(柘植瑛子)すいません。
あの…二日前東都芸術大学の詩の朗読会で亡くなった安原さんのことなんですけど…。
(受付)は…?警察は自殺って発表しましたけどおかしいと思うんです。
(受付)は?安原さんは自殺なんてしません!担当された刑事さんたちに会わせてもらえませんか?
(受付)お名前は?あ…柘植瑛子です。
あなたたち…現場にいた刑事さん!お願いしますもう一度…!
(伊丹憲一)落ち着いてください。
あれは自殺だと…。
安原君は自殺なんてしません!ちゃんと調べてください!
(芹沢慶二)状況から見て他殺の可能性はないと判断したんです。
どうぞお引き取りください。
書きますよ?…何を?私出版社の人間です。
警察の対応のずさんさを書きます。
これは警部殿!
(杉下右京)おはようございます。
どうぞこちらへ!この方警部さんですから。
警部?杉下です。
(伊丹)私どもより上の人間です。
これより杉下があなたの話を懇切丁寧にお訊きします。
では失礼!
(三浦信輔)では警部殿あとはよろしくお願いします。
ちわっす!アールグレイのベルガモットオレンジは心を落ち着かせます。
どうぞ。
あ…。
あの…。
時創舎っていう小さな出版社で編集アシスタントをやっています柘植瑛子です。
亡くなった安原慎一さんとのご関係は?私の初めての担当作家さんでした。
そうですか。
城戸幸四郎ってご存じですか?日本を代表する詩人の一人と認識していますが。
ええそうです。
どうぞ。
城戸先生は詩人としての活動の他東都芸術大学で准教授として詩を教えてるんです。
安原君はそのゼミの学生でランボーの再来と言われるほどの才能の持ち主でした。
これ見てください!「詩壇の救世主」ですか。
詩集はなかなか売れないし親しんでもらいにくい。
でも安原君は飛び抜けた才能に加えアイドル並みのルックスも備えています。
彼の存在が詩を広める起爆剤になるかもしれない。
詩壇はそんな期待をしてました。
こちらは?詩壇の重鎮五十嵐孝介です。
五十嵐先生は彼を自宅に引き取ってまで世界に通用する詩人に育てようとしていたんです。
安原さんが亡くなったときの状況を順を追って話して頂けますか?
(瑛子の声)その日は城戸幸四郎ゼミの学生たちによる卒業朗読会でした。
大丈夫?
(安原慎一)僕はこれで…詩の世界を変えてみせる。
少しも怖くない。
自信満々なんだ。
(堀江恵一)その詩は最後のページに入れるからね。
(瑛子の声)安原君は来月うちの出版社から初めての詩集を出すことになってました。
「学生時代に編んだすべての作品を入れる」。
それが作品のコンセプトでした。
それで私と社長の堀江とで安原君の学生最後の作品を見に行ったんです。
見に?あっ…詩の朗読会はただ詩を詠むだけじゃなくてテーマに合わせた演出がされます。
演劇みたいなものです。
(有吉)「水の中に沈んだ」
(水の流れる音)
(拍手)
(瑛子の声)この日のテーマは「水」でした。
水をイメージしたテープが敷きつめられその中央で詩を発表するんです。
どうしたんでしょう…。
(堀江)きっと…別のいい詩が生まれたんだ。
詠むぞ!どうしたら…?しっかり書き留めて!はい!『水に書いた物語』
(安原)「祈りとともに吐く息は…」
(観客のどよめき)「静かに舞い上がった」「それは…闇にたなびく天の川となる」
(観客のどよめき)ええっ?停電?停電か。
あっなんだよあの煙!「私はこの名を水に書こう」うっ!ぐはっ…。
ぐっ…!
