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 JR北海道の合理化で、今月末の廃止を通告していたJR室蘭線小幌(こぼろ)駅が存続する見通しとなった。地元・豊浦町が「日本一の秘境駅」と親しまれる駅を観光振興に生かそうと、維持管理費を負担するなどの「支援」を申し出たためで、両者は近く協定を結ぶ。

 小幌駅は噴火湾に面した断崖絶壁の山あいにあり、ホームは二つのトンネルに挟まれたわずか80メートルほどの区間にある。列車以外の方法でたどり着くことが困難で、鉄道ファンが「日本一の秘境駅」と呼んでいる。周辺に民家はなく、地元利用はほとんどない。

 極端に利用の少ない無人駅の廃止など合理化を進めるJR北の島田修社長が7月の記者会見で、小幌駅を名指しし、「マニアの方々のためにコストをかけて維持していくべきか」と廃止を示唆。この夏、駅は線路上まで観光客であふれた。

 廃止話が突然降ってわいた時、町は地方創生の柱として小幌駅を核とした観光振興策をまとめようとしていた。町は洞爺湖有珠山ジオパークに認定されており、見どころ(ジオサイト)の一つとされる小幌洞窟へは小幌駅からしか行けない。2030年度には近くに北海道新幹線・長万部駅ができ、観光客を呼び込むチャンスも広がる。

 「小幌駅は町の宝。廃止反対と訴えているだけでは残せない。何かできることはないか」(小川英紀副町長)と町は財政支援を申し出た。JR側から示された維持管理費は年間150万円ほど。老朽化した片側ホームの補修などにざっと1千万円はかかるという。

 町議会には費用負担に慎重な意見もあったが、「町にある数少ない『日本一』を生かさない手はない」とおおむね理解が得られたという。町は小幌駅存続のために当面必要な費用を来年度予算に盛り込む考えだ。

 小川副町長は「ふるさと納税制度で全国に小幌駅への支援を呼びかけるなど、お金を集める方法も模索していく。JR北海道と連携し、町にある貴重な『日本一』を残したい」と話す。 JR側も「自治体とともに鉄路を支えるモデルケースになる」と期待する。(日比野容子)