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【北朝鮮拉致】
「朝鮮にさらわれるぞ」石川で広がっていたウワサ 危機感生かせず、相次いだ失踪
昭和29年4月に穴水町で消息を絶った小西能幸さん(82)=失踪当時(20)=のおい、達雄さん(62)は「夜遊びしたら、(北朝鮮に)さらわれるぞと親にいわれた」と当時を振り返った。
さらに達雄さんはこんな話を紹介した。「『ハングルの船が入った』という話があった。それを村の人が警察にいっても、『ふーん』というだけで終わっていた」
石川県では、拉致事件の実行犯として国際手配されている辛光洙(シン・グァンス)容疑者(86)が日本に最初に不法入国。同じく拉致事件で国際手配されているチェ・スンチョル容疑者が協力者の男を北朝鮮に送り出した。このほかにも警察当局に摘発された北朝鮮工作員の姿が確認され、調査会が「工作の玄関口」と位置づけている場所だ。
■警察や行政の無対応「事件を誘発したのではないか」
政府が認定する拉致被害者、久米裕さん(90)=拉致当時(52)=も昭和52年9月に石川県能登町から北朝鮮に連れ去られている。久米さんが拉致された1970年代(昭和45~54年)には、10~20代の男女5人が相次いで石川県から行方不明となり、調査会は特定失踪者として情報収集を続けている。
調査会の荒木和博代表は、達雄さんの証言にあった警察が動かなかったという部分に注目。「警察や行政が注意喚起を呼びかけなかったことが(拉致や拉致の可能性を排除できない)事件を誘発したのではないか」と話す。