(観客の悲鳴)
(瑛子の声)紙コップの水に毒が入っていたそうなんです。
でも警察は事前に誰かが毒を入れた形跡なんてなかったって。
安原君が自分で入れたとしか考えられないって。
朗読の際に暗転があったとおっしゃいましたね。
ええ。
演出プランにあったというんですが…。
でも安原君ちょっと様子が変だったんです。
だから私言ったんです。
(瑛子)暗転の間に誰かが毒を入れたんですよ!暗転といっても十数秒です。
その間に…あの紙コップに毒を入れて席に戻る。
不可能です。
できるかもしれないじゃないですか!先輩。
五十嵐孝介先生の話だと安原慎一さんは最近詩を作るのにひどく悩んでいたようです。
やっぱ自殺か…。
(瑛子)そんなの嘘です!
(堀江)瑛子ちゃん!彼が詩作に悩んでいたなんて…信じられません。
ひとつよろしいでしょうか?安原さんは巻物を掲げて…。
僕はこれで…詩の世界を変えてみせる。
それだけの自信作だったんだと思います。
しかし…。
巻物を開いたときの安原さんの様子が変だったとあなたは感じた。
(瑛子)ええ。
なんだか動揺した様子でした。
つまり自信があったのが一転して動揺したわけですね。
(米沢守)現場に残されていたものはすべてあるはずです。
どうもありがとう。
(米沢)白紙ですね。
ええ。
捜査一課も自殺と断定したようですが…。
何か気になることでも?いや…これなんですが…。
蓄光テープですねぇ。
(米沢)ええ。
明るいときに太陽や蛍光灯の光のエネルギーを蓄えておき暗くなると発光するテープです。
紙吹雪の中にいくつかこのテープが張られてました。
舞台では暗転のときに役者さんが出入りする目印に使われると聞きます。
あのようなホールですからねぇ蓄光テープが張られていても特別不自然とも思いませんが。
捜査一課も前の舞台で使われたものが残っていたんだろうという見解でした。
しかしこれを見てください。
舞台上の机の下から客席に向かってテープが張られています。
このテープを張った人物だったらこの紙コップの位置さえ覚えておけば暗闇でも毒を入れることは可能なのではないかと。
安原さんの担当編集者…。
柘植瑛子です。
どうも。
では…早速。
お願いします。
(照明係)はい!米沢さん。
(米沢)1234567…。
もう結構ですよ!
(照明係)はい。
杉下さん…これで証明できましたよね!暗転中に毒を入れることは可能。
そうですよね?確かに可能ですね。
しかし若干足音が気になりますな。
誰かに気づかれたのでは?暗転のときにそこにあったスモークマシンから煙が出たんです。
火事だと勘違いした人もいて場内はかなりざわついてました。
だから気づかれなかったとしても不思議じゃないです。
なるほど。
毒を入れた人物が自分の動きを悟られないようにその騒ぎも仕組んだとすれば…。
きっとそうですよ!これは殺人です!毒を入れることができる可能性があるのはこの辺りに座ってた方。
どなたが座っていらっしゃったかおわかりですか?五十嵐孝介先生と…城戸幸四郎先生です。
うん。
(有吉)でも…最近特に変でした。
変とは?約束は平気で破るし急に怒ったり泣いたり…。
今回の朗読会安原さんは紙に書いた詩を詠み上げたそうですねぇ。
(城戸幸四郎)巻物状の和紙に朗読用の詩を書いてそれを詠み上げていました。
しかし安原さんの巻物は白紙でした。
暗記をしていたんでしょう。
だとするとなぜ安原さんは白紙の巻物を開いたのでしょう?さあ…そこまでは。
(瑛子)あ…杉下さん!社長。
安原君のことを調べてもらってる警視庁の杉下さんです。
杉下と申します。
堀江です。
安原さんの作品ですか?ええ。
最後の作品になってしまいましたが。
拝見してもよろしいですか?どうぞ。
(堀江)天才詩人の名にふさわしい詩です。
そんな彼の作品を世に送りだすのが私たちにできる供養です。
社長!安原君やっぱり殺されたんですよ。
五十嵐先生か城戸先生なら毒を入れられるんです。
めったなことを言うんじゃない!五十嵐先生ですが安原さんを自宅に住まわせていたそうですねぇ。
ええ。
安原君の後見人でしたから。
五十嵐先生はもうじき文化勲章を受けるらしいです。
僕は彼は自殺だと思う。
社長までそんな…。
安原君が詩作を始めるきっかけになった女流詩人が7年前に自殺してるんだ。
今回の彼の死はそのときとそっくりなんだ。
7年前に自殺を?ええ。
梅津朋美という詩人です。
彼女も朗読会の席で毒を飲んで。
よろしければ詳しくお聞かせ願えませんか?
