だが、そのために競技のスポーツとしての本質がゆがみ、魅力が損なわれては本末転倒となる。野球の6枠の参加チームはどうなるのか。開催国の日本とアジア・オセアニアから韓国か台湾かオーストラリアのどこか1チーム。欧州にも1枠は必要で、残るは北中米の米国、キューバ、カナダ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、メキシコ、ベネズエラなどから3チーム? それとも北中米枠を1か2に減らし、アフリカと南米に門戸を開くのか。
■「若者へのアピール」を意識するが…
いずれにしても、すでに野球が普及している地域だけの大会になるか、さもなければ実質3、4チームによる優勝争いになってしまう。五輪出場枠を争う予選があるとはいえ、新たなファンの開拓につながるだろうか。
IOCが「若者へのアピール」を意識して、サーフィンやスケボーを取り込もうとするのにも違和感を覚える。若者のスポーツ離れを憂えるのはいいが、五輪のように権威の確立したイベントと、自由で束縛されないことを好む若者の人気は、そもそも相いれないものではと感じられて仕方がない。
今回はスケボーを五輪に提案するために、IOC未承認団体の国際スケートボード連盟ではなく承認する国際ローラースポーツ連盟を使って取り込む形となった。かつて国際スノーボード連盟を無視してスノーボードをスキー競技として長野五輪に迎えたのを思い出す。こうした「大人の事情」によってスケートボードが変貌しメジャースポーツになるとしたら、以前からこのスポーツを楽しんでいる若者はどう受け止めるだろう。
サーフィンにしても五輪競技となり、公平さが重視されて安定した波ばかりで争われるなら、自然との戦いといった本質的な魅力は半減するのではないか。サーフボードにもスケートボードにも乗ったことがない50代おやじの余計な心配なのかもしれないが。
■IOC委員投票で支持されぬ可能性も
気がかりなことはもう一つある。東京組織委の提案がIOCの意をくんだものだとしても、IOC委員の投票となるとそれが支持されるとは限らないということだ。2年前のレスリングの除外危機のときもそうだったように、組織的な縛りを受けないメンバーが多いIOC委員たちが、会長や理事会など執行部の提案と反対の結論を投票で出すのは珍しいことではない。
追加競技の採否を決める来年8月のIOC総会(リオデジャネイロ)での審議の方法は決まっていないが、東京組織委は5競技18種目の提案をそのままパッケージにして一括採決してくれると期待しているだろう。それなら簡単に承認される可能性は高い。だが、1競技ごとの採決に持ち込もうとする動きがでないとは限らない。利権を求める一部のIOC委員にとっては、そのほうが競技団体のロビー活動が激化しておいしい話にありつけるチャンスも増える。万一にもそんな事態になったら……。米大リーグ選手の出場という課題を抱える野球・ソフトですら安心できなくなってしまう。
スケートボード、ローラースポーツ、サーフィン、IOC
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