24話、よかったですねえ。想像の何十段上を飛び越えていったかというか、こんなの想像できないｗ
24話の大抵のことはみなさんが書いてくれると思うので、
ワタシは24話で一番わからないことを書きます。
＜卯月に何が起こったか＞
これ、ですよね。わかんないの。
わかるような気もするんだけど、わかんない。
デレアニ24話、島村卯月に何が起こったのか？
ステージに立つところまでは、みんなに導かれて、でいいと思います。
こわい、それでも先に進みたいと卯月は思えた。
プロデューサーの言葉を信じることを自分で選んだ。
おかげで卯月はステージに立つことができた、でいいんだと思う。
しかし、周りの人間にできることはそこまで。
クリスマスライブのステージに立った卯月はひとりでした。
これまで仕事を休んでいて、ステージ衣装を着ておらず、
開演トップバッターとしてひとりで出てきた卯月に客席もちょっと戸惑いがあり、
何を言うのか、それこそ解散、脱退、引退、出演できないおわび、などが
卯月の口から語られるような雰囲気でした。客席もまったく出来上がっていない。
地味に強烈だったのは、スタッフが「プロンプ出しますか？」と武内Pにいい、
言葉の出ない卯月に助け船を出そうとしたら、武内Pが断ったんですね。
この男、そこまで卯月がひとりで答えを出すと信じ、答えを出さねばならないと考えていた。
それができなければ、美城常務の言った通り、卯月を待ったのは無駄になってしまうのだと。
この状況で仲間達が客席からかける「がんばって」のエールは、
卯月にとって激励であると同時に重圧でもあったことでしょう。
卯月はステージに立って、歌えればよかったわけではなかった。
常務に「オマエはいらない」と言わせないだけの何かを突きつけなければならなかったんです。
そのことは余計なストレスを与えないために武内Pは言わなかったでしょうが、
卯月は24話の冒頭で常務に自分がどう評されているかを直接聞かされていますから、
自分が今、どれだけのものを求められているか、ある程度は認識していたと思います。
恐い。
恐いですよ。じゃあ君同じ状況でステージ立って歌える？ って言われたら、
まあ逃げますよね。まともな神経であれば。無理ですよ。
自信、ないんですから。逃げ出しちゃった引け目もあるし、
それこそシンデレラプロジェクトの存亡がかかっていると言っても過言ではない状況。
そこにただひとり。
ワタシは、このギリギリまで追い込まれた卯月が、
ステージであの「がんばります！」を言った瞬間に、これは「禅」だと思ったんです。
＜禅と卯月の親和性＞
いきなり禅てどういうことだよ！？ ってなるわけですが、書きます。
とりあえずおおまかな禅の情報はwiki先生にでも教えてもらっていただくとして。
禅というのは、座禅という座ってるだけでもきっつい修行を続けて、悟りをひらくものです。
7日間も不眠不休で座禅を続ける修行もあり、とにかく過酷です。
なぜそんなきつい修行をするのかというと、悟るためなんですが、
禅宗では「悟りとは他人から教えられて得られるものではない」という考えがあり、
座禅を組んで自分の中にある、誰もが生まれながらにして持っている「仏性」を見出し、
欲も迷いも不安も苦しみも断ち切って悟り、仏になって六道輪廻から解脱することを目指しています。
・・・何やら宗教くさくなっちゃいましたが、
苦境の中で自己を見つめることで何かを発見し、目覚める、というプロセスをそのままとして、
「仏性」を「アイドルとしての輝き」に置き換えると卯月に符号しませんか？
24話の卯月が置かれていた境遇と禅の修行プロセスが似ていることは、
「へー」ぐらいに思っていてくれればいいです。
あの『S(mile)ING!』を何度でも見て気付いてもらいたいんですが、
ステージに立った時も、歌の直前に「がんばります」と言った時も、まだないんですよ。