(堀江)私が話したということは内密にして頂けますか?もちろんです。
7年前梅津朋美は詩壇の賞を総なめにして「天才詩人」の名をほしいままにしていました。
大手出版社想文社からの出版も決まりまさに詩人として羽ばたこうとしていたときでした。
(編集長)君ひどいね。
この詩…。
これは3か月前に五十嵐孝介が朗読会で発表したものとそっくりじゃないか!
(梅津朋美)盗作なんてしてません!
(編集長)じゃああちらの大先生が新人の君の詩を盗んだというのかい?
(朋美)でもこれは…私の言葉なんです。
まあとにかく…もう君の詩集は出版できないから。
(堀江)五十嵐先生が詩壇の重鎮だったことからトラブルを避けたい出版社は朋美さんが盗作をしたと一方的に決めつけた。
朋美さんは盗作詩人のレッテルを張られてしまった。
そして…。
詩の神様に誓います。
私は…。
盗んでません。
(堀江)朋美さんは最後まで潔白を主張し朗読会の席で自殺をしました。
痛ましいことですねぇ…。
安原さんが詩作を始めるきっかけになったのは亡くなられた梅津朋美さんだったと先ほどおっしゃっていたのは…。
安原君は両親を早くに亡くしとある教会に併設された児童施設で育ったんです。
その教会のシスターがある一編の詩を彼に詠ませた。
その詩が朋美さんの詩だったんです。
どのような詩だったのでしょう。
「生きることは暗闇を迷うこと」「だけどそれは光がある場所へたどり着くための道」あっそれ安原君から聞いたことあります。
安原君はその詩に感動し朋美さんに手紙を書いたそうです。
安原君の悩みを知った朋美さんは彼に詩を書くことを勧めました。
つまり梅津朋美さんは安原さんを詩の世界に導いた恩人だったわけですねぇ。
安原さんは梅津朋美さんがどのような亡くなり方をしたのかご存じだったのでしょうか?知っていたのかもしれません。
それで同じような方法で…。
五十嵐先生は安原さんの後見人でいらっしゃいました。
(五十嵐孝介)才能のある芸術家は誰かが支援しなければなりません。
ご自宅の一室に住まわせて詩人として育てる。
なかなかできることではありません。
本当に自殺が残念でならない…。
正直…まだ信じられません。
安原君の部屋です。
これは…?安原君はいつも…メモと鉛筆を持って考えていました。
(雨と雷の音)
(五十嵐)彼は朗読会のテーマ「水」のための詩を生み出すのに苦しんでいました。
なかなかわかってもらえないと思いますが詩人にとって言葉が生まれないことがどれほど苦しいことか…。
(落雷の音)「水が乾いていく恐怖」詩には作者の心の叫びが出てしまうものなんです。
聖マリア児童園…。
(五十嵐)彼が育った施設です。
よろしいでしょうか?どうぞ。
ああ!最後にひとつだけ…。
五十嵐先生は7年前に自殺なさった梅津朋美さんをご存じですよねぇ?先生の詩を盗作したとして詩壇から追放された詩人です。
お忘れでしょうか?なぜ…今更そんなことを?安原さんも同じような形の自殺を選びました。
偶然でしょうか?盗作を訴えたのは私ではありませんよ。
あれは周りが勝手に騒いだんです。
