クローズアップ現代「ヨーロッパ激震 押し寄せる難民」 2015.10.13


フェンスをくぐり抜け国境を越える人々。
今、押し寄せる大勢の難民がヨーロッパ社会を揺るがしています。
シリアなどから命懸けでヨーロッパを目指す難民や移民たち。
その数は、ことしすでに60万人に上ります。
一部の国では、国境を閉じ激しい衝突が起こる異例の事態に。
一方、人道主義の観点から受け入れに寛容なドイツ。
増え続ける難民をどこまで支えられるのか。
ドイツも理想と現実のはざまで苦悩しています。
深刻さを増す難民問題にどう向き合っていくのか。
現地からの最新報告です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
ヨーロッパを揺るがしている難民の問題。
特に多いのが内戦で命の危険から住み慣れた家を離れ生活の糧を失って家族とともにさまようシリアの人々です。
4年半にわたるシリアの紛争で人口の半数の1100万人もの人々が家を追われたと見られています。
このうち、野外での生活あるいは、武装勢力に包囲され支援が届きにくい地域での生活など、シリア国内で避難生活を続けていると見られる人々は760万人。
過激派組織IS・イスラミックステートが勢力を拡大するなど状況の改善が見られない中で国外に逃れる人は後を絶たず400万人を超えています。
難民となった人々の多くは周辺諸国にいます。
200万人を受け入れているトルコ人口450万人のレバノンはすでに100万人を超える人々を受け入れています。
十分な支援を受けられず先の見えない避難生活を続けている人々。
一方で、難民が増え続ける中地域の不安定化が懸念される事態です。
こうした中シリアへの帰還を諦めヨーロッパを目指す人が急増しこの4年余りで50万人がヨーロッパに流入しています。
ヨーロッパへのルートは主にトルコから船でギリシャに渡り陸路でハンガリーなどを経てドイツなどを目指します。
シリアからドイツまでは2000キロを優に超える道のりです。
家を追われ命を懸けて逃れてきた人々とどう向き合うのか。
国境のない共同体を目指す高い理想を掲げてきたヨーロッパは今、押し寄せる難民の受け入れを巡って大きく揺れています。
EUの玄関口、ハンガリー。
この夏、セルビアとの国境に巨大なフェンスが設置されました。
全長は175キロに及びます。
多い日には、1万人にも上る難民や移民を押しとどめようと政府が国境管理の強化に踏み切りました。
それでもドイツなどを目指す難民たちは次々と警備をかいくぐって入国します。
国境沿いの自治体では24時間態勢でパトロールを実施しています。
難民の流入を加速させるきっかけとなったのがドイツが打ち出した難民受け入れの方針です。
しかし、ハンガリーはこれに強く反発。
押し寄せる難民に翻弄され財政的負担も強いられてきたハンガリー。
ドイツが難民を受け入れるといってもヨーロッパの協定では域内を国境審査なしで行き来できるためヨーロッパ全体に影響を及ぼすと懸念しているのです。
ハンガリー西部の村、ザカニー。
人口1000人余りの村に連日、その2倍を超える難民が押し寄せています。
難民たちはこの村から列車に乗ってドイツを目指します。
この村で議員を務めるクリスティナ・ペレさんです。
今、村人たちからは不安の声が相次いで寄せられています。
異なる文化や宗教を持つ難民たちが、ヨーロッパで増え続けるのではないか。
懸念は募る一方です。
一方、難民の受け入れに寛容な姿勢を示したドイツ。
先月だけで16万人を超す難民や移民がやって来ました。
政府は先月、受け入れ対策に8000億円を追加すると表明。
住居を確保するため空き家などのリフォームが急ピッチで進められています。
シリアから逃れ難民認定を受けたイマドディンさん、41歳です。
妻と3人の子どもと共に提供された住宅に暮らし毎月一家で20万円の生活費を支給されています。
ドイツはなぜこれほど手厚い支援を行うのか。
主婦のエベリーナ・シコーラさん。
ボランティアでシリアの子どもたちにドイツ語を教えています。
シコーラさんは、難民の支援は苦い過去を持つドイツの義務だと考えています。
ナチス・ドイツ時代にユダヤ人などを迫害し大勢の難民を生み出したドイツ。
シコーラさんたちの世代はその歴史を子どものころから学んできました。
これほど多くの難民が押し寄せている事態に戸惑いはありますが歴史の教訓からこの問題に取り組まなければならないと考えています。
しかし、難民が流入し続ける現実を前にドイツ国民の受け止め方にも変化が表れ始めています。
ドイツに流入した難民の2割以上を受け入れている西部の州です。
避難生活が長期化する中で体調を崩す人が続出。
医療ニーズも急増しています。
ボランティアで診療に当たる医師たちからは悲鳴が上がっています。
ドイツの世論調査で難民の流入について尋ねたところ不安と答えた人は先月の発表では38%でしたが今月は51%と半数を超えました。
こうした世論を背景に慎重な対応を求める声も上がり始めています。
今夜は、ヨーロッパに流入する難民の取材を続けています、ブリュッセルの長尾支局長と中継がつながっています。
長尾さん、メルケル首相が示した、その難民に対する寛容な姿勢に対して、ドイツ国民は高く支持しているということですけれども、そのドイツでさえも、慎重な声が出始めている。
ドイツとしては、どのように今後、対応していくことになるのでしょうか?
