失われると分かって初めて気が付く事がある。
夏の終わり長年人々に愛されてきた老舗ホテルが幕を閉じた。
建物の美しさも世界的に評価され海外のVIPも訪れてきたこのホテル。
昭和から平成の華やかな歴史の舞台となってきた。
建て替えのため一旦取り壊されるホテル本館最後の72時間。
人々は何に別れを告げるのか?本館の営業が残り3日となった8月最後の土曜日。
撮影を開始。
ホテルの顔美しいロビーではたくさんの人が別れを惜しんでいた。
この建物ももう見納めとあちこちに写真を撮る人が。
従業員に挨拶する外国人の姿も。
昔からの常連だというアメリカ人。
ありがとうございます。
ニューヨークから来たデザイナーとアートキュレーターのカップル。
和の伝統とモダンが融合したつくりに引かれて定宿にしているんだそう。
小さな子ども連れの女性。
孫なんです。
都内に住んでいるけれど今日はあえてここに泊まるという。
ちょっとだけお部屋を見せてくれる事に。
お〜ここ広いな。
1人暮らしをしているおばあちゃんのために家族そろって一緒に過ごす一日をプレゼントするんだって。
おばあちゃんと過ごした時をいつか思い出す時が来るのかな?上手ですね。
着物できれいに着飾ったお母さんと娘さん。
建築家だったお父さんに成長した孫娘の姿を見せたいとおめかしをしてきたという。
向かった先は亡き父がよく通っていたバー。
あれ?すぐに出てきちゃった。
まだ昼間だというのに満員らしい。
(取材者)バーどうでした?すごいですね。
座ってました。
大切な人の面影。
創業以来53年このホテルにはさまざまな人生が詰まっている。
美術品などを売るアーケードも常連さんたちに愛されてきた。
その片隅にちょっと変わった場所が…。
お邪魔します。
はいどうぞ。
えっ?ここで靴磨き?通称靴磨きの源さん。
この道51年の大ベテラン。
靴の魅力を引き出してくれると多くの名士が立ち寄るという。
ハ〜大きいですね。
土曜日の夜。
食事を終えた老紳士がロビーでくつろいでいた。
あっ娘さんと3人で。
喉にがんが見つかったけどなんとか命は助かったそう。
近くにある会社に勤めていた頃仕事の打ち合わせでよく来ていたらしいけど…。
職を失ったのをきっかけに一念発起。
金属プレスの町工場を親から受け継ぎいつか夫婦でこのホテルに来たいと頑張ったという。
ああそうなんですね。
すみません突然…。
いえいえ。
外に出ると立派な自家用車が待っていた。
うわさの奥様。
思い出のホテルでの夕食。
2人で乗り越えてきた日々をかみしめる。
学生の頃だったんだけど…。
思ったのがあるかもしれないね。
どうもどうも。
撮影2日目。
朝4時まだ暗いロビーで椅子を並べる若い従業員。
椅子の置き方一つにも細心の注意を払う。
この日は本館最後の日曜日。
レストランは朝から大行列。
お目当ては一日20食限定のフレンチトースト。
レストランの奧には札幌から来たという家族連れがいた。
なんと1年に200日近く泊まっているという男性。
建設会社の3代目だという。
さすが老舗ホテル。
こうした常連さんもたくさんいるらしい。
大広間では別れを惜しむパーティーが始まった。
にぎわいをよそにロビーの片隅で一人机に向かう女性がいた。
何をやられて…。
学校の試験?学生さんなんですか?娘さんがパーティーに出ている間勉強しながら待っていたそう。
訳あって最近福祉系の大学に入り直したという。
15年。
そうなんですか。
実は旦那さんと初めて出会ったのがここのロビー。
友達がお見合いをセッティングしてくれたんだそう。
本館に泊まれる最後の夜。
初めて宿泊するというご夫婦に出会った。
この日に合わせて広島から新幹線でやって来たらしい。
ありがとうございます。
若い時は恐れ多くてロビーに入る事さえできなかった。
書道家さんですか?じゃご夫婦で書家で?はい。
40年以上書道に打ち込んできたという2人。
ですよね。
ですよね。
無職だった。
書道のプロを目指してきたけどなかなか食べていく事ができずあちこちの会社で働いてきたという。
でも実は最近ちょっといい事があったみたい。
あっ日光東照宮。
うわ〜。
すごい。
あの東照宮の400年記念の暦の一枚に書道家代表として選ばれた。
明日はこの大事な書を先方に納めに行くという。
(笑い声)二人三脚でようやくかなえたここでの宿泊は自分たちへのご褒美。
月曜日。
本館最後の朝。
出勤前にわざわざタクシーで来たという人に出会った。
仕事では毎日いろいろあるけれど帰りにここで過ごすと気持ちを新たにできたという。
建て替えが終わるのは4年後。
そのころはどんな自分になっているんだろう?朝9時開店前のアーケードにダンディーな紳士。
靴磨きの源さんに会うためわざわざ早起きしたらしい。
うわさの源さんがご出勤。
2人のつきあいはもう50年近くになるという。
ああ一番それじゃ…。
もうすぐ支度して…。
ホテルや百貨店などの制服を作る会社の元経営者。
どうりでおしゃれ。
11歳。
ほう。
4度目の結婚でようやく出来た男の子。
自分の築いたもの全てをかわいい息子に継がせたいという。
敗戦から70年。
2人は激動の時代を戦友のように生き何でも語り合ってきた。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
またいいお年をお迎え下さい。
ありがとうございます。
そこまでお送りします。
(口を鳴らす音)うまいですね。
いい音ですね。
いい音ですね。
(笑い声)どんな?閉館まで残り1時間。
じっとロビーを見つめる女性がいた。
あっそうなんですね。
3年前に亡くなった夫を思いながら一人晩さんを楽しんだという。
建物は消えてもここで過ごした時は色あせない。
2015/10/14(水) 02:00〜02:25
NHK総合1・神戸
ドキュメント72時間「老舗ホテル また会う日まで」[字][再]
今回の舞台は建て替えのために閉鎖された東京の老舗ホテル本館。大切な思い出を抱える内外の人々が、別れを惜しんでやってきた。最後の3日間のドラマ。(別館は営業中)
詳細情報
番組内容
内外の賓客に愛されてきた東京の老舗ホテル本館が建て替えのために閉鎖された。半世紀以上“日本の顔”の役割を担ってきたホテルオークラだ(別館で営業中)。最後の3日間、大切な思い出を抱える多くの人がやってきた。親孝行しようと背伸びして部屋を予約した家族。結婚式の記憶を温める老夫婦。和の伝統と西洋のモダンが融合した内装を目に焼きつける建築家。次の東京五輪を前に生まれ変わる本館で繰り広げられた人生のドラマ。
出演者
【語り】市川実日子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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