そうでしたか。
どうもありがとうございました。
(店員)いらっしゃいませ!お待たせしました。
お忙しいところすみませんね。
いえ…。
(瑛子)こちらが安原君の詩集のゲラのコピーです。
追加原稿も入れてデータアップ完了。
あとは印刷所に入れるだけです。
楽しみですねぇ。
ところで追加原稿というのは?安原君が朗読会で詠んだ作品です。
学生時代に編んだすべての作品をまとめるコンセプトですから。
すべての作品を入れてあげなくちゃって思って。
あっブレンドを。
(店員)かしこまりました。
あなたが書き留めていなかったら幻の作品になるところでしたね。
よかったです。
彼の最後の言葉をちゃんと残せて。
これです。
『水に書いた物語』「祈りとともに吐く息は静かに舞い上がった」「それは…闇にたなびく天の川となる」「私はこの名を水に書こう」安原さんはこの詩で何かを訴えたかったのかもしれませんねぇ。
私もそれをずっと考えてました。
社長は安原君が即興の詩を思いついたんだって言ってましたけどでもあのときの安原君…新しい詩を思いついたような顔じゃなかったんです。
なんというか…どこか不安げで。
きっと巻物に書いた詩を思い出していたんです。
つまり巻物を何者かが白紙にすり替えたと?だとすると事前に詩の内容を把握できる人は限られています。
城戸先生ゼミの学生たち…。
一緒に住んでた五十嵐先生だって。
しかし城戸先生はご存じなかったとおっしゃってましたよ。
嘘をついてる可能性もあるんじゃないですか?確かに。
ところで瑛子さんに入手して頂きたいものがあるのですが。
(城戸)学生たちからもう聞いたのでしょう?仲が良いとはいえませんでした。
そのようですねぇ。
安原さんは城戸先生をかなり厳しく非難されていたと聞きました。
詩を書けない詩人など詩人とはいえないんですよ先生。
(城戸)私は…詩を書けないわけじゃありませんが…。
皆さんおっしゃってました。
城戸先生がひとたび詩作を始めれば安原さんに勝るとも劣らぬ素晴らしいものを生み出す…と。
学生さんからお借りしました。
先生は学生の詩を添削されるときにいつもこのように三角に切ったテープをお使いになるそうですねぇ。
学生たちの中には木の板に詩を書く者もいます。
まあテープであれば何に詩が書かれていても添削可能ですから。
三角にするのはなぜ?ちょっと…。
このように張れば矢印の代わりになります。
なるほど…!う〜ん…。
梅津朋美さんの原稿ですね。
ええ。
盗作が疑われたという詩は…。
あっええ…。
あっこれですよ。
『水に書いた物語』『水に書いた物語』…。
安原さんが最後に作った詩のタイトルと同じですね。
ええ…確かに似てるなあ。
杉下さん…。
これ!印刷所をしらみつぶしにあたって7年前の朗読会の記事を調べました。
よく見つけられましたね。
(瑛子)「祈りとともに吐く息は静かに舞い上がった」「祈りとともに吐く息は静かに舞い上がった」
(瑛子)「それは闇にたなびく天の川となる」「それは闇にたなびく天の川となる」まったく同じです…!