「進む、歌うという意思」だけで、「アイドルとしての輝き」はまだない。
歌い始めてもまだ、卯月には目を見張るような輝きはありません。
この程度では常務に「使い物にならん」と一刀両断されてしまう。
ところが、それが変わっていくんですよね。
ステージ上で歌う島村卯月の中で何かが起きて、変化があった。それは、何なのだろう？
仲間に力をもらって前向きになれた？ 違う。それなら「がんばります」の時点のはず。
突然謎のスーパーパワーが覚醒した？ それも違う。
ワタシの見解としては、
結果として「あるがままの自分を受け入れるしかない」と卯月は悟った。
ただしなぜ、どのようにして悟ったのかはわからない。卯月自身にもわかってない。です。
悟った、なんて言うと宗教がかっててうさんくさいと思われちゃいそうですが、
まあちょっとガマンして読んでください。
ちなみにですがスティーブ・ジョブズも禅を学んでおったそうですよ。
また去年大流行したレリゴーやビートルズの『Let It Be』も、悟りの歌だったりします。
驚くほど卯月に馴染む。
マリア様が出てくるあたりはさすがに西洋。
禅では「悟りとは他人から教えられて得られるものではない」ので、
自分でどうにかして悟るしかないといいます。
外との関わりや、外へ向かう意識を断ち切り、ひたすら自己を見つめる。
それが悟りへの道である、ということは教えられる。禅のwikiを読んだだけでも知ることができますｗ
が、「自己を見つめて悟れ」と言われても、そのやり方がわからない。
自己を見つめるったって鏡を見ていればいいわけでもなく、内面は目で見ることもできない。
そこのところは誰にも教えられないから自分で何とかしろというんです。
禅の修行をする人の「私は修行を続けたとして、本当に悟れるのでしょうか？」と、
卯月の「私には何も無い、この先もずっと何も見つからないのではないか」という
問題は、よく似ていると思いませんか。
悟れる保証も、何か見つかる保証もない。確率何％かもわからない。
目標がない、優れた技量もない、目立つ長所もない、自信もない。
じゃあそれはこの先、見つかるんだろうか？ 不安しかない。
どうすれば不安じゃなくなるのか？ 何を目指せばいいのか？ 自信は生まれるのか？
卯月が養成所に戻って基礎をやり直したのは、正しい判断だったと思います。
何もないなりに、レッスンしたら技術と自信は得られるはずですから。
残念ながら絶対的な技術や自信がつくほどの成果はなかったのですが、
卯月にとっては結果的にこれが大正解だったと、思います。
理由は「ほぼ無駄だったから」です。
＜禅問答〜理屈と常識をぶっ壊した先にあるもの＞
禅には禅問答というものがありまして、悟りをひらいた禅僧が弟子に謎かけをします。
ところがこの禅問答、まともに答えられないようにわざと作ってあるんです。
いくつか例を出しましょう。
弟子が毎日座禅ばかりしていた。
そこへ師匠がきていった。
「何のために座禅をしているのだ」
「仏になるためです」
すると師匠は、落ちていた瓦を拾って磨き始めた。
「師よ、何をなさっているのですか？」
「瓦を磨いて、鏡にしようとしておる」
「瓦を磨いても、鏡になるわけがないではありませんか」
「ならば聞くが、座禅をしたら仏になれるのか？」
「同じことなのですか？」
「牛車が動かなくなったとき、おまえは牛を打つのか、車を打つのか」
この師匠、おかしいですよね。
いきなり「瓦を磨いて鏡にしようとしているのだ」とか言い出しちゃう。
でも師匠は仏になる＝悟るために座禅をするのはおかしいのだぞと弟子に教えるために、
わざと自分もおかしなことをして弟子に見せているわけですね。
欲や邪念や煩悩を捨てて悟りをひらこうとしているのに、
