ホヤ:震災後異常繁殖、カキ・ホタテ養殖に被害深刻 岩手
毎日新聞 2015年10月16日 09時06分(最終更新 10月16日 10時58分)
養殖漁業の盛んな岩手県山田町の山田湾で、脊椎動物と無脊椎動物の中間に分類される原索動物の「ヨーロッパザラボヤ」が異常繁殖し、ホタテやカキに付着して成長が妨げられるなどの被害が出ている。東日本大震災前には見られなかった生き物だが、2年ほど前から被害が出始め、今年が最もひどい。漁業者たちはどうしたらいいのか頭を抱えている。
ヨーロッパザラボヤは食用のマボヤに似ていて、長さが10センチ前後の細長い形をしている。指で押すと、柔らかな感触だ。本来、日本にはいなかった外来生物だが、日本では2009年に北海道・噴火湾で被害が出て騒ぎになった。県水産振興課によると、県内では震災前に広田湾などで見つかっていたが、深刻な被害の報告は今のところないという。
山田湾では今年、海中につり下げて養殖するカキやホタテに殻が見えなくなるくらいに付着していた。栄養分を取られるため殻の成長が止まり、実入りが悪くなるほか、死ぬ貝もある。
さらに、重みでロープが切れることもあり、貝を失う被害も出ている。アワビなど波が荒い場所に生息する貝には、付着していないという。カキを養殖する上林実さん(66)は「水深が深くなるほど大量にくっついている。震災までは見たこともない生き物だ」と気味悪がる。
異常繁殖の原因については、震災後に北海道から購入したホタテの稚貝を通じて持ち込まれた可能性や、津波で海の環境が大きく変化した影響などが指摘されている。
三陸やまだ漁協は、広田湾などの一部で使われている洗浄機をメーカーの協力でテストした。機械にかけて洗い落とす仕組みだが、1台500万円もして手が出ないという。このため、漁業者は水揚げした時に手でむしり取るなど、手間の掛かる作業に追われている。
県水産振興課は「ヨーロッパザラボヤは酸性の体液を持っているので素手で触ると荒れたりする。山田湾の異常繁殖の原因ははっきりしないが、大量に発生している地域からの稚貝の購入は手控えるなどの注意を呼びかけたい」と話している。【鬼山親芳】
◇ヨーロッパザラボヤ
ノルウェーから地中海が原産域とされる単体性のホヤ。国立研究開発法人・水産総合研究センターなどによると、雌雄同体で、体液はpH2.0〜4.0の酸性。米西海岸やオーストラリア南部などにも生息しており、養殖の資材や船体などに付着したり、バラスト水に混じったりして各地へ広がったと考えられている。