NEXT 未来のために「密着ヒューマノイド世界大会」 2015.10.15


ロボットは一体どこまで人間に近づいたのだろうか。
進化の先にはどんな未来が待っているのだろうか。
今年6月。
ロボットの未来を占う重要な大会がアメリカで開かれた。
最先端のロボットが一堂に会し技術を競い合う初めての競技会だ。
主催したのは人間型ロボットヒューマノイドの実用化を目指すアメリカ国防総省。
ロサンゼルス郊外の会場に6つの国と地域から23のロボットが集結した。
各国のヒューマノイドが挑んだのはがれきを乗り越えるなど災害現場を想定したさまざまな課題。
実はこの大会のきっかけになったのは日本で起こったあの原発事故だった。
人が近づけない現場で活動するヒューマノイドの開発が急務だと世界中で研究が加速した。
出場チームの中でも高い技術力を持つ日本には特別な期待がかけられていた。
しかし…。
日本勢は思わぬ苦戦を強いられる。
ロボット大国といわれる日本に何が起きたのか。
一方でばく大な国防予算を投入し驚異的な進化を遂げる…更に日本を目標に研究を重ね急速に力をつけた…技術的な追い上げはどこまで進んでいるのか。
世界の技術と頭脳が激突したヒューマノイドの頂上決戦に密着した。
乾いたハイウエーをロサンゼルスから東へ向かう。
カリフォルニアの青い空の下で前代未聞の大会が始まろうとしていた。
次々と運び込まれていたのは世界各国で開発された最先端のヒューマノイド。
国を代表する大学や研究機関が3年かけて開発した自信作だ。
出場23チームの中でひときわ注目を集めていたのが産業技術総合研究所や東大など日本のチーム。
ロボット大国日本の技術に熱い視線が注がれていた。
世界が実用化を競うヒューマノイドとは人間のように自ら考え行動するロボットの事だ。
実現にはハードソフト両方の技術が欠かせない。
手足を自在に動かすためのロボット工学の技術。
そしてレーザーなどで空間を認識する頭脳にあたるソフトウエアの技術だ。
今回ヒューマノイドが挑むのは原発事故を想定したコースに設けられたさまざまな課題。
60メートルのコース上に8つの課題が設定された。
まずは車の運転。
建物内への進入。
バルブを回すなど3つの作業。
そしてがれきを乗り越え階段を上ればゴール。
課題をクリアするごとに1点。
制限時間1時間で競うルールだ。
大会を主催したのはアメリカ国防総省の研究機関…過去にインターネットやGPSを実用化した実績を持つ機関だ。
DARPAはアメリカのチームに最大5億円もの資金を提供しロボットの研究開発を後押ししてきた。
大会まで半年と迫った今年1月。
産業技術総合研究所では急ピッチで開発が進められていた。
(取材者)これがあれですか?今回…。
そうですね。
はい。
産総研は日本が強みを持つ産業用ロボットの技術を応用しヒューマノイドを開発してきたパイオニアだ。
ヒューマノイドHRP−2は全身に30個ある関節を制御する事でしなやかに踊る事さえできる。
こうした技術の背景には日本のヒューマノイド研究の長年の蓄積がある。
(取材者)じゃあもう生き字引みたいな…。
ハハハ…!ロボット研究者にとって人間のように活動できるヒューマノイドの実現は究極の夢だった。
今から42年前。
早稲田大学が世界初のヒューマノイドWABOT−1を開発。
2本の腕で物を持ち運ぶ事ができ簡単な会話もできる画期的なロボットだった。
そのおよそ30年後世界初の本格的2足歩行ロボットアシモが誕生。
日本の歩行技術が世界をはるかにリードしている事を証明した。
しかし2000年代半ば以降商業的な成功が見込めないとして研究は次第に下火となっていた。
事態を一変させたのが4年前の原発事故だった。
人が立ち入れない災害現場での活躍が改めてヒューマノイドに期待されるようになったのだ。
だが産総研のヒューマノイドはその期待に応える事ができなかった。
研究チームを率いる金広文男さんは今度こそ成果を上げ自分たちの存在意義を示したいと考えていた。
日本から出場したもう一つの有力チーム…40年近い歴史を誇り数々のロボット技術者を輩出してきた名門研究室だ。
東大は最新の技術を投入し全く新しいヒューマノイドを作り上げようとしていた。
ジャクソンと名付けられたそのロボットの特徴は強じんな下半身にある。
なんと蹴られても倒れないという。
この画期的な技術には既に世界中から注目が集まっていた。
技術の秘密は全身に張り巡らされた緑色の管にある。
この管を流れる冷却液が膝に埋め込まれたモーターを冷やす。
モーターは動かし続けると発熱し力を出せなくなるからだ。
6月5日午前8時。
大会の朝を迎えた。
数千人の観客が見守る中ヒューマノイド世界一を懸けた戦いが始まった。
いよいよ期待の日本チームが登場。
まずは東大が開発したジャクソンの出番だ。
車の運転に挑戦する。
人間は500メートル離れた場所から無線でロボットに指示を出すルールになっている。
(拍手)次に建物への進入だ。
ドアノブをつかむ時に許される誤差は僅か3センチ。
実はここから先には一段と厳しいハードルが設定されている。
建物の中では数秒置きに電波が遮断されロボットとの通信ができなくなるのだ。
この中で活動するためにはロボットが自ら判断して行動する自律性が必要になる。
ジャクソンが建物の中に入った。
ジャクソンはあらかじめ動きの指示を与えるとあとはロボットが自律して行動する事ができた。
しかし順調だったのはここまで。