「悟りたい」という欲を持っていたらダメだろ、その欲を捨てろと師匠は教えている。
・・・という風に解釈することはまあ、できますよね。
ところが禅問答というのはさらに意地が悪い。
最後の問いの答えは「牛を打つ」つまり正しいことをすればいいんですね！
と答えると禅問答ではＸになるんです。
なんでやねん！！ てなりますよね。
ではもうひとつ。こっちのほうがより卯月と関係が深いと思います。
師匠に弟子が尋ねた。
「私は、一切を捨てて何ももっていないのに悟れません。どうするべきでしょうか？」
「捨ててしまえ！」
「捨ててしまえといわれても、もう何ももっていないのです」
「その、捨てるものは何もないというのを、捨てるのだ！」
捨てるものがない、と言ってる弟子にさらに捨ててしまえ！ だそうですｗ
一問目の禅問答と同じで、捨てるものがない、という思いも捨てないとダメなんですって。
そんなこと思ってるから私はどうすればいいんだ？ なんて迷い、わざわざ聞いてくるんだと。
じゃあ答えは「わかりました！ 捨てるものは何もないというのは捨てます！」なのかというと、
これもＸになります。
要するに引っかけ問題なんですね。禅問答では「わかった！」と答えたら全部Ｘなんです。
悟りの方法が言葉や理屈で説明できたら、それは間違いだってことなので。
一問目の「牛車を動かすには牛を打てば動くのだから、それが正しい」という答えは、
その「正しい」というものの考えかたは人間が勝手に考えたものだから、
それにとらわれてはいけない。
二問目の「何も無いという思い込みを捨てる」というのも、
じゃあ捨てれば悟れるのかといったらそんなことはない。
そういうことを考えている時点で悟りへの道はひらかれない、のだそうです。
師匠が答えを言ってるようにみせかけて、そこに引っかかったらアウト。
日本の、いや現代のまっとうな教育とか学習方法とは逆といいますか、
無茶苦茶じゃねーか！ って言いたくなりますよね。
ですが、卯月に必要だったのは、卯月に変化を与えたのは、
理論でも常識でも知識や知恵でもなく、誰かが教えられるものではなかった、と思うんですね。
例えば真性の高所恐怖症の人に、どれだけ理論的にここは高いけど安全だと教えても、無駄です。
真性の虫嫌いの人にこの虫は人に害を与えないと教えても虫嫌いは治りません。
それと同じで、卯月が輝くために必要だったのは技術でも自信でもなかった。
だから養成所でのひとり練習はほぼ無駄でした。
ただ、技術と自信を手に入れたら輝けるという思い込みが無駄だということに気付けたので、
そこだけは無駄ではなかった。
厳しい修行をすれば悟りが開けるという勘違いに気付いた禅の修行僧と同じです。
悟りというのは、「受け入れる」ことなんですね。
高いとこから落ちて死ぬとか、虫が気持ち悪いとか恐いとか、あらゆる雑念にとらわれず、
なるようになる、それでいいじゃないか、とあるがままを受け入れるということ。
卯月がクリスマスライブのステージで見出したものこそ、
あらゆる雑念を捨てた「悟り」だったのではないかと、思うのです。
技術も自信も、ましてや他人の導きも無い。
スーパーパワーが目覚めたわけでもない。
ただ私にできるのはこれだけだと「受け入れた」だけ。悟り。
＜卯月は最初から悟っていた？＞
悟りといっても、いきなり人は仏様のようになれるわけではありません。
禅では悟りには4つの段階があるとされています。
(いろんな宗派、考え、誤差があるので、いろんなのを読んでワタシがまとめたもので、
禅の悟りの決定版とかそういうスゴイものではないです。が、だいたいこんな感じのはず)
�ゞ鯢彌蟾堊�
欲や邪念を生む外との関わりを完全に断ち、自己の内面のみを見つめる自由な心を得て、
悩みや不安や欲や執着などにとらわれなくなった状態。
ただしこれは悟りの初歩の段階で、これで自分は悟りをひらいたのだと勘違いしてしまいやすく、
