、日本がトップだというが……
◆高齢者による暴力事件の特徴は「絶対服従の強要」
増加し続ける高齢者粗暴犯の特徴とは? 高齢者犯罪の取材経験が豊富なジャーナリスト・響波速人氏に聞いた。
「今のお年寄りは高度経済成長時代を支えた世代。横並び、お役所頼み、年功主義といった“常識”から抜けきれず、相手が警察官、検察官、裁判官であっても平気で食ってかかる。社会が自分たちの言うことを聞いて当然だと思っているんです」
しかも今の70~80代の体力・精力は昔の60~70歳に匹敵。暴力事件だけでなく、わいせつ事件なども増加傾向にあるという。’07年11月、北海道旭川市のデパートで、女子トイレの個室の隙間から手鏡を突っ込んで隣の女性の排尿シーンを覗こうとした79歳の男が逮捕された。
「驚くのは、20代の警備員2人が全力疾走しているのに100m以上も追いつかず、危うく振り切られるところだったということです」
そして’08年10月には大阪市西淀川区で、中2の孫娘を小5の頃から強姦していた65歳の祖父が逮捕された。諸事情を配慮し、警察広報では事件は未発表だった。
「呆れるのはその祖父が被害者の母親にあたる娘に対しても、小5から高1まで同じように強姦していたこと。当時、娘には土下座して謝り、事件化は免れていたのですが、その後孫娘に対しても同じことをしていたことを知って母親が激怒し、刑事告訴したのです」
祖父は「かつての娘とのセックスは合意の上だった。孫娘とはしていない。すべては娘の陰謀だ」と言い逃れしたが、大阪地裁で懲役12年を言い渡された。
「この祖父もかつては大手自動車会社の工員で、高度経済成長時代を支えた一人。ところが、疑似家族のようだった当時の会社の雰囲気をそのまま家庭にも持ち込み、家族にも絶対服従を強要していた。最近は、長年従順だった親族が反撃したり、その反撃が許せず凶行に及ぶ事件も多いです」
高齢者の暴力沙汰は、高度成長期の歪みの発現なのだろうか?
― [バイオレンス老人]急増の謎を追った【5】 ―