2015年10月15日

「プロレスって、細かい部分は凄く違うんだよ、一緒じゃないんだよ」でも…

SAKAI昨年ツイッターにてリアルタイムに収録模様が公開され、
2月に公開されるやドキュメンタリーフィルム界をあっといわせた
「劇場版プロレスキャノンボール2014」。
その総監督を務めたマッスル坂井監督が、2015年も映画製作に着手。
縦軸の作品テーマが「プロレスって、細かい部分は凄く違うんだよ、一緒じゃないんだよ」。
でも「大きな部分では一緒だな」、であることが明かされた。
鬼才・マッスル坂井監督が挑むのは、プロレスとは何たるものかというドデカいテーマ。
ずっとカメラはまわしていたものの、中心となるテーマは9月12日、青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場にて行われた
「AOMORI ROCK FESTIVAL’15〜夏の魔物〜」の提供試合で明確になったとのことです。
仮タイトルは、『俺たち文化系プロレスDDT』。

 この夏は東京のほうで、プロレスのスタイルだとか、団体の違い、イデオロギーの違いとかがちょっと変なカタチで話題になっちゃったじゃないですか。そういう流れで行ったら、絶対に避けるカードですよね(笑)。
(中略)
 (でも)途中で4人の域が合うところがあったんですね。それが楽しかったし、なんでそんなことになるのかわからなかったです。だからプロレスって、細かい部分は凄く違うんだよ、一緒じゃないんだよ」みたいな部分ってあるかもしれないですけど、大きな部分では一緒だな」っていうのを感じられた試合だったと思います。(徳間書店刊「ゴング」6号)
音楽フェス、夏の魔物で組まれたタッグマッチは、以下の面々による通常ではありえない顔合わせでした。

ササダンゴ・マシン 覆面煽りパワーポインター。新潟プロレス出身。現松竹芸能所属。
パワポを使った煽りVTRで一躍有名に。夏の魔物ではスクリーンがないため、ただの大きい人。中の人はマ(ry

桜庭和志 世界が恐れるIQレスラー。UWFインターナショナル出身。現ケイオス。
グレイシー戦をはじめとする総合格闘技「PRIDE」での試合は、世界中に轟いた。

ケンドー・カシン プロレス界きっての問題児。新日本プロレス出身。現フリー。
プロレスラーならみんな好きと噂の、神出鬼没、ひねくれまくりの悪魔仮面。

葛西純 ノー・デスマッチ・ノー・ライフ。大日本プロレス出身。フリーダムズ所属。
全身傷だらけ。高さ6メートルのバルコニーから地上めがけてダイブする、生き様がロックンロールでパンクな人。

 次の映画ってそこらへんがテーマになってくるんですよ。(中略)いろんなキャリアとか、いろんなスタイルとか、全員違うところから出てきて、まったく違う道を歩いてきた。それぞれの人たちが歩いてきたわけじゃないですか。そうすると、そこでは、誤解を恐れずに言えば、自分が思ってるプロレスも、ほかの3人が思ってるプロレスも、そこには共通してる部分がいっぱいあると思うんですよ。(同上)
「プロレス」という4文字の単語にはいろいろなものが含まれている。
戦後に日本を復興させた、教科書にも載る力道山のプロレスも、
ストロングスタイルも王道プロレスも、デスマッチも飛んだり跳ねたりも、
お笑いのようなプロレスも、打撃が飛び交うプロレスも、全部がそれぞれ違うプロレスで、すべてが同じプロレスです。
それを一本の映像で表現できれば…… いやいや、ちょっとハードル高いよ!

上記でいう、東京のほうで〜 が何を言うかというと、
8月23日、DDT・両国国技館大会。対HARASHIMA戦を終え、棚橋弘至選手が発したこれですね。

 棚橋 俺は珍しく怒ってるよ。グラウンドで競おうとか、打撃で競おうとか、技で競おうとか。ナメたらダメでしょ。これは悪い傾向にあるけど、全団体を横一列で見てもらったら困るんだよ!(※机をドンと叩く) ロープへの振りかた、受け身、クラッチの細かいところにいたるまで、違うんだから。「技が上手だね、マスクがいいね、筋肉が凄いね」じゃないところで俺らは勝負してるから。(新日本公式
HARASHIMA選手は“インディペンデント”DDT所属。棚橋選手は“メジャー”新日本プロレス所属。
その後弁明もしていますが、発言を抜き出せば、その格差を述べたようなコメント。
棚橋選手こそ、プロレスに対する偏見を弾き飛ばし、現在のいわゆるブームを作ってきた選手。
そんな選手が覚悟を持って放った言葉。
さらにその「違う」ポイントをぼかした発言だったばっかりに、コメントは一人歩き。
一夜明け会見でHARASHIMA選手も真意はなんなのかとぶつけます。