ゆえに「愚かな者の行う禅」という名称がついている、らしい。
��観察相義禅
愚夫所行禅よりも先へ進もうとしている状態。
しかし悟ろう、仏になろうという我欲が消えていないので六道輪廻から逃れられない。
我欲を捨てて他者のために、という心に変われば道が開ける、らしい。
�Ｚ輝鑁ー汰�
我欲のない、達観した境地。ほぼ仏様同然だが他者を救いたいという願望がある限り、
まだ究極の悟りには至ることが出来ない、らしい。
�で〕萓蕎�禅
ゴール。らしい。
人が生まれながらに持つ仏性に完全に立ち返り、仏になった。
こうなる方法を誰も説明できない、らしい。
細かい内容はさほど重要じゃないです。
卯月は仏を目指している禅僧ではありませんので。
これを紹介したうえで言いたいのは、
�，痢擽鯢彌蟾堊機曚阿蕕い任△譴仭気僚す圓鬚靴覆�ても、
人が日常生活の中で気付いたりすることもある、ということなんです。
やたらと感情を荒げたりしない、穏やかで善良で寛容な人って、いますよね？
レリゴーやLet It Beの歌のような境地をごく自然に理解している人。
そういう人は誰かに教わったわけでもなく、特別な修行をしたわけでもなく、
自らの人生経験によって、この悟りの道の初歩に至っている。なんてこともあるんだそうです。
禅なんて知りもしない文化圏の人なんかでも、こういう人はいるものですし。
さて、ここで気付いた人もいるんじゃないでしょうか。
あれ？ 1話の島村卯月ってそれだったのでは？ と。
卯月は善良で、穏やかで、感情を荒げたりせず、寛容でした。
この悟りの初歩では、人はまだ仏様にはほど遠いレベルの悟りでしかありませんから
まったく怒らないわけでも、悲しまないわけでも、喜ばないわけでもない。
それらの感情が極端に昂ぶることなく、心が安定しているのが悟りの初歩です。
歴史に名を残す禅僧、例えば鎌倉仏教で有名な曹洞宗の道元さんなんかは
悟りをひらいた僧ですが、結構怒ってます。
悟ったお坊さんも喜怒哀楽がまったくないわけではなく、
振れ幅が小さく安定している。俗人と比べて心が平穏なんですね。
そして俗人の中にも修行したお坊さんのように心が平穏な人もいる。
卯月って、1話の時点でそういう人だったと思うんです。
そんな卯月がアイドルの世界にやってきて、
周りの仲間を見て、あーでもない、こーでもないと考え始める。
自分には何も無い、と悩み、不安になっていく。
卯月はなぜ、そうなってしまったのか？
こういうことを書くと非常にカドが立ちそうではあるのですが、
卯月は周りの人間たちの「欲」に触れてしまったのだと、思うんです。
みんな前に進もうとしている。何か目指すもの、努力すべき課題を見つけて、行動していく。
それは「欲」です。それが悪だ、とは言いません。
成長や希望、願望、欠点の克服などを否定するのはおかしいし、みんな仏になっちゃいます。
人間は人間であるわけなので、欲は欲でいいんです。
ですが、1話で卯月が凛をノックアウトした笑顔は欲から生まれたものだったろうか？
あの頑固そうな渋谷凜のハートをぶち貫き、
やめると言って引きこもった未央にぶつかっていけない武内Pを雨の中傘も持たず走らせ、
ユニット解散寸前までこじれた未央を文句ひとつ言わずに迎えたあたたかさは、
人間の「欲」から生まれ出た力だっただろうか？ ワタシはそのことを考えます。
「アイドルになりたい」「アイドルとしてがんばりたい」それは一見「欲」であるようにみえる。
が、その先に何も無いとしたら、アイドルに合格したあとの卯月のそれは「欲」なんでしょうか？
1話の卯月が、あの凛をときめかせた笑顔を見せる時に、ちょっと不思議なことを言うんです。
凛「卯月はどうしてアイドルになりたいの？」
卯月（質問に驚き、うろたえた様子で）「えぇ〜……ど、どうして？
