国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に、中国が申請した「南京大虐殺文書」が登録された問題で、日本政府は分担金拠出の停止や削減など、具体的な対応の検討に着手した。与野党からも、「反日」を掲げる中国の露骨な政治利用の舞台と化したユネスコに対して、怒りの声が噴出している。
菅義偉官房長官は13日の記者会見で「わが国の分担金や拠出金について、支払いの停止などを含めてあらゆる見直しを検討していきたい」と強調した。
この政府方針に対し、公明党の山口那津男代表は同日、「記憶遺産の制度のあり方をもっと検討すべきだ。ユネスコに強く要求するべきだ」と反応した。民主党の細野豪志政調会長も記者会見で「プロセスに不明確な部分がある。拠出金の削減検討はあってもいい」との見解を示した。
維新の党の今井雅人幹事長も会見で「南京事件がどういう事件であったか歴史的な検証がはっきりなされていない」と指摘し、「登録は手続きとして間違っている。対抗措置を講ずるのは当然だ」と、政府の立場に理解を示した。
これに対し、違った反応をしたのは共産党だ。山下芳生書記局長は13日の記者会見で「主張が認められなかったからといって拠出金削減を検討するのは、国際社会の理解を得られない」と語った。
ユネスコへの分担金に関しては、分担率が最も高い米国が現在支払いを停止している。理由は、2011年にパレスチナの正式加盟が認められたためで、米国は1984〜2003年にも脱退していた。英国も1985年に脱退し、1997年に復帰している。
ユネスコの主要幹部に中国人や韓国人がいるが、日本人がいないことも「中国、韓国の影響力、情報収集力が高まっている」(関係者)と問題視されている。