(瑛子)安原君は7年前に朋美さんが盗作したとされる五十嵐先生の詩を詠んでたんですね。
しかも五十嵐先生の目の前で…。
やっぱりこれ…なんかのメッセージですよ。
安原さんは朗読会の前にあなたにこうおっしゃったんですよねぇ。
僕はこれで詩の世界を変えてみせる。
何かを告発したかった…。
そもそもなぜ安原さんは梅津朋美さんに因縁のある五十嵐先生の自宅に住もうとしたのでしょうねぇ。
7年前の真相を突き止めるためだとしたら…。
はい?こんな話を朋美さんとしたことがあるんです。
(堀江)『少女と毒薬』?少女が大人になり毒薬を手にしいつでも死ねるという状況になる。
それが少女に生きる力を与えていく。
そういう心の動きを『少女と毒薬』で表現したいんです。
(堀江)へえ…おもしろそう!作品ノートにまとめてあるのであとは和紙に清書するだけ。
完成したら読んでくださいね。
(堀江)「作品ノートにまとめてある」確かにそう言っていたんです。
ですが彼女の死後いくら捜してもそのノートは出てこなかった。
誰かが朋美さんのノートを盗んだってことですよね。
安原君は五十嵐先生だと思った。
それでノートを見つけるために五十嵐先生の家に下宿したんですよ。
なるほど…。
もしそのノートに五十嵐先生の詠んだ『水に書いた物語』が書かれていたら…盗作したのは五十嵐先生の方ということになりますね。
(携帯電話)杉下です。
例の詩人の服毒死の件ですが使用された薬物をたどっていきましたらインターネットの闇ルートが引っかかりました。
(米沢)「その取引記録の中に思わぬ人物がいました」思わぬ人物とは?城戸幸四郎です。
城戸の教授室のパソコンからのアクセスが確認できました。
偽名での購入でしたが届け先は城戸の准教授室でした。
『少女と毒薬』『砂漠と折り紙』…。
城戸さんあなた特徴的な癖がありますよね。
(伊丹)このテープ張ったの…あなたですよね?違う…私じゃない。
ちょっと失礼。
開いてたもので…。
なんですか!?こんな大勢で…。
(三浦)警部殿今取り込み中…。
っていうかどうしたんですか?申し訳ありません。
捜し物をしていまして。
警部殿…!毒の件はこちらに任せてもらえませんか!?もちろん毒の件はお任せします。
城戸先生。
実はあるノートを捜していましてねぇ。
ノート捜させて頂いても構いませんか?ノートって…なんのことですか?どうぞ。
ではお部屋を拝見させて頂きます。
あっ…。
ちょっちょっちょ…警部殿!警部殿〜。
こちらの部屋も…。
寝室。
…どうぞ!ああ…ちょっと煙草を…。
(城戸)ああ…!!あっ。
そのノート。
僕が捜していたノートのようですねぇ。
これが何かはあなたが一番ご存じのはずですねぇ。
ああ…。
『少女と毒薬』『少女と毒薬』「母の手にあるその毒薬で私は眠る」「母の手にあるその毒薬で私は眠る」同じですねぇレイアウトも…。
あのーどういうことですか?五十嵐孝介氏が7年前に朗読会で詠んだ詩。
そしてこの7年の間にあなたが発表した詩。
それらのほとんどがこの作品ノートから引用されています。
このノートは盗作の疑いをかけられ潔白を訴えながら無念の死を遂げた梅津朋美さんの作品ノートです。
説明して頂けますね?7年前…私は東都芸大の講師として働いていました。
私が先生の詩を…?あさってまでに…一編頼む。
ですが…。
そろそろ君を助教授に…と考えている。
(城戸)「言葉をくれ」そんなことを平気で言える五十嵐孝介には失望しました。
しかし五十嵐は詩壇の重鎮です。
逆らえば詩人としての道は閉ざされてしまう。
だったらなんであんたが作った詩を渡さなかった?詩人にとって言葉は命です。
それを渡すのにはどうしても抵抗がありました。
それでつい…。
(朋美)母の手にあるその毒薬で私は…溺れる。
これだ…!!
