死刑確定後の再審開始決定により釈放された袴田巌(いわお)元被告(79)の第2次再審請求審の即時抗告審で、東京高裁(大島隆明裁判長)は15日、再審開始決定の決め手となった弁護側のDNA型鑑定の手法が再現できるかを検証する実験を、検察側が推薦した鑑定人のみで実施する方針を弁護側に伝えた。弁護側は実施に反発したが、近く正式に決定を出す見通し。弁護団が高裁、検察側との3者協議後の記者会見で明らかにした。

 即時抗告審で検察側は、弁護側のDNA型鑑定を「独自の手法で信用できない」とし、再現実験の実施を要求。難色を示す弁護側との間で実施条件に隔たりがあったが、高裁は8月、検察側提案の条件を軸に実施する方針を示した上で双方に鑑定人の推薦を求めていた。弁護側が今月5日付の意見書で改めて実験への参加を拒否したため、高裁は、検察側が推薦した鑑定人のみで、検察側提案の条件に沿って実施する方針を伝えたという。

 弁護側が実施した鑑定方法は、異物が混じった可能性がある試料から血液中のDNA型を抽出できるとされる「選択的抽出方法」。犯人の着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕のDNA型は袴田元被告のものと一致しないと結論付け、静岡地裁はこれを根拠に再審開始を決定した。

 弁護団は「検察側の実験結果にお墨付きを与えようとしているとしか考えられず、極めて不当」と反発している。【山下俊輔】