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トルコは、中東で民主主義が定着した数少ない国の一つだ。紛争国のシリア、…
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トルコは、中東で民主主義が定着した数少ない国の一つだ。紛争国のシリア、イラクなどと隣接し、中東の安定のかぎを握る地域大国である。
その首都アンカラで、悲惨な爆発テロが起きた。多数が死傷し、地元の報道は「共和国史上最悪のテロ」と伝えている。
現場では政府に批判的な労組やNGOなどが、少数民族クルド人の組織と政府の和解を求めてデモをするところだった。
事件には不明な点が多いが、混乱により社会を分断させる狙いがあった公算が大きい。トルコ政府は公正に捜査を進め、国内の緊張をほぐすための民主政治を心がけてもらいたい。
10年以上、実質的に国を率いるエルドアン現大統領は一時、クルド人組織との融和を進めたが、最近は強権姿勢がめだつ。6月の総選挙でクルド人政党が躍進すると、いっそう態度を硬化させた。
7月、シリアの過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆に踏み切ったが、爆撃対象にはイラクのクルド人組織も含まれる。テロ対策の名目で、実は国境を越えて宿敵のクルド人組織をたたく作戦ではないかと国内外から疑問の声も出ている。
今回の事件について、政府はISの犯行との見方を示唆するが、真相は見えない。市民からは、政府の安全対策が不十分だったとの不満が噴出し、街頭での衝突も起きている。
もともとイスラム保守層を基盤とするエルドアン氏と、都市部の世俗派などとの間では長く対立が続いてきた。今後のトルコ社会に不穏な空気が広がるようであれば、中東全体への悪影響が懸念される。
来月1日には再び総選挙が予定されている。事件による社会の動揺は避けられないとしても、公正に民意が示せるよう、政府は各派の選挙運動の権利を保障し、強圧的な治安対策は避けなくてはならない。
伝統的に中東での発言力をもち、イスラエルとも国交があるトルコは本来、地域の安定化を図り、欧米と中東との橋渡し役を担うべき国である。
それが、隣国の内乱に乗じて利己的な軍事行動に走ったり、自国の民主政治を後退させたりするようでは、中東はますます混迷に陥る。地域大国としての責任を自覚してほしい。
トルコでは11月半ばに主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。多くのシリア難民を保護する人道的な役割も担っている。その重要国の安定とさらなる民主化のため、欧米と日本は各方面で交流を広げたい。
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