ドイツは過去の反省から、紛争地などで迫害を受けた難民の保護を、憲法にまで盛り込んでいます。
受け入れの方針は揺るぎないものです。
しかし予想を上回る規模の難民に、受け入れが追いつかないのも事実です。
このため、これまではなかった国境での検問を導入しました。
これは異例の措置です。
なんとか秩序立った受け入れをしようと苦労しています。
一方、ドイツに到着した難民は、各州に振り分けられますけれども、自治体からは悲鳴が上がっています。
反イスラムを掲げ、受け入れの制限を主張する勢力を勢いづかせることも懸念されていまして、与党内では、メルケル首相の政策を批判する声も出始めました。
それだけに、ヨーロッパ各国に対し、国力に応じた分担をしてもらいたいという姿勢を強めています。
ドイツ一国では、とても対応しきれないということで今、国の力に応じた分担をしていくということですけれども、しかし今のリポートにありましたように、ハンガリーのように、受け入れに否定的な国もあります。
ヨーロッパが人道主義に基づいて、協力しながら対応して、人道主義を貫いていくことはできるのでしょうか?
これまで、難民は最初に到着した国が受け入れの責任を負うというのが、原則だったんですけれども、空前の規模となりました今回、EUは難民を各国に割りふる措置を初めて導入しました。
難民の到着地であるイタリアやギリシャを除き、向こう2年間で合わせて16万人の難民を、各国の人口や経済規模に応じて、受け入れさせます。
これに対して、ハンガリーなど中部や東部ヨーロッパの国が、押しつけはおかしいと、猛反発しました。
国境に壁を作ったり、国境審査を復活させる動きに出たりして、行き場を失った難民が国境をさまよう事態まで生じました。
もめにもめた末の16万人の受け入れですが、ヨーロッパにたどりつく難民は、ことし、70万人に達する可能性もありまして、全く足りません。
難民の問題は、人道主義や寛容さを掲げてきたヨーロッパに、この理念を実践することの難しさを突きつけています。
ブリュッセルの長尾支局長でした。
お伝えしていますように、シリア周辺の国々には、400万人もの難民がいます。
難民が増え続けている中で、支援はといいますと、先細りしています。
生活の糧を奪われた人々は不安を募らせています。
レバノン東部の難民キャンプです。
隣国シリアから逃れた600人が暮らしています。
去年2月家族でシリアから逃れてきたアミラ・アバザさん。
6人の子どもを育てています。
内戦前は、市場で野菜を売る夫とつましいながらも不自由のない暮らしをしていました。
その夫はレバノンに到着した3日後心労のため、心臓発作で亡くなりました。
アミラさん一家は今国連からの支援金を頼りに暮らしています。
月額3万6000円を支給されていましたがこの夏、8000円に減らされ1日2食しかとることができなくなりました。
内戦が長期化する中国際的な支援も先細りになっています。
難民の数が増え支援に必要な資金が膨れ上がるのに対し国際社会から寄せられる金額はこの2年間、伸び悩んでいます。
WFP・世界食糧計画は先月シリア周辺国に逃れた難民36万人分の食料支援を打ち切らざるをえませんでした。
民間の支援事業も存続の危機にひんしています。
このNGOは医療支援を行ってきましたが無料での診療ができなくなり難民はほとんど来られなくなりました。
さらに、子どもたちに教育の機会を提供しようと運営してきた学校も閉鎖を余儀なくされました。
支援が縮小する現実。
キャンプで暮らすアミラさんは絶望感を募らせています。
周辺国ではあまりの難民の多さにキャンプの数も足りていません。
キャンプに入れない難民には一層支援が届きにくいうえ働くことも法律で制限されているため厳しい生活を強いられています。
通りでは物乞いをする難民やその子どもの姿が数多く見られます。
内戦で父親と長男を失い2年前、家族6人で逃れてきたハシム・イブラヒムさんです。
イスラム教の数珠を売りなんとか生活の糧を得ています。
ヨーロッパに行く余裕もなくシリアに戻ることもできず八方塞がりの状況だといいます。
今夜のゲストは、難民政策にお詳しい、NPO法人難民を助ける会理事長の長有紀枝さんです。
実際、難民を助ける会では、最も多くの難民を受け入れているトルコで、支援も行っていらっしゃるということですけれども、ことばを聞いていますと、八方塞がりで、しかも支援がどんどん減っている。
厳しい状況ですね。
今の映像にも、国に帰るしかないと。
国に帰るって、普通の難民問題であれば、何か問題が解決して帰れるような雰囲気があるかと思うんですが、シリアに関しては、私たちがたぶん想像する以上に、シリアの中って、混乱を極めていて、そこで生き残れる可能性のほうが少ないのに、それでも帰るってことばを出さざるをえないっていう状況に、今の本当に、今世紀最大の人道危機といわれる状況を感じます。
キャンプに入っている人々って、どれぐらいいるんですか?
