寒々しい病室でダラダラと延命治療を受けるより、長年暮らしてきた家で自分らしく逝きたい。きっとそのほうが、安上がりだし—だが、本当にそうだろうか。「在宅死」の語られざる現実を書く。
看取るほうの収入も減る
「昔はほとんどの人が『在宅死』でしたが、'76年に病院で亡くなる人が『在宅死』の数を上回り、いまでは皆が『病院で死ぬのが当たり前』と思い込んでいます。
しかし、高齢者はほぼ例外なく『住み慣れた家で最期を迎えたい』と思っているものです。『病院のほうが快適だよ』と言う高齢者は、家族に迷惑をかけまいとしていることが多いのです」
こう語るのは、尼崎市の長尾クリニック院長で、在宅医療の第一人者として知られる長尾和宏氏だ。
いま、日本は再び「在宅死」の時代を迎えている。高齢化が進み、病床不足・医療費高騰が深刻さを増す一方、「自宅で最期を迎えたい」という人が急増しているのである。
世界のどこにも負けない高い医療技術は、日本の誇りだ。だが、高度な延命治療が「幸福」とは限らない。狭い病院のベッドの上で、生命維持装置と栄養チューブにがんじがらめになって、身動きもとれず、口もきけず死んでゆく—そんな家族の姿を目の当たりにし、後悔する人も多い。
「そうなるくらいなら、思い出のつまった自分の家で、家族に見送られて死にたい」「無理な延命はいらない。できれば、苦痛の少ない老衰で穏やかに逝きたい」と考えるのが人情だろう。また看取る側にも、その思いに応えてあげたいという人が多いに違いない。
しかし、漠然と「家で看取るほうが、病院や施設のお世話になるよりは、ずっと安上がりのはず」「大きな病気をせず、老衰で亡くなれば、医療費も大してかからない」と甘く見ていると、思わぬ出費に泣かされる。介護事業サポート会社「地暮」代表の中村聡樹氏が言う。
「確かに、長期間入院ができる療養型の病院に入院したり、広々とした個室の老人介護施設に入るよりは安上がりです。ですが、介護を家族の力だけでやりきるのは不可能ですから、結局、思った以上におカネがかかります。
高齢者が施設で過ごす年数は、4年から最長で7年。少なくとも、それと同じだけの期間を自宅で過ごさなければならないわけです」
がんなどの大きな病気を患っておらず、ゆるやかに老衰が進んでゆく場合には、いつまで介護を続けなければならないのか、見通しを立てるのが難しい。5年、10年と続く場合、介護する側もまた老いて収入は減り、年金やなけなしの貯金を切り崩してゆくのだ。
それでは、「家で看取る」と決めた瞬間から、いったいどれだけのカネが必要になるのだろうか。
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