消費税軽減:首相が軽減税率導入に理解…どうなる自公対立
毎日新聞 2015年09月25日 22時16分(最終更新 09月25日 23時50分)
安倍晋三首相が25日、公明党の山口那津男代表と会談し、消費増税の負担軽減策として公明党が主張する軽減税率の導入に理解を示した。自民、公明両党は、生活必需品の税率を低く抑える軽減税率と、財務省が提案した還付金制度案を並行して協議しており、25日の与党協議でも両党が鋭く対立。次回会合は10月半ばに仕切り直すことになったが、25日の党首会談を受け、軽減税率に軸足を置いて検討が進む可能性がある。
「財務省の試案(還付金制度)は採りがたい」(公明党の斉藤鉄夫税制調査会長)
「わが党では還付への理解が深まってきている」(自民党の野田毅税調会長)
この日の会合では自公の立場の違いが浮き彫りになった。前回会合で軽減税率制度と還付金制度の両方を並行して議論する方針が確認されたが、その後、公明党が還付金制度に断固反対する方針を固めたためだ。
還付金制度は、消費者が「酒類を除く飲食料品」を購入する際、店頭でいったん消費税10%分を支払い、のちに申請に基づき2%分が還付される仕組み。軽減税率と違って支払時の税負担は減らず、会合で公明党は「痛税感の緩和にならない」と強調した。
自民党は、還付金制度案がマイナンバーカードを活用する点に批判が強いことを踏まえ、還付専用カードを発行することを提案。しかし、公明党は「実現可能性がない」と拒否し、両党の溝は埋まらなかった。
ただ、安倍首相が公明党の主張に理解を示したことは、今後の協議に影響を与えそうだ。
公明党は軽減税率の具体案を検討しており、10月以降の協議のたたき台にする考え。軽減税率では、事業者は取引の際に商品ごとに税率と税額を明記した請求書(インボイス)を発行する必要があり、経理事務負担が増えることに経済界の反発が根強い。このため、公明党は3〜5年程度は現行の請求書で軽減対象の品目に印を付ける簡易な方式を取り、その後インボイス方式に移行する案を検討する。
また、税率10%時に軽減税率が8%の場合、酒類を除く飲食料品を対象にすると税収減が年1・3兆円に上る。このため、公明党は対象品目から外食を外したり軽減税率を9%にとどめたりすることも検討する。
両党は年末にまとめる2016年度税制改正大綱に結論を盛り込む方針。負担軽減策の導入時期についても、17年度中を目指す自民党と同年4月の消費増税時を主張する公明党で隔たりがあり、今後の焦点となる。【朝日弘行、横田愛】