最近のテレビは、視聴者が何を望んでいるのか、どうやったら視聴率が取れるか、ということを考えすぎ
齋藤:まず、「企画」をする上で、一番大事にしていることはなんでしょうか。小山:僕は社内ではいつも「企画とはサービスである。サービスとは思いやりである。」とスタッフに言っています。つまり、何を求められているか、何を欲しているか。どれだけ人々の気持ちを慮れるかというのが「企画」なのではないかなと。
いつも自分に問いかけている3つのことがあります。それは、「その企画は新しいか」、「その企画は自分にとって楽しいか」、「その企画は誰を幸せにするのか」。3つとも当てはまっていたらすごくいいなと。
齋藤:人々を幸せにするというのは?
小山:より多くの人というよりも、一人のためとか、近い人を喜ばせるとか、それぐらいのほうがいいかなと。先輩、「それは違うだろ!」みたいな指摘をお願いします(笑)。
秋元:全くその通りです。小山薫堂は人格者なので、優しく穏やかに、思いやりとかサービスと言うんですけども(笑)、それ別に異を唱えるわけではなく、ちょっとやり方が違うのは、僕はとにかくマーケットを見ない。
昔は世の中の動きとか、"人は何を望んでいるんだろうか?"、ということを考えていたんですけど、この10年、20年ぐらいですかね、それをやればやるほど、結局過当競争に巻き込まれる。
つまり、そこにどんな魚がいて、どうなっているかが分かるほど、そこには漁船が集まります。でも、ある時そうじゃないかもしれないなと思ってからは、とにかく自分が信じるものをやり続けることの方が面白いかなと。
それは多分僕が薫堂君のような人格者じゃないからかもしれないんですけど(笑)、例えばみんなが校庭でドッジボールをやっている時に、途中で混ざっても勝てないなという気がするんですね。だから、みんながドッジボールをやっている時に、僕はたった一人で鉄棒を始めて、鉄棒で何か面白いことをやっているうちに、ドッジボールをやっているみんなから「混ぜて欲しい」と言われる方がいいかなと。
僕は「企画」をそういうようなことで考えている気がするんですね。外を見ずに、自分の中だけの面白いものがどこまで広がるかっていう、その"思い込み"と"思いあがり"の賜物のような気がするんですよ。
だから、決して全てがうまくいっているわけではないし、偉そうなことを言うつもりもなくて。結局夕暮れまで、鉄棒に一人きりだったなっていうこともよくある。でも、みんなが望んでいるものを探せば探すほど、ダメになるような気がして、全く見たことがないものとか、やったことがないものを、追い続けている気がします。
例えば、最近のテレビは、視聴者が何を望んでいるのか、どうやったら視聴率が取れるか、ということを考えすぎて、みんなが想像する"予定調和"を壊せなくなったと思っています。
スタッフにずっと言っているのは、"カルピスの原液を作らなきゃダメだ"
小山:僕、秋元さんがすごいと思う瞬間があるんですよ。ニューヨークに先月一緒に行った時、あともう一人、一緒に行った方が、ずっと色んな人の悪口を言われていたんですよ。そして突然僕に、「で、薫堂は誰がキライなんだ?」と(笑)。僕はキライな人って、そんなにいないんですよね。「誰って言われても、あんまりいないんですよ」って言ったら「だからお前はダメなんだ!」と。「キライな人を言わない人間を、俺たちは信用しない!」みたいなことを言われて。ちょっと強がって「いや、いますよ。すっごいイヤな奴いますよ」って言ったら「じゃあ、誰?」って。「今、名前を思い出せないんですけど」って言ったら「思い出せないなら、キライじゃないんだよ」って。
その時に、秋元さんが凄いなと思ったのは、とにかく嫌いな人がいると。で、その人のことが嫌い過ぎて、好きなんじゃないかなと錯覚することがあるから、年に一回、ご飯を食べに行って"やっぱり嫌いだ。よし、俺、ブレてない"って確認するんだって言うんですよ。それぐらい自分の思いを守り抜いて、近寄る人を寄せ付けないぐらいの強い思いを持って、色々な企画をやられているのかなと思ったら、すごいなと。
僕はやっぱり、誰かに嫌われているなと思ったら「じゃあ、これはやめとこう」っていう気になるんですよね。企画って、Win-Winじゃないとダメだなと思ってしまうタイプなんですよ。自分だけ儲けていると思われた瞬間に、共感を得られなくて失敗するだろうなと思ってしまうんですよね。
だからくまモンも、本当に儲けてないんですけど、「僕は本当に儲けてないです」と言っておかないと、うまく回らないんじゃないかなと思います。でも秋元さんは、AKBで相当儲けてらっしゃると思うんですけど(笑)、それを批判にも感じさせないぐらいの強い企画力をぶつけるからいいんじゃないでしょうか。これが中途半端な企画力だと、批判されるんじゃないかなと思います。
秋元:この流れだと、薫堂くんがいい人で、僕が悪い人みたいな(笑)。僕はWin-Winにしていないような。(笑)
小山:違うんです(笑)
秋元:薫堂くんが言わんとしていることは分かります。嫌いな人が、なぜ嫌いかっていうのは、自分の方向性の問題なんですよね。つまり、好きでもない嫌いでもない、っていうのは、結局自分がないから、好きでも嫌いでもないわけじゃないですか。自分を持っていたら、必ず好きか嫌いはあるわけで。その人が嫌いっていうのは、きっと自分にすごく似ているか、自分と全く価値観が違うかのどっちかなんですね。なので、会ってご飯を食べるぐらいだから本当に嫌いじゃないのかもしれないですよね。
僕は、もうどう思われてもしょうがないなというところがあるんですけどね。 もちろん僕も薫堂くんみたいに、みんなから好かれたいですし、いいイメージでいたい。この男はすごくいいイメージで売ろうとしているでしょ。本当は腹黒いんですよ(笑)。
僕は、「企画」というのは、イソップ物語の「北風と太陽」がいなきゃいけないと思っています。つまり、旅人、あるいは世の中、ユーザー、消費者。とにかく風がビュービュー吹いていても、絶対にコートを脱がない。だから、太陽のようにポカポカさせて、自分から脱いでもらうしかない。
昔だったら、場所の悪いところにお店出しても絶対ダメじゃないですか。だけど、今はネット時代ですから、中身さえ良ければ、太陽のようにポカポさせていれば、旅人がコートを脱ぐように、お客さんが近づいて来るわけですよね。
だから、僕はそこの一点だけですかね。企画をする時に"これの優位性はなんなんだろう?"と。
スタッフにずっと言っているのは、「カルピスの原液を作らなきゃダメだ」と。カルピスの原液さえ作れば、例えば、カルピスウォーターにさせてもらえませんかとか、ホットカルピスにさせてもらえませんかとか、アイスクリームのカルピス味を作りたいんですけど、というお話をいただけて、薫堂くんの言うところのWin-Winになるわけじゃないですか。
だけども、この原液がなくて、なんとなく当たっちゃったものっていうのは、すぐ同じものが作られるし、競合が出て来る。だから常に、この優位性はなんなんだろうなと考えるということです。
アイドルを作る時も、他のアイドルとどこが違うのかなと。それは秋葉原に専用劇場があって、そこで365日公演をしているアイドルはいないだろうなと考えるとか。
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