えと、だってきれいな衣装を着れて、キラキラしたステージに立ってて、お姫様みたいで、
（楓の看板を指差して）あんな風になれたらいいなって（上田しゃんに切り替わる）」
卯月「正直どういうお仕事がアイドルの仕事なのか、私もよくわかってないんですけど……でも、夢なんです」
びっくりするほど「わかってない」です。
ものすごく漠然としていて、それ、写真館で衣装着たら9割は実現できますよという。
アイドルを野球選手に置き換えたら「野球選手ってチームのユニフォームを着て、
棒で白いボールを叩いたり、ボールを投げたり、キャッチしたりするんですよね。
よくわかんないけど、それになるのが夢なんです」と言ってるようなもの。
欲としては極めて微弱な部類だといえるでしょう。
卯月「アイドルに、キラキラした何かになれる日がきっと私にも来るんだって、
そうだったらいいなって、ずっと思ってて」
卯月にとってアイドルとは、そういうものらしい。
ところが不思議なことに、24話で卯月は「アイドルとしてもっと輝きたい」
あるいは「キラキラした何かになりたい」と★に書かなかった。
あの状況、心理からすると、そう書くのはベタではあるけど自然だろうと思ったのですが。
そう書いていたら「そうだよね、1話の卯月に原点回帰だよね」で丸くおさまっていました。
でも卯月は何も書かなかった。書けなかった。卯月の中に本当に願いが無いのだとしたら？
じゃあそこの空白は本当に空白、無があるのかなと。
★に叶えたい願いを書こう→無
こう書くと何だか不気味な人のようですが、
「禅」における無は、Nullやempty、つまり「０」ではなく、「１」なんですね。
真理はただひとつであり、それを悟るということは真理という１に同化するという意味なんです。
自分と他人、生と死、善と悪、そういう何かを分ける、へだてるものを「無」にすると、
唯一存在する真理という１になる。わけです。
その真理という１を「あるがまま」として受け入れる。すると悩みも不安もないわけです。
さらにいうと今という一瞬は無二なので、今この瞬間こそが真理、
その真理たる今をひたすらに「ただ生きる」のが悟りをひらいた者の有り様だといいます。
善悪も好き嫌いも、正しさすら考えず、ひたすらに生きろと。
この「今をひたすら生きる」という理念を宗教くさいと言うなかれ。
剣禅一如、拳禅一如、弓禅一如、茶禅一如といった言葉があります。
武道や茶道などにおいてその禅の精神が取り入れられていること、
それが宗教とは違ったカタチで日本人の精神の形成に関与している事実もあります。
さて。
察しのいい人はもう気付いてると思います。
卯月って、いつも何て言ってましたっけ？
がんばります！
ですよね。
がんばりますしかいわない奇妙な人だとか、ガンバリマスロボだとか。
卯月のことをそう評していた人、いたと思います。
ちと違うんじゃないかなと。
元々、島村卯月は「今という瞬間をただひたむきに生きる」人だったんじゃないだろうか。
だから彼女には「欲」がなく、周囲とはちょっとズレていたんじゃないだろうか。
ワタシはこのように思うわけであります。
「今という瞬間をただひたむきに生きる」
24話で『S(mile)ING!』を歌う卯月が見つけた自分は、
日々をただひたむきに生きる「がんばります」の人でした。
これ、何がスゴイかっていうと「アニメは何も卯月に足してない」ってことです。
武内Pと会う前の卯月のままなんですから、
つまりモバゲーのアイドルマスターシンデレラガールズの2コスの島村卯月なんだってことなんです。
それにちょっと注釈がついたことで、人としての輪郭の掘りが深くなった。それだけ。
無個性、がんばりますだけ。大橋彩香さんが「何を考えてるかわからない」と言った卯月の頭と心を
少し覗いてみた、ぐらいかな。これは本当にすごいなと思う。