 HARASHIMA 試合を振り返るというか、試合後の棚橋さんのコメントを見て、何に怒っているのか意味がわからないですね。どうとでも取れる曖昧な発言で逃げてないで、それは言ってくれればいいのに。でも自分はいつでも闘う準備ができているので。
(中略)
DDTの両国の印象が、その印象になってしまって不愉快です。(【両国ピーターパン2015一夜明け会見】昨日の棚橋弘至の怒りのコメントにHARASHIMA「何に怒っているのか意味がわからない。そこまでして注目集めたいのか。不愉快です」 | DDTプロレスリング公式サイト
DDTファンに湧き上がるモヤモヤ。発言を自分なりに噛み砕き胸に収める人。
怒りを燃やしながらも、ぶつける先がないまま、束を持つ人。でも答えは待ってても始まらない。
プロレスは与えられた役割を演じるものじゃないから。いつだってドラマは夢は、人が動いて始まるから。
10月7日、DDTドラマティック総選挙結果発表の舞台で、歯車は動きだします。
プロレスとはなんたるかを見せるために。まさかという手段で、プロレスラーは高いハードルを越えていく。
ササダンゴ・マシン、男色ディーノ、大家健によるユニット「#大家帝国」がファン投票1位を奪取。

 ディーノ「中間発表で1位でした。これはあるかもしれんと思って、3人で話し合って。今から私たちはとんでもないことを言います。ごめんなさい。ひょっとしたら処分の対象かもしれないです」
 するとササダンゴが映像ブースにノートPCを運ばせる。しかし機材トラブルでマイクでプレゼンすることに。

 ササダンゴ「結成して1ヵ月にもみたないユニットですがご投票ありがとうございました。#大家帝国がユニット総選挙で1位になってやりたいことというタイトルです。まず僕たちは今、DDT制作の映画第2弾『俺たち文化系プロレスDDT(仮)』というドキュメンタリー映画を撮ってます。この映画はDDTの1年間を通してプロレスってなんだろう、DDTってなんだろうということをもう一回映画作りと通して考え直すことなんです。(中略)
 僕は選挙公約の中で#大家帝国が1位になったらマッスルをやりますと言いました。で結果、この選挙で俺たちが1位になることができたんですね。マッスルってよくわからないと思うんですけど、とにかく準備でバタバタします。あとアイディアが出なくて頭がおかしくなります。そしてみんなで喧嘩します。
(中略)
『俺たち文化系プロレスDDT(仮)』は今年一年間のDDTの流れを追ったドキュメンタリー。なので、DDTで今年一番モヤモヤしたことをここで解決したいと思います。2015年、DDTで一番モヤモヤしている人、HARASHIMA先輩、大家健。そしてお願いその3。DDTがこの2人がリングで闘うに相応しい相手をブッキングしてください。HARASHIMA先輩が今年絶対に闘っておかなきゃいけない相手、新日本プロレス・棚橋弘至をブッキングしてください!」大家「HARASHIMA〜! オマエ、モヤモヤしてんだろ! 両国! 悔しかったんだろ! 俺も悔しかったよ! でも! 俺たちと同じように悔しかったのは、ここにいるDDTのみんなだろ! 俺は! DDT、ファン全員の気持ちを受け止めて! HARASHIMA、オマエとタッグを組んで! 棚橋弘至と闘うぞ! 闘うぞ! 闘うぞ! 俺はオマエたちの気持ち、全部! 全部! 全部! 受け止めて棚橋弘至と闘うぞ! 闘うぞ! 闘うぞ! 闘う!」
(中略)
 HARASHIMAは♯大家帝国のマイクアピールに触れると涙ながらにコメント。「悔しさはあるけどこれだけの投票があったことは嬉しいです。皆さまが入れてくれた一票一票に応える試合を必ずします。よろしくお願いします。あと、さっきのユニットの時に#大家帝国のことなんですけど…大家クン、ディーノ、坂井クン。ありがとうございます、本当に。ちょっと説明するのもあれなんですけど…(涙)、ひじょうに悔しくって自分で消化できない問題だったんだけど、どうなるかわかんないけど、みんながそういう気持ちで、そういう場を言ってくれるのはすごく嬉しいし、僕はいつでも準備はできているから! やってやるんで! どうなるかわかんないけど、自分はいつでもやってやります!」(【DDTドラマティック総選挙2015結果発表大会のまとめ】個人部門はイサミが涙の1位!  11・28府立第一でKO-D無差別級に挑戦!「ユニオンプロレスは10年間あったと証明します」/飯伏は2位陥落、10・25後楽園で坂口のKO-D無差別級に挑戦!/ユニット1位は♯大家帝国! 11・17後楽園でHARASHIMA&大家コンビで棚橋との対戦をブチあげる! HARASHIMAは涙「みんながそういう気持ちでそういう場を言ってくれるのはすごく嬉しいし、僕はいつでも準備はできているから!」高木大社長は「腹くくりました」/総選挙は東京女子勢が躍進! | DDTプロレスリング公式サイト
「マッスル」とはなんぞやということを説明すると長くなるので、参考リンクだけ貼っときます。
2010年にいったん終了(2030年に再開予定)したマッスル坂井“選手”によるこんな興行です。
マッスル (プロレス) - Wikipedia
extremeparty/マッスルハウス4