ドリルをつかんだ瞬間…。
突然の転倒。
原因はロボットに搭載されたコンピューターのトラブルだと見られる。
結局東大は4つの課題しかクリアする事ができなかった。
コース上では東大のように予想外の原因で転倒するチームが相次いだ。
そんな中軽快な足取りで歩みを進めるロボットがいた。
アメリカ…ヘリオスには30メートル先まで空間を把握し行動できるソフトウエアが組み込まれている。
僅かな手助けだけでバルブなどの物体も認識する。
ロボット自らが最適なルートを考えて歩き作業を完結する事ができるのだ。
マサチューセッツ工科大学MITはアメリカ政府の潤沢な資金を使って自律性を高める研究に取り組んできた。
大会主催者のDARPAから資金だけでなくロボット本体も無償で提供を受けてきた。
アメリカ政府が開発を急ぐ背景にはロボットの軍事利用がある。
兵士をロボットに置き換えれば人間の犠牲を減らせるからだ。
アメリカは今回MITなどをロボットの頭脳にあたるソフト開発に専念させる戦略をとった。
その結果MITは僅かな指示でロボットが自律的に行動できるソフトを開発できたのだ。
国防予算を集中投下してヒューマノイド開発を推し進めるアメリカ。
一方日本を目標に研究開発を進めてきたのが韓国だ。
15年前日本のアシモに刺激を受け開発に着手した大学カイスト。
今回大学と企業からロボット研究者を集めた特別チームを編成し大会に挑んだ。
カイストはこの大会に特化したヒューマノイドヒューボを開発していた。
2足歩行と車輪を併用。
転倒を避け素早く移動する事で次々と課題をクリアしていった。
世界の技術の追い上げは想像を超えるスピードで進んでいた。
コース上にはついに日本の産総研が誇るHRP−2が姿を現した。
車の運転は難なくこなしてまずは1点。
いよいよ建物へ進入する。
体を横にしてすり抜けた。
ところが電波が妨害される建物に入ると作業の遅れが目立ち始めた。
実はHRP−2は大会前からロボットの自律性に課題を抱えていた。
1段行きま〜す。
大会が目前に迫った5月下旬。
アメリカに乗り込んで調整を続けていた産総研のチームは壁にぶち当たっていた。
人間の指示にロボットが全く反応しなくなる事態が頻発。
HRP−2が1つの作業を行うためには人間からのいくつもの指示が必要だ。
例えばバルブを回すには42の手順があり手を差し込め回せなど複数の指示がなければ行動できない。
更に空間認識にも手間がかかる。
行動する度に頭からレーザーを照射して空間を認識するため時間がかかるのだ。
大きな弱点を抱えながらロボットと人間の連携をいかにスムーズに行うか。
ギリギリまで調整が続いていた。
アメリカ政府が後押しするMITのヘリオスはコースの終盤がれきの課題に挑戦していた。
ところがチームの人間はモニターを監視するだけで細かな指示は与えていない。
ヘリオスはカメラとレーザーを使ってがれきの配置を把握し自ら最適な道筋を選んで歩いていた。
危なげなくがれきの上を歩ききった。
一方産総研のHRP−2もがれきの前までやって来た。
一歩一歩がれきをレーザーで認識し慎重に歩みを進める。
一歩進んではまた確認。
残り時間はあと8分。
間に合うか。
最後の一歩。
ロボットが地面の高さを僅か4センチ見誤った事による転倒だった。
産総研はここでタイムアップ。
全ての課題をこなせずリタイアし結果は5点。
10位で大会を終えた。
MITは最後の階段もクリアし7点。
日本勢を上回る6位だった。
ほかにもアメリカは2チームが8点満点をたたき出す圧倒的な強さを見せた。
その上を行ったのが大会に特化したロボットで挑んだ韓国の大学カイスト。
2位のチームより6分もはやくゴールし優勝。
2億5,000万円の賞金を手にした。
アメリカは大会の成果を更なる開発につなげヒューマノイドの実用化を推し進める計画だ。
大会から1か月後。
産総研では敗因の分析を進めていた。
日本のロボット技術の弱点をあらわにした今回の世界大会。
復活の鍵を握るのはロボットの頭脳である認識技術をいかに高めるかだ。
ロボット大国のプライドに懸けて再起への模索が始まっていた。
かつて夢物語といわれた人間型ロボットヒューマノイド。
初めて行われた世界大会はその実用化が夢ではない事を示した。
世界中が開発にしのぎを削る今あなたの目の前にヒューマノイドが現れる日は確実に近づいている。
2015/10/15(木) 00:10〜00:39
NHK総合1・神戸
NEXT 未来のために「密着ヒューマノイド世界大会」[字]

この夏、人間型ロボット「ヒューマノイド」の技術を競い合う世界大会がアメリカで開催された。ロボットの未来を占う大会に挑んだ、「ロボット大国」日本の戦いに密着した。

詳細情報
番組内容
この夏、人間型ロボット「ヒューマノイド」の技術を競い合う世界大会がアメリカで行われた。参加したのは、日本をはじめ6つの国と地域の23チーム。人が近づけない災害現場を想定したさまざまな課題に挑んだ。ばく大な国防予算を背景に驚異的な進化を遂げるアメリカや、日本を目標に研究を重ね急速に力を付けてきた韓国を前に、「ロボット大国」日本はどのように戦ったのか。世界の技術と頭脳が激突した頂上決戦に密着した。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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