「阿佐ヶ谷アニメストリート」公式サイトより。
まるでゴーストタウン! 2014年に鳴り物入りでオープンした阿佐ヶ谷アニメストリートが、ますます危機的状況に陥っている。
阿佐ヶ谷アニメストリートは、2014年に株式会社ジェイアール東日本都市開発(以下、JR)が、高円寺~阿佐ヶ谷間の高架下を利用してオープンした、アニメの商店街だ。オープン直後は大勢の人で賑わったものの、その後は奮わず次々と店舗が撤退。10月現在では、まともに営業しているのは16区画中4店舗のみという状況になっている。
これに加えて、訪問する場合の導線もひどい。
本来、最寄りの中央線・阿佐ヶ谷駅から徒歩でまっすぐ進めるはずなのだが、途中の高架下にある商店街・ゴールド街は、改築のために全面閉鎖中だ。そのため、高架の脇を右か左にそれて裏通りを歩かなければ、たどり着くことができない。とりわけ左に進むと店舗の裏口ばかりの路地を通過していくことになる。とても、アニメの商店街へと向かう雰囲気ではない。
鳴り物入りでオープンしたアニメの商店街が、こんな惨状を示している理由は複合的だ。
以前の記事でも記したが、ひとつはJRのイメージと現実に店舗を運営したい企業との意識の差。もうひとつは入居した企業がアニメの商店街に適正な企業だったかという問題だ。
JRが最初に考えていたのは企業系の出店。本来、阿佐ヶ谷アニメストリートで構想されたのは、中野ブロードウェイのような空間だったはずなのに、企業系の出店に拘泥したために家賃は高めに設定され、中野ブロードウェイに入居しているような小規模あるいは個人店の出店はほぼ不可能になった。
また、雑然さよりも秩序を求めたために、当初は店頭にチラシのラックを置くのは通路だからNGにするなど小さな問題が頻発した。また、出店した企業の中にも、まったく営業を行わず「JRや杉並区から仕事を受注するべく、“店舗を運営している”という既成事実を得るために出店したのではないか」とささやかれるものもあった。
現在、公式サイトでは12店舗が出店店舗として掲載されているが、実際にまともに営業しているのは4店舗。中には、店舗として借りているはずなのに、事務所として使用している企業もある。
もはや行き詰まりを見せているようにも感じる阿佐ヶ谷アニメストリートに打開策はあるのか。阿佐ヶ谷アニメストリートをプロデュースし、ストリート内にオフィスも構える作戦本部株式会社の代表取締役で「作戦本部長」の鴨志田由貴氏も問題を重く見ており「来週にもJRと話し合いをする予定」だと語る。
鴨志田氏によれば、JR側も打開策を講じているようだが、まだ問題はある様子だ。
「例えば、退去する時に企業側に原状回復を求めているんですが、照明まで撤去することになりますから、期間限定や1日だけ借りたいという要望に対応できないんです」
もとより個人店の出店で中野ブロードウェイ的な雰囲気を創りたいと考えている鴨志田氏は、非営利であれば空き店舗を無料でレンタルしてもよいのではないかと話す。
以前の取材で、鴨志田氏はJR秋葉原駅~御徒町駅間のガード下を利用した商業施設「2k540 AKI-OKA ARTISAN」にも携わった経験から「店舗に客が足を運ぶようになるまでは、3年くらいは必要」とも発言していた。
導線のネックになっているゴールド街の改築、再オープンは来年の冬頃の予定。それまでにJR側も本当に危機感を持ちアニメの商店街とはなんたるかを理解してくれるのか?
(取材・文=昼間たかし)