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 三井不動産グループが販売した横浜市都筑区の大型マンションで、杭の一部が強固な地盤(支持層)に届いておらず建物が傾斜した問題で、杭の施工記録が支持層に届いている杭のデータと差し替えられていたことが、横浜市などへの取材でわかった。この杭の施工を担当したのは旭化成建材。建築基準法に違反する疑いがあり、横浜市などは調査を始めた。

 問題のマンションは大型商業施設との一体開発の形で三井住友建設が施工し、三井不動産レジデンシャルが販売。2007年に完成し、最高12階建ての4棟に約700世帯が入る。

 横浜市などによると、傾きが判明したのはこのうちの1棟。昨年11月、別の棟への渡り廊下の手すりがずれていることに住民が気づき、三井側が調べたところ、建物の片側の手すりが2・4センチ、床面が1・5センチ低くなっていた。この棟に52本ある杭のうち28本を調べると、6本が支持層に届いておらず、2本も打ち込みが不十分だとわかった。

 さらに、三井側から今月になり、杭の施工記録が差し替えられていたと市に報告があったという。

 このマンションでは杭を打ち込むための掘削時に支持層に到達したかを判定するため、ドリルの電流値を記録する方法がとられた。ところが三井側が施工記録を点検すると、複数の杭の数値が不自然に似通っていることが発覚。問題の棟の10本を含め3棟で計38本の杭の施工記録が、支持層に届いている別の杭のデータを転用して加筆したものだったという。

 杭を施工したのは下請けの旭化成建材。現場は複雑な地質で、事前の地盤調査での想定に比べて支持層の一部が深いところにあった。支持層に到達していない杭は、この部分に集中していたという。

 傾いた棟の安全性について三井側は市に対し、「震度7想定での検証を行ったが、倒壊の恐れはない」と報告しているという。三井側は4棟すべてについて調査し、第三者機関を入れて安全性を検証する。三井不動産レジデンシャルは「お住まいのお客様に対しては、当社として誠意を持って対応させて頂きます」、三井住友建設も「下請け業者が一部の杭の施工データを転用・加筆していた」としたうえで、「多大なご迷惑をおかけしておりますことを、心より深くおわび申し上げます」などとするコメントを発表した。

 一方、旭化成は14日、データが差し替えられた杭工事を子会社の旭化成建材が請け負っていたと発表した。データの差し替えがどんな経緯で行われたのか分からないため、旭化成は調査委員会を立ち上げて調べるという。「ご信頼を損なう結果となりましたことを深く反省し、心よりおわび申し上げます」とし、問題の建物の補強・改修工事や他棟の調査費用を全額、旭化成建材が負担することにしたという。また、書類が残る過去10年間に旭化成建材が杭工事を行ったマンションや商業ビルについても、データの差し替えがなかったか調べる。

 昨年には、別の業者が施工した横浜市西区のマンションでも杭が支持層に届いていない問題が発覚。市は建築基準法に違反しているとして、対策を取るよう販売者側に指導した。