HOME > コラム・連載 > 藤原陽祐のfrom inside > from inside 第十九回:身近になっている4Kテレビの、いいところと、ダメなところ(後)
2013年8月11日/藤原陽祐
前回は4Kテレビと相性のいいBD番組を紹介しました。
一方、4K画質の難しさをちょいちょい感じさせるのが、"地デジ"です。水平解像度が4分の3 HD(水平1440×垂直1080)となり、ビットレートも制限されることもあって、動きに伴なう画像のあれが目立ちやすく、ブロックノイズ、モスキートノイズといった画像圧縮に起因するノイズも気になりがちです。
NHK-Gについては、見づらくなるほどの崩れはありませんが、民放のバラエティ、ワイドショー(特に挿入用のビデオ素材)となると、目障りなノイズ、色にじみ、さらに太い輪郭、厚化粧の色使いと、過剰な演出がさらに過剰になって、素材の本質が分からなくなってしまうようなケースも珍しくありません。
 「いいものはもっとよく、悪いものはそれなりに----」、という状況を期待したいところですが、残念ながら、いまのところ4Kテレビの低クォリティの映像へのケアは充分とは言えません。なぜこんなことになるのか。これには色々な原因が考えられますが、2K素材を4K素材に変換する部分、いわゆるアップコンバート処理に起因するところが大きいように思われます。
一世代前の4Kアップコンバーターの場合、単純な拡大処理によって4K映像をつくり出すというスケーラーという概念が少なからず入っていて、どうしても周波数特性の暴れや、輪郭の歪みといった問題が避けられませんでした。ただ最新モデルでは、東芝の4Kレグザにしても、ソニーの4Kブラビアにしても、画素単位でその内容、挙動を把握しながら、2K/4K変換を行なうという超解像処理という技術を採用していて、スケーリングに伴なう副作用は大幅に軽減されています。
その技術、ノウハウはメーカーによって異なりますが、単純な画像の拡大、縮小ではなく、明るさ、彩度、輪郭、動き———などなど、入力された画像情報を色々な見地からこと細かに分析して、1画素のデータを4画素に変換しています。これはひとつ見方を変えると、画面サイズが変わらなければ、それだけ多彩な表現が可能になるということ。
具体的には、ドット・バイ・ドット表示(画素変換なしの表示)に比べて、より微妙な色味が表現できるようになりますし、階調性についても、よりきめ細かく描き分けられるようになります。それだけ絵づくりの自由度に余裕が生まれ、より豊かな表現力を持つ可能性が生まれるというわけです。
アップコンバート技術の進化により、4Kテレビのクォリティは大幅に引き上げられ、リアル4K映像と見まごうような高品位の再現性を実現したわけですが、残念ながらまだ万能ではないようです。素性のあまりよろしくない映像への対応となると、ブロックノイズやモスキートノイズを強調してしまったり、輪郭をくっきりとつけて、かきわり的な再現性になったり、4K変換の副作用を露呈してしまうケースが少なくないのです。
 4Kテレビはまだまだスタートしたばかりですから、そのパネルの強みを生かす方向で技術が進むのはいたしかたないこと。4Kテレビの潜在能力の高さを示し、認知度を拡げていくためには、最高の画質(もっとも条件のいいときの画質)をどこまで高められるかが、大きな意味を持つことになります。
私自身、このあたりは多少大目に見てあげてよう、という気持ちでしたが、先日、わが家に4Kレグザが運び込まれて、色々といじっていくうちに、意外に“地デジ”も見られるな、という意識に変わってきました。レグザには視聴環境やコンテンツに合わせて最適画質をフルオートで提供する「おまかせ」モードが用意されていて、私も“地デジ”を見るくらいならば、「おまかせ」でいけるだろうと高をくくっいました。その画質についても、まあ、こんなものだろうと、ほぼ納得していたのですが、ほんの少しだけ画質を調整してみて、びっくり。“地デジ”が別の表情をもち始めたではありませんか。
手順としては「おまかせ」からさらにコンテンツモードに入っていって、「ビデオ(放送)」を選択。そこからシャープネス、超解像、NR(ノイズリダクション)、あるいは色の濃さと、調整していくと、輪郭がキリッと引き締まり、細部の描写も実に見通しがいい。ほんの少しの気遣いで、ここまで画質が変わってしまうとは————。4Kテレビを購入したら、オート画質機能を過信することなく、とにかく画質調整をいじり倒してみること。これ、重要です。
そしてここにきて4K放送の周辺が騒がしくなってきました。冒頭でもでも触れたように、ワールドカップサッカーのスカパー! での4Kオンエアはほぼ決まったようですが、正直言って、スカパー! だけではインパクトが弱い。そこでNHK、民放各局はBSデジタルでのワールドカップ4K試験放送の実現に向けて動き始めたようです。
 現行の周波数の割り当てを一部変更しなければならない可能性もあるため、そう簡単ではありませんが、ここは一気に4K放送を立ち上げて、BSデジタルに新たな価値を創造していこうという思惑のようです。そのあたりの詳細については、HiVi9月号(8月17日発売)で4K/8K、スマートテレビなど、次世代放送の早期実現に向けて設立された「次世代放送推進フォーラム・NextTV-F」の理事長、須藤修氏のインタビューを掲載していますので、ぜひ、ご一読ください。
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