Photoshopのデザインカンプ上で、スマートオブジェクトを50%以下に縮小しておき、画像アセット生成などで200%にして書き出す手法があります。スマホなどの高解像度ディスプレイ対策としては定番ですね。しかし、ある条件下では、元の画像を50%以下に縮小しているにも関わらず、書き出し後の200%画像がぼけてしまうことがあります。この点について気になったので、少し整理してみました。
スマートオブジェクトの特長
スマートオブジェクトは、拡大、縮小を繰り返しても劣化しないというのが特長です。もちろん、オリジナルのサイズより大きくする場合は別ですが、いったん縮小してから再び拡大しても、その都度オリジナルからピクセルを生成しますので、常に最適な画質が保持されるというわけです。
デザインカンプから高解像度用の画像を書き出す
Photoshopでデザインカンプを作るとき、高解像度ディスプレイ用の画像を書き出す予定がある場合は、あらかじめ大きいサイズの画像でスマートオブジェクト化しておき、それを50%以下のサイズにしてレイアウトするのが一般的です。これを200%などに拡大して書き出すことで、簡単に高解像度用の2倍画像が作成できるわけです。このとき、「画像アセットの生成」や「書き出し形式」などの機能を使えば、元画像を自動で200%に拡大しながら書き出すこともできるのでとても便利です。
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拡大して書き出した画像がぼけちゃう問題
ここでひとつ注意したい点があります。ドラッグ&ドロップや“ファイル”→“○○○を配置”でドキュメントに配置した場合、スマートオブジェクトを50%以下に縮小しているにも関わらず、書き出し後の2倍画像が、通常の画像のようにぼけてしまうことがあります。
一方、同じ方法で配置したスマートオブジェクトを、同じように拡大して書き出してもぼけない場合もあります。ということは、配置のやり方が問題ではなさそうですね。では、ぼける、ぼけないがどういう条件で決まるのでしょうか。
スマートオブジェクトの中身について
ご存知の方も多いと思いますが、スマートオブジェクトをものすごくざっくりと説明すると、PSDの中に別の画像をまるっと内包する技術です。つまり、内包された画像にも、通常の画像ファイルと同様に画像形式が存在するということです。それは、JPEGであったり、PNGであったり、PSDであったり……とさまざまです。リンクで配置している場合を考えれば、イメージしやすいと思います。
ドラッグ&ドロップや“ファイル”→“○○○を配置”で配置したスマートオブジェクトは、オリジナルのファイルと同じ画像形式で保持されます。例えば、JPEGのファイルをドラッグ&ドロップで配置すれば、そのスマートオブジェクトの中身はJPEGになります。スマートオブジェクトの中身が何の形式になっているかは、[レイヤーパネル]でスマートオブジェクトのレイヤーサムネールをダブルクリックして中身を開き、その画像のファイル名(拡張子)を見ることで判別できます。あるいは、属性パネルでファイル名を確認できる場合もあります。
外部ファイルを配置する以外にも、レイヤーの画像を直接スマートオブジェクトに変換することもできます。このときの画像形式は、PSB(ビッグドキュメント形式)となります。PSBは、PSDとほぼ同じ特徴を持っています。詳しくは公式のヘルプを参照してください。
実験
ひとつ実験をしてみましょう。JPEG、PNG、PSDの外部ファイルを埋め込み配置したもの、レイヤーを直接スマートオブジェクト化したもの、合計4つのスマートオブジェクトを用意しました。直接変換したもの以外は、すべてドラッグ&ドロップで配置しています。元の画像サイズは、それぞれ256pixel四方ですが、スマートオブジェクトを50%に縮小して、128pixelのサイズにしています。これらを、画像アセットの生成で、200%に拡大して書き出ししてみましょう。なお、今回実験に使ったPSDは、下記よりダウンロードできるようにしていますので、興味のある方はご自由にお試しください。
レイヤー名を変更して画像アセットを作成
まず、画像アセットを生成するためにレイヤー名を変更しましょう。今回は、すべてPNGとして書き出します。200%に拡大するので、レイヤー名を「200% xxx.png」としました。あとは、“ファイル”→“生成”→“画像アセット”を選択し、続けてドキュメントを上書き保存すれば、PSDと同じ階層にアセット用のフォルダが作成され、その中に画像が書き出しされます。
結果
元がJPEGとPNGのものは、拡大によって画像がぼけています。一方、PSDと直接変換したものは、きれいに拡大されています。つまり、スマートオブジェクトの中身が、Photoshopのネイティブ形式であるPSDとPSBの場合に限り、拡大に対応しているということですね。
まとめ
今回の実験で、拡大したスマートオブジェクトによる画像の劣化は、配置方法が原因ではないことがわかりました。すべての形式を試したわけではないので、これ以外にも拡大に対応しているものがあるかも知れませんが、少なくとも、PSDかPSBにしておけば大丈夫だということです。このように仕組みを理解しておくことで、意図しない結果が出た時でも、無駄のない対処ができるようになるはずです。重箱の隅をつつくような細かい内容ですが、今回の記事がPhotoshopでWebデザインをされている方の一助になればうれしいです。
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