「いったい何が起きたのか、全く分かりませんでした。釈放予定日には家族が私を待っていたのです」

 アーティスの移監先は刑務所ではなかったが、更正センターの部屋は独房に似ていた。施設の外には出られない。電話で外部の人間と話はできたが、隔離された精神病棟のようだった。

 「もう1度、刑務所に入り直したような思いでした。いやそれ以下でした。と言うのも、受刑者には少なくとも釈放日があり、希望がある。ところが更正センターからはいつ出られるか分からないのです」

 アーティスは25年間、刑務所内で大きな問題を起こしていない。他の男性受刑者と性的な関係を持つこともなかった。本人は自信をのぞかせる。

積み木崩しの更生訓練

 「刑務所に収監されていた25年間、何もしませんでした。実際、同性愛者にとって、これ以上望ましい環境はないと言えるほど機会はあったのですが、それでもしませんでした。そうした経緯も考慮してほしい」

 更正センターに移監されてから、アーティスは社会復帰のための更正訓練を受けている。3段階に分かれており、それぞれが9カ月間も続く。

 その間、看守が抜き打ちで部屋に入り、持ち物検査を行ったりする。規則にそぐわない所持品が発見されると第1段階からやり直しを命じられる。たとえばCDプレーヤーが見つかれば、それだけで降格である。アーティスはいま第2段階で、そこから先に進めていない。

 「毎年、審査があります。医師が社会復帰してもかまわないと判断すると、書類が裁判所に送られます。最終的には裁判官が決めるのです」

 アーティスは今の更正センターで、長期間拘禁されている人たちを何人も見てきている。時々、真面目に更正訓練をしても報われないとの思いにかられる。自暴自棄になって、管理者に目をつけられるとなかなか出られない。

 強姦・強制わいせつの再犯率はどの国でも窃盗罪などに比較すると高率である。米国での1年以内の再犯率は39%。釈放された本人だけでなく、家族や周囲の関係者による注意、喚起が必要になる。