多くの国が財政難に直面し、国民に負担増を求めている。一方で、世界を舞台に活動する大企業は各国の税制の違いをついて節税を徹底している。

 この問題にどう向き合うか。先進国が中心の経済協力開発機構(OECD)の加盟国に、中国やインドなど新興国も加わって、行動計画がまとまった。

 現状を放置すれば、海外に出ていくのが簡単ではない個人や中小企業にますます負担のしわよせが行き、不公平感が高まって税制への信頼が揺らぎかねない。そうした危機感を背景に、負担をできるだけ公平にしようとする行動計画の趣旨を歓迎したい。

 OECDの推計では、世界で毎年1千億ドル(約12兆円)~2400億ドル(29兆円弱)、法人税収の4~10%の税収の目減りが生じているという。こうした現状に対し、行動計画は「企業は利益を生んだ場所で納税するべきだ」という原則を強調する。企業活動の実態に後れをとりがちな税制を改め、脱法的な行為に目を光らせるための対策は15項目、千数百ページに及ぶ。

 例えば▽音楽や書籍が国境を超えて売買される電子商取引の普及に合わせて、サービスを提供する事業者の所在地に着目する従来の原則にとらわれず、顧客がいるところで消費税を課す▽大企業のグループ内取引に関して、融資に伴う利子や配当、特許料の支払いという名目で低税率国に設けた子会社に利益をためることを防ぐ、といった内容だ。

 ただ、行動計画に強制力はない。企業に狙われる各国税制の「ずれ」や「抜け穴」も、企業誘致のための優遇に端を発していることが少なくない。各国が協調して計画の細部を詰め、実行していけるかが問われる。

 当面の試金石として、新たな協定を作る作業に注目したい。

 国際的な税制の取り決めは二国間の租税条約の積み重ねが基本だが、その数は世界で3500に及ぶ。税逃れの防止へ新たに1本の協定を作り、それに沿って租税条約を改めていくことで対応を早めるのが狙いだ。11月から始まる協議を着実に前進させていく必要がある。

 行動計画には、多国籍企業の活動や納税の実態をつかむため、様々な情報を統一形式で報告させ、国際的に交換することが盛り込まれた。

 日本の経団連など各国の経済界は、事務負担の増加などを理由に抵抗したようだ。しかし、自らの活動に納税者の理解を得ることは大切な課題のはずだ。しっかり協力してほしい。