(風の音)
(城戸)若いからちやほやされているだけだ…。
ノートを見るまではそう思っていました。
(城戸)心がふるえました。
負けた!と思いました。
彼女こそが天才詩人だと。
そしてその詩を五十嵐孝介氏に渡した。
盗作騒動になれば梅津朋美が負けるのはわかっていました。
そうなれば彼女は詩壇から追放される…。
(ため息)でも!まさか自殺をするなんて…。
ひとつよろしいですか?盗作の証拠となる梅津朋美さんの作品ノートをあなたはなぜずっと持っていたのでしょう。
何度も何度も捨てようと思いました。
でもどうしても捨てられなかった…。
ノートに残された言葉から詩を作っている限り私は「日本を代表する詩人」でいられた。
でも…喜びは一瞬。
あとは地獄の苦しみ…。
自分の才能のなさを思い知り…苦しくて…。
あなたの卑劣な行動で二人の若い詩人が命を縮めることになりました。
あなたは二人の苦しみを…考えませんでしたか!?城戸先生は学校を辞め詩壇からも離れるそうです。
城戸が彼女の詩を盗んだとは…知らなかったんだ…。
あなたの文化勲章内定にも傷がついてしまいましたね。
詩人としての名声もこれまで…ということになりますね。
先生にお借りしたいものがあるのですが…。
このようなところまでお呼び立てして申し訳ありません。
いえ…。
ちょうど見本本ができましたのでお渡ししようと思っていたところでした。
どうぞ。
ああ…現場を再現して頂きました。
はあ…。
聞きたいことがあるんですよね?まずご報告ですが…。
五十嵐先生と城戸先生が7年前の盗作をお認めになりました!あの二人が…認めたんですか!?梅津朋美さんの作品ノートが城戸先生の部屋から見つかったんです…!やっぱり!幻のノートなんかじゃなかったんだ。
安原君はそのために殺されたんですね?気にかかることがひとつありましてね。
あ…はい。
安原さんについてこのような証言がありました。
約束は平気で破るし急に怒ったり泣いたり…。
そして大量の歯ブラシ。
育った施設への行き方を記したメモ。
物忘れがひどくなる。
そのためにメモを多用する。
購入したことを忘れて日用品を大量に買いためる。
これらの症状から推察される病気がひとつあります。
若年性アルツハイマー。
堀江さん…あなたはそのことを知ってましたね?決定的だったのはこのメモです。
「聖マリア児童園」ここは安原さんが育った施設です。
そこへの行き方が詳細に記してあるのはおかしいと思いました。
安原さんは今でもこの施設を度々訪れていました。
そこでシスターからお話を伺ってきました。
慎一君は堀江さんのことを信頼してました。
堀江さんにだけは病気のことを話したそうです。
しかし病気のことと今回の事件は関係ないでしょう?いいえあります。
安原さんは最初から自殺するつもりでした。
ですがただ命を絶つのではなく尊敬する梅津朋美さんの作品ノートから言葉を盗んだ人間に復讐しようとしたんです。
つまり安原さんは「7年前の盗作事件がもとで自分は殺された」警察がそう考えるように仕組んで自殺をしたんです。
そんな…!安原君の自作自演であったという証拠は?白紙の巻物です。
最初に触れたときに違和感がありました。
あなたの会社を訪ねたときにその謎は解けました。
和紙は通常凹凸の少ない方を表にします。
しかし安原さんはそれを逆にして使っていました。
あの白紙の巻物も凹凸の大きい方が表になっていました。
表裏逆に使っていたのは安原さんだけ。
つまりあの白紙の巻物は安原さんご自身が用意したものなんです。
安原さんはご自分が自殺ではなく他殺だと思わせる仕掛けをしその容疑が城戸先生に向くようにしたんです。
まず安原さんは城戸先生のパソコンからインターネットにアクセスし硝酸化合物の毒を入手しました。
蓄光テープを城戸先生の癖である三角形に切って張り…。
そしてあの日暗転のさなか安原さんは自ら…。
(観客のどよめき)毒を…入れました。
(うめき声)
(観客の悲鳴)4年前に城戸先生が刊行した詩集です。
この中にはあなたがいつか話してくれた梅津朋美さんの作品ノートの構想そのままの詩がいくつも載っています。
出版社は時創舎。
あなたの出版社です。
当時あなたは一人ですべてを担当していました。
あなたはこの詩集を手がけたとき城戸先生が7年前の盗作事件に絡んでいること…。
その証拠となる梅津朋美さんの作品ノートを持っていることに気づいたはずです…!ええ…。
しかし問いつめた途端ノートを処分されてしまうかもしれないでしょう?おっしゃるとおり!安原さんはなぜこのような手の込んだことをしたのでしょう。
堂々と告発できるものをあえて城戸先生に疑いが向くように仕掛けた。
あなたのおっしゃるとおり作品ノートを処分されてしまっては立証できなくなってしまいますからねぇ。
あなたの思惑どおりです。
あなたは安原さんが病気を苦に自殺しようとしていることを知ったとき城戸先生が梅津朋美さんの作品ノートを奪いその言葉を五十嵐先生に渡したことを話しました。
7年前の盗作事件の被害者は梅津朋美さんだけではありません。
もう一人いたんです。
担当出版者としてすべての責任を押しつけられ当時いた出版社を退職に追いやられた堀江さん…あなたですよ。
あなたが何をたくらんでいたのかあなたのお持ちになった本がすべてを物語っています。
社長!
