地震メカニズム:大震災前兆「ゆっくり地震」再現に成功
毎日新聞 2015年10月16日 22時11分(最終更新 10月16日 22時34分)
海洋研究開発機構などのチームは16日、東日本大震災で大きくずれ動いた宮城県沖の断層の岩石を使って、震災前に起きていたのと同じ「ゆっくり地震」を再現することに成功したと発表した。同じ断層面でマグニチュード(M)9.0の巨大地震が起きており、チームは「ゆっくり地震が続いた後、高速なずれが起きて東日本大震災に至ったとのメカニズムが実験で裏付けられた」としている。
ゆっくり地震は、海底のプレート(岩板)や活断層が地表に揺れが伝わらないような遅い速度で動いて破壊が起きる現象。日本周辺でもたびたび観測され、東日本大震災前の2011年2月中旬〜3月上旬にも宮城県沖でM7.1相当のゆっくり地震があった。
チームの伊藤喜宏・京都大准教授(地震学)と氏家恒太郎・筑波大准教授(構造地質学)らは同機構の地球深部探査船「ちきゅう」で、宮城県沖のプレート境界の浅い場所に当たる水深6900メートルの海底を掘削し、深さ820メートルにある断層面の岩石を採取した。実験室でこれを割って、太平洋プレートが陸のプレートに沈み込む速さ(年間8.5センチ)とほぼ同じ秒速2.7ナノメートル(ナノは100万分の1ミリ)の超低速度で動かしたところ、実際に起きたゆっくり地震で計測されるのと同じ摩擦量を確認できた。
プレート境界の浅い場所はこれまで、断層同士が固くくっついていないため巨大地震を起こすような大規模な破壊は起こりにくいと考えられていた。今回の実験で、浅い場所の断層でも、ゆっくり地震が前兆となって巨大地震が起きる可能性があることが確かめられたという。
チームは「ゆっくり地震から巨大地震に変わるきっかけが何かはまだ分からないが、南海トラフでも同じことが起こる可能性があり、ゆっくり地震を注意深く観測する必要がある」と指摘する。【久野華代】