トルコでは10%、14%ぐらいというふうにいわれています。
当然、トルコ政府も最大限の努力はされているんですが、当然、入りきれなくて、それ以外の方たちは、先ほどイスタンブールで、都会でしたけれども、もっと田舎に、例えば国境沿いに本当に多くの方がおられます。
私たちが支援している地域でも、50万人の方たちがいるというふうにいわれています。
そうすると、収入がない中で、どういう生活をしてるんですか?
基本的には、貯金を切り崩しているのですけれども、別に路上にいるというよりは、本当に何世帯かで、1世帯でお部屋を1つ借りられるわけではなくて、何世帯かで共同で、おうちなりお部屋を借りて、私もそういうお宅、訪問しましたが、なんにもないんですね。
もうがらんどうの中に、家具も何もなく、本当に薄っぺらな毛布があるだけで、そこが寝床であり、生活空間であり、唯一の持ち物というのは、プラスチックの食器だけというような状況で、働ける場合もあるんですが、多くは肉体労働で、それも毎日、お仕事があるわけではないと。
とてもそれで食べていけるような状況ではない中で、なけなしの貯金を切り崩して、でも本当に、お金がなくなったら、しょうがないから国に、国といっても、もう家もどうなってるか分からないけれども、帰るしかないと。
そして、まだ蓄えのある人は、ヨーロッパに行ってしまおうという決断をされる方もいらっしゃると思うんですけれども、なぜこれほどまでに、支援というのが先細りしてるんですか?
一つにはやはりもう、4年、5年という時間が続いて、援助国のほうも援助疲れというのは当然、あると思います。
それプラス、シリア国内ですと、援助があったとしても、届けられないというような、それは危険なので、届けられないというような事態、状況も続いているかと思います。
そうすると、世界が支援はしてきましたけれども、いろんな内戦が起きたり、いろんな災害が起きる中で、なかなかシリアには目が向かない。
ご承知のようにアフガニスタンも、スーダンも今、世界中で紛争があって、それぞれに支援が必要で、さらには自然災害もあって、そういったところにも、やはり先進国の、お財布は限られているわけですから、先進国の経済だって、それほど順調なわけではないとなると、そもそもお金が足りないという状況ですね。
でも子どもたちが教育の機会を奪われるということは、一番、心が痛みますねぇ。
たぶんヨーロッパに逃げられた方たちというのは、教育もそちらで受けて、でも将来、国が安定したときに帰ってくるかどうか、分からないと。
もし国が安定したときに、その再建を担うのは、たぶん今、近隣諸国にいる子どもたち。
でもその子どもたちが、今、おっしゃられたように、教育をほとんど受けられないという状況ですと、ますますシリアの将来が危うくなっていくと思います。
外に出てきている人の姿は見えますけれども、760万人の方々が、国内で避難民となっていると見られている。
どういう人々ですか?
映像をご覧になっても、ヨーロッパに逃れていた方、男性だけの集団であったり、あるいはご家族であっても、必ず男性がいて、一家を引っ張っていけている方、他方で、そのご主人が亡くなっているとか、女、子どもだけの世帯とか、女性だけとか、あるいはお年寄りとかけがをしている、病気だ、そういう方たちは、ほとんど動けないわけですね。
よくて、国境地帯まで。
そういう本来、難民と呼ばれる一番苦しい方たちが、身動きできずに援助も届かずにいるというような状況だと思います。
シリアの内戦の収束の見通しは、全く立たず、むしろ状況も悪化しているんではないかと思えるんですけれども、そうした中で、これだけ多くの人たちが、周辺諸国にいる。
どういう気持ちで、この事態に向き合えばいいんでしょうか?
実は私たちにとって、もしかしたらひと事じゃないんじゃないかと思うんですね。
日本自体が紛争地になるということは、ないかもしれないけれども、大きな自然災害とか、津波とかで、日本の多くの人たちが日本にいられなくなって、海外に難民になるなんていう状況があるかもしれない。
そういったときのことを思い浮かべたら、あすはわが身と思ったら、おのずと、すべきことっていうのは、実は見えてくるんじゃないかという気もします。
2015/10/13(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「ヨーロッパ激震 押し寄せる難民」[字]

中東などから押し寄せる難民をめぐって揺れる欧州。シリアの周辺国では資金不足で援助が減らされるなど危機は深まっている。最大の人道危機にどう向き合うべきか。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】立教大学教授、難民を助ける会理事長…長有紀枝,ブリュッセル支局支局長…長尾香里,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】立教大学教授、難民を助ける会理事長…長有紀枝,ブリュッセル支局支局長…長尾香里,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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