(沢嶋)
空前のアイドルブーム到来。
今の事ではない。
それは江戸時代から始まっていた。
人気抜群。
男たちの心をわしづかみにする娘がいた。
一体どんな女性なのか。
その裏にはブームを作り出す仕掛け人がいた。
200年以上前のアイドルビジネス。
その戦略とは…。
私はその実態をカメラに収めるべく江戸時代へタイムワープした
え〜アブソリュートポジションN514W119E625S751。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB7946051年41時87分32秒。
西暦変換しますと1783年6月13日7時18分33秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー921832これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
店の前で呼び込みをしている男がいる。
ここは水茶屋。
だんごやお茶などを提供するいわば江戸時代のカフェーである。
お客が入っている様子はない。
経営不振の水茶屋が仕掛けたある秘策とは何か。
その人気挽回作戦をドキュメントする
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
留吉はこの店の主いわばオーナーである。
従業員は女性一人のみ。
客が入らずすっかりやる気をなくしている様子だ。
水茶屋は江戸の庶民の間で流行していた。
道端や寺の境内などに店を構え手軽にお茶が飲めるとあって人気があった。
この街角でも水茶屋ブームに便乗しようとした。
だが店が乱立し互いに客を食い合うという過当競争に陥っていた
ここあけびやはもう何か月も赤字状態が続いている。
そんなある日一人の男性が現れた
(大山)こんにちは。
おいお茶だ。
お茶出してくれ。
店の隅々までチェックしている。
この男の正体とは?
男の名は大山権左衛門。
人を紹介する口入れ屋でその人脈を利用し手広く事業を行っているいわゆるコンサルタントだ。
主の留吉が必死に大山に店の立て直しを依頼した
(留吉)確かに。
接待?うん。
ちっともよくありませんぜ。
(留吉)いいんですか?
大山が提案したのはなんと店の看板娘をつくり出し集客を図る作戦だった。
アイドルビジネスである
まずは従業員のカメを美しく変身させる事に。
店の2階には大山が呼び寄せた髪結いと呉服屋が待っていた。
ヘアメークとスタイリストである
(呉服屋)見て下さい。
そこには花魁風に変身したカメの姿があった
江戸時代のアイドルといえば花魁であった。
トップクラスの花魁は江戸の人々の憧れの的だった。
だが…大山の駄目出し
江戸っ子の興味の対象は変化しつつあった。
トップクラスの花魁は庶民にとって高根の花。
手が届かない。
それに代わりブレークしたのが茶屋などの看板娘。
いつでも気軽に会いに行く事ができる身近なアイドルとして人気が高まっていたのだ。
花魁風の濃い化粧から素人っぽいナチュラルメークに。
そして着物も親しみやすいものに替えていく。
テーマは「近所にいそうなかわいい女の子」だ。
水茶屋看板娘の出来上がり
うんいいんじゃないか。
えっ…まだ何か?留吉さん留吉さん。
(大山)関係ある。
これも一つの手だてだから。
だから聞け。
お前は…
つまりは芸名である。
早速見違えるようになったカメいやうめを店先に立たせる事に。
果たして…
(留吉)いらっしゃいまし。
寄ってって下さいまし。
どうぞこちらへ。
効果はすぐに現れた
2人とも新しい看板娘が気になっている様子だ
ところが…
客の顔色が一変する。
原因はうめの接客態度にあるようだ
お代ここ置いとくよ。
(留吉)ありがとうございました。
またごひいきに。
いくら美しく変身しても愛想がなければ客は逃げる
コンサルタントの大山が動く。
一人の女性を連れて店にやって来る
どうもはじめまして。
うめの態度を改めるための接客研修だ
若い女性たちは芸事の師匠に芸と一緒に行儀見習いを教わる事が多かった
ちょっと。
ほらこっち向いて。
なに?ほら!「いらっしゃいまし」だよ。
(大山)いいからやれ。
いらっしゃいまし。
ところが…
このだらけた態度で…。
あきれ返った師匠がついに…
ちょいと待って!じゃあ。
ちょっと待って下せえ。
必死になって頭を下げる留吉
(留吉)頼みます!いらっしゃいまし。
再び接客研修が始まる
手を組んで。
姿勢よくして。
なぜか依怙地になっているうめ。
その訳は彼女の過去に原因があった
いらっしゃいまし。
どうですか?
接客の猛特訓を終えたうめは別人のようになっていた。
店は次第に活気を取り戻しつつある
ええ。
だが大山の仕掛けはここでは終わらない
ごちそうさん。
何だい?これ。
えっ?タダって事?はい!ありがとうございます!
