(2015年10月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

世界経済は今、中国がくしゃみをしても風邪をひくようになった (c) Can Stock Photo

 米国がくしゃみをすれば世界経済が風邪をひく――。かつてはそう言われたものだった。この言葉は今日でも間違いではない。ただ最近は、中国がくしゃみをしても世界経済が風邪をひくようになった。

 世界経済は、借入金を燃料に動く最後の大型需要エンジンを失ってしまった。

 そのため、世界的な「過剰貯蓄」にさらに拍車がかかるか、ローレンス・サマーズ氏の言う「長期停滞(潜在的な供給に比べて需要が弱い傾向のこと)」に至るのはほぼ確実だ。

 このことは世界経済のリスクにとって重要な意味を持つ。

 国際通貨基金(IMF)は最新の「世界経済見通し(WEO)」を、憂鬱というよりは用心しているような調子でつづっている。これによると、世界経済の今年の成長率は3.1%になる見通しで(購買力平価ベース)、2016年には3.6%になる。高所得国の今年の成長率は2%で、ユーロ圏ですら1.5%の成長が見込まれるという。

 一方、新興国は今年、4%成長すると予想されており、2013年の5%や2014年の4.6%を大きく下回ることになる。中国は6.8%、インドは7.3%の成長がそれぞれ見込まれるが、中南米は0.3%のマイナス成長で、ブラジルは3%のマイナス成長に陥る見通しだという。

世界経済の下振れリスク

 IMFはまた、どんなに筋金入りの心配性でも納得するほど長い下振れリスクのリストも示している。

 資産価格の破壊的な変動と資産市場の混乱、潜在成長率のさらなる低下(もし実現すれば、投資と総需要が減ってしまう)、中国の国内総生産(GDP)の予想以上の減少、コモディティー価格のさらなる下落、ドル高の進展(実現すればドル建てで借金をしている主体、特にコモディティー生産のために資金を借りた企業などのバランスシートがさらに悪化する)、地政学リスク、そして総需要のさらなる減少といった具合だ。