1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。2001年米コロンビア大学経営大学院卒業(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。2004年よりコロンビア大学経営大学院の入学面接官。近年はテレビ番組のコメンテーターも務めている。主な著書に『世界最高MBAの授業』(東洋経済新報社)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードはなぜ仕事術を教えないのか』(日経BP社)
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佐藤 失敗など、ネガティブなことを報告してもらうために、部下にどのように呼びかけたらいいのでしょうか。
エドモンドソン たとえば、こんな風に言ってみてはどうでしょうか。
「今日も素晴らしい仕事をしてくださりありがとうございます。でも皆さんのスキルと創造力をもってすれば、もっと素晴らしい仕事ができると思うのです。だからもし何か問題があればどんな小さなことでもいいので、シェアしてくださいね。一緒に改善していきましょう」
あるいは、こういう言葉でもいいでしょう。
「皆さんの意見をぜひお聞かせください」
「現場やお客さんのことは皆さんのほうがよく知っています。私には見えていない問題をぜひ指摘してくれませんか」
「現場の問題は皆さんのほうが私よりも先に気づくはずです。どんな小さな問題でもいいので私に報告してくれませんか。改善案があればぜひ教えてください」
佐藤 上司からこんな風に謙虚に言われれば、失敗を報告しても減点されないなと思いますね。
エドモンドソン 心理的な安全を感じてもらう環境をつくるために、上司がやるべきことは3つあります。
1つめは「フレーミング」(職場環境の定義)です。この部署ではどのぐらい失敗が許される部署なのか。どんな失敗が評価され、どんな失敗はダメなのか。生産部門ではできる限りミスをしないことが前提となりますが、研究部門では数多く実験と失敗を繰り返すことが評価につながる。何が評価されるかを明確にすることです。
世界で最も革新的な企業の1つ、デザイン・コンサルティング会社IDEOの創業者、デビッド・ケリーは社員に向けて「早く成功するために数多く失敗せよ」と言いました。これこそフレーミングです。「IDEOは、小さな失敗を重ねた末に大きな成功を生み出した人が評価される会社ですよ」と強調しているのです。部下は自分の部署で何をやれば評価されるのかを自分でフレーミングすることはできません。だから経営者や管理職が、「こういうことが評価される部署ですよ」と定義してあげることが必要なのです。