妊婦死亡、流産、14歳の母親……知られざる産婦人科の現場から〜大反響漫画『透明なゆりかご』作者・沖田×華さんに聞く
現代ビジネス 10月14日(水)11時1分配信
10月13日、『透明なゆりかご』の2巻が発売された。漫画家の沖田×華(おきた・ばっか)さんが産婦人科でのアルバイト体験をもとに描いた漫画だ。
今年5月に発売された1巻では、沖田さんが働いていた1997年頃、日本の本当の死因第1位が中絶だったことや、自分の子供を愛せず他人の子供と取り替えようとする母親など、ショッキングな内容が話題となった。
産婦人科のもう1つの顔を描き続ける沖田さん。今回は勤務先で起こった初めての妊婦死亡事故について話をうかがった。
---沖田さんのいた病院で初の妊婦死亡事故だったそうですね。今あらためて思い出されることはありますか?
ふだんと何ら変わりない分娩でした。妊婦の浜田さんは23歳で目立った既往歴もなく、妊娠も順調そのもの。双子なので分娩はすこし時間がかかるかもしれない、というくらいで、太鼓判を押してもいいくらいでした。
ところが元気に話していた3時間後に彼女は亡くなりました。本当にあっという間の出来事でした。
---死因は出血性ショックだとか。その時、分娩室はどのような様子だったのでしょう?
私はすこし離れたところで作業をしていて、急に分娩室が騒がしくなったので「何かがおかしい」と思い、様子を見に行きました。そしたら先輩の看護師さんが救急搬送の手配をしているところで……。
その場にいた人の話では、足の間から噴水のように血が出たそうです。あきらかに致死量だし、出血が止まらない。妊婦さんの顔は信じられないほど真っ白でした。顔面蒼白とはこういうことをいうのかと。
---あっという間の出来事だったとのですが、実際はどのくらい?
10分とかそれくらい。大出血を起こし、分娩室の前で待っていた旦那さんに救急搬送が決まったことを伝えた3分くらい後には、心停止していました。
心臓マッサージを続けながら救急車に乗せる時、すでに妊婦さんの目や口は半開きになっていて、これは旦那さんに見せられないな……と思いましたね。
それでも「大きな病院に行ったら助かるかもしれない」と一縷の望みをかけて輸血をするなどできる限りのことをしました。1回蘇生するも、その後搬送先の病院で死亡が確認されました。
---妊婦さんが搬送された後の病院の様子で印象的だったことはありますか?
しばらく動けませんでした。あまりに突然の出来事でショックが大きかった。私とペアで仕事をしていた准看護学校の実習生だった人とただ呆然としていました。「え…死んでしまったの…?」と。頭で理解できない感じです。
---大量の血を含んだガーゼがバシャッと床に叩きつけられるという描写もありました。分娩台も血だらけでしたよね。読んでいて言葉を失いました。
先輩の看護師さんに言われて掃除をしたのですが、本当にあたり一面、血の海なんですよ。妊娠中は通常とは異なり、血液が詰まらないように固まりにくくなっているんですね。色は鮮やかでサラサラ。だからどこまででも広がっていく。
一緒に掃除をした実習生の人は気分が悪くなって吐いていました。その後、彼女は出産が怖くなってしまい、新生児を見ることがつらいと病院を辞めてしまいました。私も夢なら覚めてほしいと思いました。
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