＜島村卯月がアイドルである理由＞
無個性といわれた卯月の「無」は数学のゼロではなく、
禅の無＝真理という１＝つまり全だった。
無私無欲となり、今という瞬間を唯一の真理と知り、ひたむきに生きる。
そこには善も悪も自分も他人もなく、全＝あらゆるものへの愛が生まれる、だそうです。
恋愛や性愛ではなく、西洋風にいえばアガペー、東洋風にいえば慈悲、慈愛のことです。
すべてに対してわけへだてなく与える愛のことですね。
そう、『S(mile)ING!』のラストです。
「アイドルって、何だろう？」と考える。
アイドルという単語は本来の「偶像」から派生して、
熱狂的な好意や崇拝の対象となる人に与える称号だとしたら、
そこにはある種の「尊さ」「聖性」があるのだといえるのではないか。
アイドルの歌を聴いて救われたとか、勇気が出たとか、励まされたとか、背筋が伸びたとか。
涙を流したとか、他人に見せられないような笑顔になったとか、心を奪われたとか。
何ていうのかな、何かしら心によい作用が働いた経験が、あったりはしませんか？
24話の卯月の『S(mile)ING!』に何かを感じたのだとしたら、きっとそういう類のものだと思います。
そこにはあんまり理屈らしい理屈がありません。
人は人だから人のそういうものに触れると、震えて響く。そういう風にできている。
なのであの瞬間、島村卯月は職業、肩書きとしてのアイドルではなく、正真正銘のアイドルになった。
ということなんじゃないかな。
＜あとがきという名のまとめきれなかったあれやこれ＞
はい。相変わらずです。
長くそして「何を言ってるんだオマエは」と言いたくなる、まーそういう。
アイドルマスターと長くつきあっているとイヤでも「無個性」とか「無」について
考えざるを得なくなるものでして。その成果とでもいいましょうか。
24話を見終わった時、「スゲー！」という感嘆と同時に、
卯月はなぜこの大逆境でこんなものが出せたんだ？ という謎が湧き上がりまして。
歌いながら悟る、あるがままを受け入れる、原点に戻る、まではすんなりいくんですが、
それであの表現しがたい力を放てるのはなぜなのか。そこを可能な限り攻めてみたかったんです。
でないと「よくわからんけど卯月はすごいってことで」で、終わっちゃったかなと。
ちなみにタイトルの〜心を込めて「がんばります」で殴る〜は、
RPGでいうレベルを上げて物理で殴る、になぞらえたものなので、実際に殴ったりはしませんので。
どうぞ勘違いをなさらないでいただければありがたく。
禅というキーワードは、ひとりになって自分と向き合う姿から思いつきました。
と、同時に浮かんだのが実は宮沢賢治の「雨ニモマケズ」だったんですが、
仏教的ではあるんですが禅とはちと離れてしまうので触れないことにしました。
「雨ニモマケズ」の「そういうものに私はなりたい」のそういうもの、とは
斎藤宗次郎という実在の人物がモデルになっているという逸話がありまして。
つまりそういう人ってリアルにいて、じゃあ卯月という人柄も現実離れはしてないんだな、
なんて思いましたね。人間てのは奥が深いというかわからないものです。
それと、宮沢賢治を調べていて発見した、どうしても見過ごすことのできないものがあったので、
この記事の内容とは関係がないのですが紹介しておきます。
『星めぐりの歌』という、宮沢賢治が作詞作曲した歌なんですが、
この歌詞のオリオンのところ。ぜひ聴いてみてください。
それから、卯月の悩み、問題に誰も気付いていなかったということについてなんですが、
実はひとりだけ、それも序盤から当たり前のように気付いてる登場人物がいました。以下反転
卯月ママ「この子、ちゃんとアイドルできていますか？」7話
いやはや、さすが。お見事です。
なんかいろいろとりとめがありませんが、最終話前に書き終えられてよかったです。