(瑛子)私…安原君の最後の作品が朋美さんのものだとわかったときそれを抜くために急いで印刷会社に行ったんです。
まずいんです…最後のページの詩安原君のじゃないんです。
今からでも外せませんか?
(印刷会社社長)これです。
(瑛子)入れたはずの『水に書いた物語』がそこにはありませんでした…。
でも私…変更の電話を…。
ああ〜!ハッハッハッ!そのあとおたくの社長から電話きましてねえ。
「変更なしでそのまま進めてくれ」って。
(瑛子)社長が電話したのはあの詩が安原君のものではないとわかる前でした。
あなたはあの詩が梅津朋美さんの詩であることを知っていたにもかかわらず知らないふりをしました。
なぜそのような嘘をついたのでしょう。
それはあなたが安原さんの抗議の自殺を利用してこの詩集を成功させようとしたからです。
おそらくこの本は詩集としては異例の成功を収めることになるでしょう。
そしてあなたは出版人として高い評価を得同時にかつてあなたの首を切った出版社を見返すことができる…!社長…。
どうして止めなかったんですか!?人の命をなんだと思ってるんですか!?止めても無駄だったんだよ…!どうしても死ぬ気か。
僕の決心は変わらないよ。
(堀江)だったら最後に…朋美さんの名誉を回復してくれないか?あいつらが朋美さんを…!?ああ。
しかも城戸は今も朋美さんのノートを持っていて少しずつ詩を発表している。
今すぐ城戸のところに行って…!待て!騒げばノートを処分されてしまう。
堀江さん。
何かの事件の容疑者になればあいつら真実を話すよね。
(堀江)安原は放っといても自殺したんだ。
だったらその命を少しぐらい役立ててもいいはずじゃないか!安原さんの部屋には梅津朋美さんからの手紙が何通もありました。
安原さんを導く言葉であふれています。
安原さんもまた命がけで詩を作りました。
安原さんが自ら命を絶ったことを肯定するつもりはありません。
しかしそれが彼の詩人としての人生の決着だったのでしょう。
いずれあなたには自殺幇助で捜査がなされると思いますが安原さんの純粋な思い…その死までも利用するなど決して許されることではありません…!!人としてもっとも恥ずべき行為ですよ!安原さんは詩集の印税をすべて教会に寄付する手続きをしていたそうですねぇ。
ええ…。
どうかなさいましたか?社長が安原君と朋美さんの原稿を託していきました。
でも私はまだ…。
「生きることは暗闇を迷うこと」「だけどそれは光がある場所へたどり着くための道」…。
二人の人生を支えた朋美さんの言葉ですね。
二人の若い詩人が生きていた証しを残してあげてください。
それができるのはあなたしかいません。
2015/10/12(月) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒season7[再][字]
警視庁特命係の天才肌・杉下右京(水谷豊)の名推理を軸に展開する新しい刑事ドラマ。
詳細情報
◇番組内容
『天才たちの最期』
右京(水谷豊)は出版社の瑛子(黒川芽以)から詩人・安原(三浦涼介)の自殺の再捜査の依頼を受ける。安原の師である城戸(中島久之)と詩壇の重鎮・五十嵐(西沢利明)に事情を訊くが…。詩壇のタブーに右京が迫る!
◇出演者
水谷豊 黒川芽以 中島久之 三上市朗 西沢利明 三浦涼介 六角精児
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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