大山が提案した独自のアイデアポイント商法だ
これですか。
更に…
さあこちらでございます。
寄ってらっしゃいませ。
うめの名前が書かれた手拭いの売り出し。
看板娘グッズの販売である。
作戦は大当たり。
予想以上の売れ行きを見せた。
快進撃は更に続く。
彼らが向かった先は旅籠。
一体次は何をしようとしているのか
(大山)お〜北英さん!遠いとこ悪いね。
いえ。
いいネタがあれば私はどこへだって行きますよ。
大山の幅広い人脈が力を発揮する。
遠くから浮世絵師を呼んでいた。
うめの錦絵つまりブロマイドを売り出そうという作戦だ
聞いております。
こら。
私の名前はカメって…。
(大山)よろしくお願いします。
早速うめの錦絵制作が始まる
ちょっとつらいだろうけどそのままで。
新進気鋭の浮世絵師及川北英。
真剣なまなざしで紙に筆を走らせる
どんな錦絵が出来上がるのか
(うめ)ありがとうございます。
店先はうめの錦絵を買い求める客で大繁盛
おうめ様々だね。
大山の仕掛けは次々とはまり大成功となった。
私は1か月後にタイムワープ。
店がその後どうなったか更に追跡調査をする事にした
え〜あれから1か月後にタイムワープしました。
あけびやとうめはどうなってるんでしょうか。
その後を追ってみたいと思います。
そこには信じられない光景が待っていた
あっそちら。
商魂たくましい大山。
攻めの姿勢はまだまだ続く。
再び浮世絵師及川北英の登場だ。
その新たな商売とは…
ちょいとこれ見て頂けますか。
さすがですね。
いやいや。
実は彼の戦略には元ネタがあった
本部こちら沢嶋。
応答願います。
(古橋)はいこちら本部。
古橋さん江戸で一番有名だったという「笠森お仙」について追加情報をお願いします。
笠森お仙ですね。
了解しました。
こちらをご覧下さい。
この女性が笠森お仙です。
もともと美人で人気のあったお仙でしたが1768年浮世絵師鈴木春信がお仙の姿絵を出版した事から人気に火がつき茶屋にはお仙目当ての客が殺到したと言われています。
なるほど。
姿絵の他にもお仙の手拭いすごろく絵草紙などこれらのグッズが売り出され大ヒットしたそうです。
この時代にもそういう商法を盛んに行っていたんですね。
はい。
更に面白いデータがありまして笠森お仙のブームの時にはあちこちに人気の看板娘が現れたそうです。
お仙と競わせ数十人の看板娘の人気投票「美人くらべ」が実際に行われていたようです。
了解しました。
ありがとうございます。
ブームは繰り返す。
大山は笠森お仙の戦略をまねてすごろくや小説を売り出そうともくろんでいたのだ。
全ては順調に進んでいるかに思えていた。
だがこのあと彼らは思わぬ形で足をすくわれる事になる
旅籠の入り口にまで追いかけてきたうめのファンたち。
一体何が…
(奉公人)実はやつら…
きっかけは瓦版であった
うめと浮世絵師が恋仲であるというゴシップ記事である
謝る事ないですよ。
(大山)何だ?前から言ってたけど…私は私。
これからお前…大山さん…。
何でですか?
看板娘に恋人がいるとなれば人気はがた落ちだ
大山はスキャンダルの火消しに躍起となる
はいかしこまりました。
ちょっと待て。
くれぐれも頼んだ。
はい。
駕籠に隠れてファンの間を突破する作戦
(駕籠かき)急ぎの客運んでんだよ。
どけ!
だが真相を聞き出したいファンたちに囲まれ立往生
それはカムフラージュだった
大山は裏口からうめを脱出させる事にしていたのだ
駕籠に殺到しているファンを尻目に旅籠を離れていく。
しかしその時だった
目ざといファンがうめを見つける
(ファン)おうめちゃん!
追いかけてくるファンをまいて店に向かう
店先にもうわさを聞きつけたファンたちが集まっている
裏口に回りなんとか店の中に入った
あ〜くそ…。
このままでは事態の収拾はつきそうもない。
大山は決断する
こうなったら…
そしてうめも覚悟を決めた
みんな…ああいいって事よ。
(ファンたち)えっ?
それは彼女が初めてカメラに見せた偽りのない姿だった
(大山)もういい。
やめてよ!
(ファンたち)カメ…。
大したもんだよ。
(留吉)すいません。
江戸時代のアイドルビジネスはこうして意外な形で幕を閉じた
翌朝
後片づけに現れたのはうめではなくカメだった。
店にはもう売る事はないうめのグッズだけが残されていた。
きらびやかな時間はあっという間に終わってしまう。
だがその時だった
おカメちゃん!おカメちゃん!
なんと外には開店を待ちかねた客たちがたくさん詰めかけている
でも…。
皆本当の事を正直に話してくれたカメの心意気にほれたという
店は前と変わらずの繁盛となった。
明和年間に人気となった笠森お仙は幕府の役人と結婚し突如水茶屋を引退。
そのニュースに江戸中が大騒ぎになった。
大山の仕掛けたアイドルビジネス。
歴史の中で忘れ去られても一人の女性の人生を大きく変えた事は間違いない。
現れては消えていくアイドルという偶像。
そしてそれを追い求める人々の姿は時代を超えても変わらない。
それを強く実感する取材となった
以上コードナンバー921832アウトします。
2015/10/14(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「誕生!水茶屋アイドル」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は江戸時代、庶民に人気があった水茶屋の「看板娘」と仕掛け人に密着取材を行う。
詳細情報
番組内容
今回の取材対象は江戸時代に人気があった水茶屋の「看板娘」。水茶屋は街角や寺の境内などに店を構え、お茶や団子を客にだしていた、いわば“カフェ”である。水茶屋で接客サービスを行う可愛い女性が「看板娘」。庶民にとって、いつでも気軽に会いに行ける身近なアイドル的存在だ。1793年、経営不振の水茶屋の店を営む留吉は口入れ屋に依頼し、美しい看板娘を仕立てあげ、店の集客をはかる。人気挽回作戦は成功するのか?
出演者
【出演】要潤,杏
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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