自分が思うプロレスという言葉に含まれる動詞作用は、筋書き通りというよりも、真逆のアドリブ性、即興性だったりします。
マッスルの演劇成分は、それを浮きだたせるために必要な要素だと感じていたけれど、
発言によってできた感情のモノガタリを、こうやって繋ぐとは思わなかった。

マッスル坂井監督が出す、プロレスとは何たるかのひとつの答えは?
別々に分かれていた道が一つになる時、どんな光景が生まれるのか?
いまやマッスル4で「棚橋弘至vs男色ディーノ」を示唆していたのも、すべて伏線に見える不思議、不思議。
なお、男色ディーノ選手は、棚橋発言についてこんなことを述べています。

「横一線で見てもらっては困る」。まさにここ。同じ意見。
(中略)
 事の善悪は判らないわよ。でも差はあるわよ。それはそうでしょうよ。差があるから面白いんじゃない。私なんて劣等の塊よ。でも、だからこそそれを埋める何か一芸、もとい一ゲイがあるわけで。
 問題は差があるからじゃあその差を埋めるのはなんなんだって話だと思うのよ。(徳間書店刊「ゴング」6号、男色ディーノの男筆宣言)
それぞれがそれぞれの得意分野で、その意味を回収する。それぞれの答え合わせ、今から実に楽しみです。
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この記事へのコメント
もう文科系プロレスMAXという感じで非常によろしいと思います(小並感)
Posted by あああああああああああああ at 2015年10月15日 04:13
棚橋のバカとオカダの脳足りんはインディーを経験したことないから嫌われるんだよ、鈴木KENSOのように菅原忍のようにTバックで試合しろよ!! 追伸 大仁田厚はやっぱりウソつきじゃーー!!
Posted by タツヨシ at 2015年10月15日 06:25
棚橋さんもここまで全力でつっこまれるとは思わなかっただろうなあ。
でもこれでこそインディーのしぶとさよね。
男色姉さんの言葉の広さと重みよ!
Posted by メカ at 2015年10月15日 08:43
今回の棚橋の発言は、何となくらしくないと思いました

あの発言以来しばしば弁明(?)しているけど、そこはかつての革命戦士が言ったように「飲み込むなよ」と思ってしまう。
元々考えなしの発言をする人ではないけど、だからこそ1度感情をさらけ出したものを、簡単に引き下がって欲しくないです。そんな中途半端に大人なプロレスラーは見たくないので、リングで決着をつけて欲しいですね
Posted by H at 2015年10月15日 13:47
昔はそういった「大まかには同じだけど細かな違い」を経験するのは海外武者修行の定番だったけど、今は中野新橋から新宿3丁目に移動するだけで体感できるんだから、世界は狭くなったのかもしれない。
Posted by いちふじ at 2015年10月15日 17:39
ネタの為なら身内のアレや他団体のエースの発言も利用するんだな。だから棚橋選手の発言に対しては悔しさも有るが使えると思ったりしてね…。

DDTのエンターテイメント力を見せつけられた瞬間だった。
Posted by 通り菅井 at 2015年10月15日 18:06