アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。


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【概要】
 90年代中盤にブレイクした『EVE』シリーズの第三作目。『EVE burst erorr』ファンから、袋だたきに限りなく近い扱いを受けた第二作『EVE the lost one』を反省し、主人公を変えた前作から第一作目の主人公である小次郎・まりなに先祖返りしている。ストーリーも『burst erorr』の前日譚とすることで、死んでしまった人気キャラクターを再登場させるなどファンへの歩み寄りが見えた作品で、PS版の販売本数は約8.4万本と好調だったのだが、全盛期と比べるとかなりスケールダウンした売り上げとなってしまった。のちにDCでも一本道からマルチエンディングに変更した『EVE ZERO完全版』が登場しているが、現行期で出来るPS版の方が一般的。総プレイ時間は10~12時間程度で、市場価格は500~980円ぐらい。かなり売れた作品なので、現在でも入手は容易。



【システム】
 オーソドックスなコマンド総当たり型ADV。「EVE」シリーズの伝統である、2人の主人公の視点を交互にプレイするマルチサイトシステム(用はザッピング)は健在なのだが、他のシリーズと整合性をとるために一方の主人公に接触することがなく、一つの事件を別方向から捜査するという初期の試みから、単なる回りくどいシステムに成ってしまったという感がある。
 本作より新モードとして「フォーカスモード」という、複数のキャラクターが居るときに一人のキャラクターに接近して会話するシステムが導入されているが、その操作を要求されるシーン自体が少なく、ゲーム的に面白いシステムでもないのでとても形式的。とは言え、接近時は独自のレスポンスをするのでEVEのキャラクターを楽しみたい人向けのシステムとしては評価して良いだろう。

 インターフェース面は、バックログやショートカットでの各メニュー呼び出し、オートセーブなど当時としてはそこそこの完成度を誇り、今でもある程度快適にプレイ可能。ただしセーブにやたら時間がかかるなど、旧世代の作品であることは確かで今プレイすると厳しい部分も多い。

【ゲームテンポ】
 今まではサイトチェンジごとにディスクチェンジを行っていたのだが、今回は2人の視点を1つのディスクにまとめることで、ディスクチェンジの回数がかなり減っており、SS『burst erorr』『the lost one』と比べるとかなりテンポが良くなっている。とはいえサイトチェンジごとにセーブが要求され、しかもそのセーブにやたら時間がかかるため他の快適なADVと比べてテンポは相変わらず良くない。ショートカットやらなんやら、そこそこ親切機能を付けたにも関わらず肝心の部分でしくじるとは、なんとも詰めが甘い。

 ゲームとしてのテンポは、捜査を進めるにあたって次に行くべき場所がノーヒントなことが多く、何をすれば良いか解らなくなった場合はマップ上を行脚することとなり、テンポは最近のコマンド総当たりADVとしては極悪の部類に入る。展開も“偶然”事件と関係ある人物を見かけるというモノが多くあり、推理して移動しても無駄なことが多く、フラグメント周りは理不尽の一言。進めないときは全く進めないバランス配分は、ファミコン時代のアドベンチャーゲームを彷彿とさせる。

 ある意味コアユーザー向けとも言えるバランス配分なのだが、サイトチェンジによる進行不能やら、変な選択肢(「門をガタガタさせる」とか)がシナリオ進行のフラグだったりするなど、進行への条件が何か気づけないフラグが多いので全体的にテンポを悪化させている。まあ、それだけに話が進んだときのカタルシスもあるにはあるとも言えるが…。

【ストーリー】
 内臓を生きたまま持ち去る猟奇殺人事件を発端とした、壮大な事件を解決するミステリーアドベンチャーゲーム…という「あらすじ」だったはずなのだが、中盤辺りからシリーズお馴染みのSF的な要素が多くなり、結局非ミステリーとして全てを投げて終了という驚異的なほどの尻すぼみな展開で終わってしまう。このまとめが弱さが本作が駄作と呼ばれる由縁だろう。中盤まではこれまでの「EVE」に囚われない普通のミステリー作品な展開だっただけに、非常に残念。逆に言えば、中盤までは面白い作品だったと言えるのかもしれない。
 キャラクターも『burst erorr』と比べるとギャップがあるのだが、まあコレは前日譚なので「当時は若かった」という捉え方も出来ないわけではない。この辺りはライターが上手い逃げ口を作ったな、という印象。その言い訳の上手さや、キャラクターと戯れる新システムなどキャラクター性重視なファン向けな作りとも言えるのかもしれない。が、デキの微妙さやら終盤のテキトーさからファンには有ってないような扱いを受けているのは何とも切ない。

【ここが○!】
・中盤までは、無難な出来……だったはずなんだけどねぇ。
・声優陣がやたらと豪華。ゲームで納屋悟朗(銭形警部の声)の声が聞ける数少ない作品。
【ここが×…】
・ストーリーが中盤以降、全てが投げやりな展開となる。
・フラグ立てがFC期のADVを彷彿とさせるほど厳しい。

【総括】
 話に詰まるとほぼノーヒントで関係ありそうな場所を延々と見て回るという、あまりにもクラシカルなゲームデザインには面食らったものの、ちゃんとミステリーとして伏線を張っていた中盤ぐらいまでは割と好き。ただやっぱり、後半から終盤にかけての「尻切りトンボ」を体現したような投げやりな展開は閉口の一言。まあ、それを差し引いても『burst erorr』の次に好きな『EVE』かな。他の作品が更にダメすぎなのが原因だけど。個人的には、本作より本作の設定を流用しながら「北朝鮮の偽札事件を追う」という直球なミステリーに仕上げたノベライズ版の方が話のデキが良かったのが印象的。もうこのシリーズはクローンとかウィルスみたいなSFチックな設定は使わず、普通の事件を捜査するシリーズにした方が良いんじゃないのか。

【Next Title...(次に手にとって貰いたい作品)】

アドベンチャーゲーム研究処

PS2・SS『DESIRE』(マルチサイトβ版とも言える作品。PS2版も存在し入手は容易。)
PS『探偵神宮寺三郎 未完のルポ』(サイト内リンク)

【得点】
4/10
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